入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’19年「秋」 (41)

2019年10月20日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など
 きょうは良い天気になるはずだったのにそうならなかった。雨は止んでいるが霧が出て、権兵衛山は雲の中、またしても深窓の令嬢になっている。それでも、静かな秋の一日を過ごすなら、こんな天気の方が向いているかも知れない。今年は牛が里へ下りるのが早かったから、第1牧区へはしばらく無沙汰を決めている。あそこのカエデの紅葉は始まったのだろうか。



 いつまでも同じ橋にばかり拘わっていては際限がないと、4番目はこれでひとまず終えることにした。手摺りはまだ取り付けてないし、4本の丸太を乗せた両端の"枕"をどのように固定するかなど幾つかの課題を残したままだがだが、今は完璧を求めている余裕がない。次に進むしかないと決めた。
 それで小屋に戻らずに午後は、4番目と同じように流された5番目の橋の解体をすることにした。折角付けた手摺りも、新しく補強のために手を入れた丸太も激流に翻弄され、結束していた番線はすべてが緩んでしまっている。30本くらいのそれらを次々とカッターで切ってしまうのは、若葉マークの初心者のような気持で懸命に巻いた番線だけに本当に無念なのだが、そうしなければ丸太を元の場所へ戻すことができない。
 そんな作業をしながら、ずっと考えていたことがあった。それは、テイ沢に丸太橋を架けることへの疑問というか、迷いのような気持のことで、あんな橋などなくても、渡渉を覚悟すればどれほどのこともない。誰でもというわけではないが、誰でもが行ければ良いというわけでもないという気が、以前からそれとなくしていた。今度も、実は迷った。
 また、山小屋の主や管理人が登山道を整備するのは、自分の小屋へ来る登山客のためを考えてのことだが、あのテイ沢を通る人の大半は、この牧場の小屋やキャンプ場とは関係がなく通り過ぎていく人たちだ。そういう人たちのために、いつまでもテイ沢にかまけていてもいいのかと思うこともある。
 さらには、あの丸太橋があるために沢の雰囲気が以前と大分変ってきたと批判的に言う人さえいる。自然と人、俗化、経済性、難しい問題だ。そこら辺のことを、今後ここでも考えみたい。

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     ’19年「秋」 (40)

2019年10月19日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など
 森の中は緑や黄色に加えて、ツタウルシ以外にも少しづつ赤の色が目立つようになってきた。ウルシ、ヤマブドウ、カエデ、それに山桜。中でも山桜は新緑のころ、次いで清楚な花を咲かせるころ、そして今始まった紅葉と、三度も装いを変えてそれぞれ味わい深い色合いを見せてくれる。その上、他の樹木との相性も悪くないと思う。とにかくこの辺りの森はどんどんと秋が深まるばかりだ。





 "同志"紹介。右からペンチ、シノ、クマよけスプレー、番線、ハンマー。シノは番線を使って何かを結束する際の必需品。クマよけスプレーはホルスターに入れず、いざという時に備えて首にぶら下げていることも多い。そして番線50本。きょう200本買ってきた。ハンマーは岩登り用で、登攀具の中で今でも役に立っている唯一の道具。そんな同志に加えて重いチェーンソーを持って出掛けることにする。その他にもツルハシやカッター、大型ハンマーなどは現場にビニールシートをかけて置いてある。

 きょうで一応下から4番目、夫婦が淵に架ける長い方の丸太橋は終えた。ただ問題は、そこに至る短い丸太橋である。丸太橋は、基本的には両岸に丸太を何本か並べ、それらを固定すればよいのだが、ここだけはそうはいかない。どうしても流れの中に支柱を立てなければならず、そこで試行錯誤を繰り返すことになる。
 先日のような大雨ではどうやっても流されるが、それでも雨の降る度に橋のことに気を揉まされるのは癪に障る話で、それで少しでも前回よりもと欲が出て、やり直しばかりの徒労を重ねることになってしまった。
 結局、きょうは途中で断念した。。

 小屋に21人、キャンプ場に7人の予約があったが、19号台風の影響で鉄道も道路も被害が出たため、取り消しとなった。ところが今朝来ると、キャンパー1名の予約が留守電に入っていて、先程到着。
 夜になって天気は回復すると読んだが、今また本降りになってしまった。エライ降りようだがテント場は大丈夫だろうか。

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     ’19年「秋」 (39)

2019年10月18日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 きょうの写真を見れば、19号台風がもたらした大雨で、テイ沢にどれほど多量の水が流れたかが分かると思う。岩の上に哀れな姿を晒しているのは下から5番目の丸太橋になる。流失した割に橋の程度はそれほど悪くないが、それでも元の場所に戻すには解体するしかない。
 沢の中にいると、はらはらと流れに落ちてくる色付いた葉や、絶えず聞こえてくる谷川の流れの音に、今年の秋もそろそろ衰退の予兆を見せ始めたのかと錯覚をする。特にきょうのように霧が深く、陽も射さないと、紅葉はこれからだというのについ、季節に対するいつもの先走りをしてしまう。1千700メートルの山の中にいるのだからそれも仕方なく、これからの季節の移ろいは里よりか速く進む。



