診療報酬めぐり応酬激化 強まるマイナス改定圧力
行政・政治 2015年11月9日 (月)配信共同通信社
医療機関などに支払われる診療報酬の2016年度改定をめぐり、応酬が激化している。年末の予算編成に合わせて改定率が決まるが、財政再建のため引き下げを求める財務省に対し、医療側は警戒を強める。来年の参院選を意識する与党も巻き込み、決着は最終盤までもつれ込みそうだ。
診療報酬は2年に1回改定される医療サービスの公定価格で、医師や歯科医、薬剤師の技術料(本体)と薬の値段(薬価)で成り立つ。
「プラス改定を行わなければ医療崩壊の再来を招く。とんでもない」。日本医師会(日医)の横倉義武(よこくら・よしたけ)会長は5日の記者会見で強調した。財務省が10月末の財政制度等審議会分科会で「(本体部分は)一定程度のマイナス改定が必要だ」と打ち出したからだ。
前回改定(14年度)はぎりぎりの折衝の末、全体では0・1%増で決着した。プラス改定は医療の充実につながるとされるが、診療報酬の財源は保険料と公費、患者の自己負担だ。財務省は医療費の抑制圧力を強めており、実現は難しい状況になっている。今回引き下げになれば、08年度以来となる。
財務省は薬価部分だけでなく、薬剤師の調剤報酬など本体部分にも切り込む構え。塩崎恭久厚生労働相も6日の記者会見で「財政的にも持続可能な形で意見を集約したい」と述べ、報酬上積みよりも財政再建に配慮する姿勢を見せた。
医療関係者は塩崎氏に対し「消極的すぎる」と不満顔。「物価や賃金を上げるアベノミクスを進めているのに、医療だけ報酬を切り下げるのか」と、政府への恨み節も聞かれる。
一方、与党からは懸念の声も出始めている。マイナス改定を強引に推し進めれば、来夏の参院選を前に、有力な支持母体の医療関係団体の反発を招きかねないからだ。ある自民党議員は財政再建を実現しつつ、選挙への影響を抑えるため「プラスマイナスゼロがいい落としどころではないか」と読む。
※診療報酬改定
公的医療保険で受ける医療サービスの公定価格である「診療報酬」を見直すこと。2年に1回実施する。報酬は手術や検査の内容ごとに単価が決まっている。全体の増減を示す改定率は年末の予算編成過程で決定する。前回の2014年度改定は0・1%増、12年度改定は0・004%増だった。患者は医療機関や薬局の窓口で、診療報酬で決められた価格の原則1~3割を負担し、残りは保険料と税金で賄う。
行政・政治 2015年11月9日 (月)配信共同通信社
医療機関などに支払われる診療報酬の2016年度改定をめぐり、応酬が激化している。年末の予算編成に合わせて改定率が決まるが、財政再建のため引き下げを求める財務省に対し、医療側は警戒を強める。来年の参院選を意識する与党も巻き込み、決着は最終盤までもつれ込みそうだ。
診療報酬は2年に1回改定される医療サービスの公定価格で、医師や歯科医、薬剤師の技術料(本体)と薬の値段(薬価)で成り立つ。
「プラス改定を行わなければ医療崩壊の再来を招く。とんでもない」。日本医師会(日医)の横倉義武(よこくら・よしたけ)会長は5日の記者会見で強調した。財務省が10月末の財政制度等審議会分科会で「(本体部分は)一定程度のマイナス改定が必要だ」と打ち出したからだ。
前回改定(14年度)はぎりぎりの折衝の末、全体では0・1%増で決着した。プラス改定は医療の充実につながるとされるが、診療報酬の財源は保険料と公費、患者の自己負担だ。財務省は医療費の抑制圧力を強めており、実現は難しい状況になっている。今回引き下げになれば、08年度以来となる。
財務省は薬価部分だけでなく、薬剤師の調剤報酬など本体部分にも切り込む構え。塩崎恭久厚生労働相も6日の記者会見で「財政的にも持続可能な形で意見を集約したい」と述べ、報酬上積みよりも財政再建に配慮する姿勢を見せた。
医療関係者は塩崎氏に対し「消極的すぎる」と不満顔。「物価や賃金を上げるアベノミクスを進めているのに、医療だけ報酬を切り下げるのか」と、政府への恨み節も聞かれる。
一方、与党からは懸念の声も出始めている。マイナス改定を強引に推し進めれば、来夏の参院選を前に、有力な支持母体の医療関係団体の反発を招きかねないからだ。ある自民党議員は財政再建を実現しつつ、選挙への影響を抑えるため「プラスマイナスゼロがいい落としどころではないか」と読む。
※診療報酬改定
公的医療保険で受ける医療サービスの公定価格である「診療報酬」を見直すこと。2年に1回実施する。報酬は手術や検査の内容ごとに単価が決まっている。全体の増減を示す改定率は年末の予算編成過程で決定する。前回の2014年度改定は0・1%増、12年度改定は0・004%増だった。患者は医療機関や薬局の窓口で、診療報酬で決められた価格の原則1~3割を負担し、残りは保険料と税金で賄う。