崩れる「国民皆保険」 個人も企業も苦境に 「ほころび―社会保障の現場」「揺らぐ医療」3回続きの(上)
2011年3月7日 提供:共同通信社
駐車場に止まった1台の車。中にいた男性(59)は意識がなく、呼び掛けに応じなかった。両足の先は壊死(えし)していた。
昨年4月、長野市内。糖尿病を患っていた男性は近くの住民に発見され入院。一時は会話ができるまで回復したが、1カ月後に敗血症で息を引き取った。「もっと早く診察を受けていれば最悪の事態は免れたはず」。この病院のソーシャルワーカーの女性は、今もやり切れない思いを引きずる。
男性は独身で、会社勤務の傍ら認知症の母親を介護していた。その母は数年前に死亡。介護や仕事の忙しさで治療を中断しており、2009年末に体調不良を理由に退職した。サラリーマン時代は全国健康保険協会(協会けんぽ)に入っていたが、国民健康保険(国保)の加入手続きをせず「無保険」になっていた。
無保険や、保険証はあっても医療費の自己負担分を払えないなどの理由で病院に行くのが遅れ亡くなった人が昨年、全国で71人に上ったことが、全日本民主医療機関連合会(民医連)の調査で判明した。
厚生労働省によると、09年度の国保の保険料収納率は88・01%で過去最低を更新した。保険証があれば、誰でもどの病院でも一部自己負担のみで治療を受けられる「国民皆保険」。民医連は「制度は崩壊した」と警鐘を鳴らす。
大企業の社員が加入する健康保険組合も状況は厳しい。健康保険組合連合会(健保連)によると、10年度の全体の収支は過去最悪の6935億円の赤字を見込む。主な原因は、支出の約4割を占め高齢者の医療費に回される「拠出金」だ。
赤字を埋めるため、多くの組合が保険料率を上げている。昨年の調査で、協会けんぽの保険料率9・34%(全国平均)以上の組合は53。「協会を上回ると、独自に健保を運営するメリットが薄れる」(関係者)といい、解散し協会に移行する例が増加。組合数は今年2月現在でピーク時の8割の1458まで減った。その協会けんぽも、4月から保険料率が9・50%(全国平均)に上がる。
協会に移行したある百貨店では「無料だった子宮がん検査がなぜこんなに高いのか」「妻の健康診断が有料になった」と問い合わせが相次いだという。担当者は「解散後に健保組合の良さを実感したようだ」と話した。
× × ×
世界に誇っていたはずの保険や病院の仕組みが揺らいでいる。命と健康を守るとりでの現場を見た。
※健康保険制度
国民皆保険制度は1961年に始まった。自営業や非正規労働者などが加入するのが国民健康保険(約3900万人)。中小企業のサラリーマンは協会けんぽ(約3500万人)、大企業は健康保険組合(約3千万人)、公務員は共済組合(約900万人)に入る。
日本国民であっても、平等に医療が受けられなくなっている。
安心だった病時だったことが過去にならないようにと思うけれど
病気は何より予防、生活改善が大切だよね~
2011年3月7日 提供:共同通信社
駐車場に止まった1台の車。中にいた男性(59)は意識がなく、呼び掛けに応じなかった。両足の先は壊死(えし)していた。
昨年4月、長野市内。糖尿病を患っていた男性は近くの住民に発見され入院。一時は会話ができるまで回復したが、1カ月後に敗血症で息を引き取った。「もっと早く診察を受けていれば最悪の事態は免れたはず」。この病院のソーシャルワーカーの女性は、今もやり切れない思いを引きずる。
男性は独身で、会社勤務の傍ら認知症の母親を介護していた。その母は数年前に死亡。介護や仕事の忙しさで治療を中断しており、2009年末に体調不良を理由に退職した。サラリーマン時代は全国健康保険協会(協会けんぽ)に入っていたが、国民健康保険(国保)の加入手続きをせず「無保険」になっていた。
無保険や、保険証はあっても医療費の自己負担分を払えないなどの理由で病院に行くのが遅れ亡くなった人が昨年、全国で71人に上ったことが、全日本民主医療機関連合会(民医連)の調査で判明した。
厚生労働省によると、09年度の国保の保険料収納率は88・01%で過去最低を更新した。保険証があれば、誰でもどの病院でも一部自己負担のみで治療を受けられる「国民皆保険」。民医連は「制度は崩壊した」と警鐘を鳴らす。
大企業の社員が加入する健康保険組合も状況は厳しい。健康保険組合連合会(健保連)によると、10年度の全体の収支は過去最悪の6935億円の赤字を見込む。主な原因は、支出の約4割を占め高齢者の医療費に回される「拠出金」だ。
赤字を埋めるため、多くの組合が保険料率を上げている。昨年の調査で、協会けんぽの保険料率9・34%(全国平均)以上の組合は53。「協会を上回ると、独自に健保を運営するメリットが薄れる」(関係者)といい、解散し協会に移行する例が増加。組合数は今年2月現在でピーク時の8割の1458まで減った。その協会けんぽも、4月から保険料率が9・50%(全国平均)に上がる。
協会に移行したある百貨店では「無料だった子宮がん検査がなぜこんなに高いのか」「妻の健康診断が有料になった」と問い合わせが相次いだという。担当者は「解散後に健保組合の良さを実感したようだ」と話した。
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世界に誇っていたはずの保険や病院の仕組みが揺らいでいる。命と健康を守るとりでの現場を見た。
※健康保険制度
国民皆保険制度は1961年に始まった。自営業や非正規労働者などが加入するのが国民健康保険(約3900万人)。中小企業のサラリーマンは協会けんぽ(約3500万人)、大企業は健康保険組合(約3千万人)、公務員は共済組合(約900万人)に入る。
日本国民であっても、平等に医療が受けられなくなっている。
安心だった病時だったことが過去にならないようにと思うけれど
病気は何より予防、生活改善が大切だよね~