Photo by Ume氏
今上に行けば、こんな眺めが待っているだろう。真っ青な空と接する遠くの白い雪の山並み、左から空木岳、そして西駒ケ岳、中央よりやや右が御嶽山で、一番端っこは乗鞍かと思ったが、どうも穂高のようだ。
手前の谷は時々この呟きに出てくる初の沢。流れは沢としては緩やかで、芝平の集落まで下り、山室川に流れ込む。だからこの谷に沿って、どうして山道ができなかったのか不思議だった。北原のお師匠に聞いてみると、「中尾根」と呼ばれた尾根が「岩っこルート」よりさらに初の沢寄りにあったという。地元の人々が使っただけで、今ではその足跡を知ることも、たどることも難しいだろう。
その際に師から、初の沢の途中に「ウスボラ」と地元の人たちだけが呼ぶ場所があることを初めて聞いた。遡行には難所とされた「ニクノタテ」という場所がその辺りにあり、その名前は以前から耳にしていた。一昨年、種平夫妻と入渓した時には、残念なことにそれらしき場所を確かめることができないまま通過してしまった。来年の夏にでも、もう一度行ってみようかと思っている。
この広大な山地に生えている木の大方が落葉松の人工林である。戦後各地で盛んに行われた植林で、苗は一人ひとりが背負い入山し、一日に何百本も植えたのだという。この頃になって、その貴重な森や林が皆伐され問題になっているが、先人がしたと同じようなことがまたできるかとなれば、もうまず無理だろう。これも次世代へ送られる課題になってしまう。
山は雪に埋もれて眠るだけだ。
昨夜の雨は止んだ。朝方はかなり風が強かった。年末から新年にかけての天気ことをよく知らないまま、明日から上へ行く。昨年と変わらず、里では新年を迎えるにあたり何もしないが、それでも、折角あの山小屋で年を越そうとして来る人々には、心ばかりだが何か振る舞いたいと思っている。山奥氏が釣ってきてくれた魚もあることだし。
それにしても、ここでの暮らしよりも不便で、ここよりも寒い世界へ行くことが、越年の行事になってしまった。
海老名出丸さん、F枝さん、本年最後の通信になりますか。ありがとうございました。
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