 午後は雨も降ってきた中で4番目の橋が、ここまでできた。手を擦りむいたり、向う脛を岩にぶつけたりと悪戦はいつも通りだが、作業している場所も、やっていることも決して嫌ではない。喜んでやっているとは言わないが、そこが災害の被害に遭った人々のご苦労とは違う。
 特にあの谷の中の雰囲気は格別で、時の経過を忘れてしまう。寂しくもなければ、疲労感もそれほど感じない。時には誰かの手を借りたくなることもあるが、ここまで何とか一人でやってこれたのだから大丈夫だろう。梃子の使い方が上手くなったと、自画自賛しているが、さて。
 で、この丸太橋、きょう中にも終わらせることができたが、番線を使い尽くしてしまったので終わりにし、引き上げてきた。その番線といえば、折角固定した丸太と横板も、解体しなけれ運べないから、その際には、結束に使った番線はすべて切断するしかない。"同志"を鉄屑にしなければならないのが無念だ。

 愈々冬季に備え、朝一番で下から灯油を積載したトラックが来てくれた。いつもなら、ドラム缶とポリタンクを軽トラに積んでこっちから出向かなければならないのを、今年はやらずに済んで助かった。今冬は灯油の心配をせずに、快適な冬の山小屋にしたい。

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     ’19年「秋」 (38)

2019年10月17日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など






 エライことが起きたものだと、呆れた。本当のことを言えば、まだ半ば信じられないような気がしている。水流の中にある傾いた岩、あれが大水に押し流されて3,4メートルも動いたのだ。写真ではその大きさが分かりにくいだろうが、以前に橋があった場所にきょう下から担ぎ上げた丸太が置いてある。それが、5メートルだ。流木が残っている位置からしてみても、水位は丸太橋の高さを越えてしまったことは間違いない。
 きょうは昨日架け直した2番目の橋の不安な部分を補強し、それでおよそ時間が終わってしまった。4番目の橋の片割れを何とか流木や芥の中から引き出すことはできたものの、元の通りに橋を架けることができるかはまだ何とも言えない。水量の多いせいもあるが岩が動いたため、流れが速くなった。
 その位置を変えた岩を利用すれば、橋が無くても対岸に渡ろうとすれば渡れるが、子供や年配者には危険だ。明日行って、もう少し状況を見た上で、それからになる。

 テイ沢の中で何かに集中していると決まって「お前、そんな山の中の丸太橋なんぞに夢中になるくらいなら、『陋屋』と呼んでいる自分の家のことをもっと心配をした方が良くないか」と、あの人の声が聞こえてくる。まったくその通りだ。そう思いつつも、今は途中で投げ出すわけにはいかない。伊那市も入笠に関して、来年は少し考えてくれそうなので、せめて丸太と番線ぐらいは心配してもらえるだろう。ただ現状では、伊那側にはあまり経済的な利益を期待することができず、もどかしくもある。それに関しても、手がないわけではないけれど、その一方でこの静けさは捨てがたい。
 きょうはこれから東部支所の所長と一緒に、小屋のカーペットを買いに行く。

 いろいろな人からご心配の通信を頂き感謝してます。E美さん(仲良さそうだね)、S谷さん・・・、F破さんには前回の不手際をお詫びします。

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     ’19年「秋」 (37)

2019年10月16日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など
 写真は、昨日の帰りに撮った貴婦人の丘。鹿の姿や霧が流れている様子が分かるだろうか。夕暮れのうねるように続く山並みから霧が噴煙のように幾筋も立ち昇る珍しい光景を目にした。





 下から3番目の橋の現状。昨日の作業で渡ることだけはできるようになった。手前に写っている丸太橋は、ようやく引き上げることができた4番目の橋。もう一方の片割れはまだそのままになっている。きょうは2番目にするか、4番目を解体して元の場所に運び上げるか、これから現場へ行って決めることにする。



 手を使い、足を使い、腰を使い、そして頭さえも使い、何度も諦めかけ、何とか2番目の橋を架け終わることができた。ここも5番目の橋と同じように5メートルの丸太を使っていて、しかも運搬の距離が短いと無理をして太目の丸太を担ぎ上げたからその重いこと、泣かされた。まだ少し手を入れなければならず、また新しく支点にした岩はかなりしっかりしているものの大雨が降れば、また持って行かれるかも分からない。ここにも流れ止めのロープが必要だろう。
 明日はいよいよ4番目になる。あそこは丸太橋を解体しなければならず、それを1本づつ運んで、さらに組み立てるとなると幾日かかることか。

 今が一番いい秋かも知れない。きょうの1日を振り返りながら帰る夕暮れの山道はさぞかし気分がいいだろう。それと、帰って呑む熱燗と鍋が楽しみだ。最近は相撲取りのように鍋ばかり。

 かんとさん、ありがとう。しかし、かんとさんって力持ちだったですか?他にも心配してくれる人がいて有難いです。

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