被災者支え必死の治療 益城町の医療機関
2016年5月6日 (金)配信熊本日日新聞
熊本地震で甚大な被害を受けた益城町の医療機関が、地域医療を守り抜こうと奮闘している。今も水道が復旧せず、レントゲンなどの医療機器も使えないが、「地元の患者さんのために」と必死の診療を続けている。
上益城郡医師会によると、同町内の17医療機関は建物が損壊するなどし、2日現在、半数以上が医療機器の故障などで通常診療ができない状態。6施設は新規患者の受け入れができないという。
「地震の時はどうでしたか」。2日、益城整形外科医院(同町安永)で、山本正昭院長(67)が男性(77)に優しく声を掛けた。本震で転倒し、左手の薬指を骨折した男性は「これぐらいは不幸中の幸い。避難所は応急処置しかできず、かかりつけは安心できる」と笑顔を見せた。
同医院は地盤沈下のため、応急危険度判定で危険を示す「赤紙」が張られたが、専門家の診断では建物に大きな被害はなかったという。上下水道も破断したが、飲料水などで器具を洗浄するなどしてカレンダー通りの診療を続けている。
4月14日夜の前震後、診療ロビーはけが人や避難者であふれた。翌日未明まで山本院長は懐中電灯を手に診療を続け、入院患者を別の病院などに移送した。
本震で院内の被害は広がったが、今も毎日約60人の診療を続けている。山本院長は「ほとんどが避難所から通ってくる患者さん。通常の半数ほどに減り、来ていない方が心配」と表情を曇らせる。
同医院から入院患者を受け入れたさくら病院(広崎)では、ほかの医療機関の透析患者も引き受ける。前震直後は、高齢者施設の避難者も受け入れた。
昨年9月の建て替えで専門家に「近くに断層がある」と指摘を受け、耐震強度を上げた結果、被害はほぼなかった。人工呼吸器が必要な患者や透析患者らが多く、柴田美貴子事務長(65)は「自分で動けない方も多い。被害がなくてよかった」と胸をなで下ろす。
かかりつけ患者の容体変化が気掛かりな医師もいる。おがた整形外科(福富)の緒方博司院長(56)は「膝や腰の痛みを訴える患者が多い。窮屈な避難所生活の影響だろう」と心配する。
どの施設も職員自身が被災者でもある。自宅兼医院が被災した永田内科医院(福富)で事務を担当する永田昭子さん(70)は、4月末まで避難所暮らし。職員6人のうち4人は自宅が全半壊した。それでも、次女の美与院長(45)を中心に診療を続ける。永田さんは「患者さんがいる限り医院は閉められない。規模を縮小してでも続ける」と力を込めた。(林田賢一郎)
2016年5月6日 (金)配信熊本日日新聞
熊本地震で甚大な被害を受けた益城町の医療機関が、地域医療を守り抜こうと奮闘している。今も水道が復旧せず、レントゲンなどの医療機器も使えないが、「地元の患者さんのために」と必死の診療を続けている。
上益城郡医師会によると、同町内の17医療機関は建物が損壊するなどし、2日現在、半数以上が医療機器の故障などで通常診療ができない状態。6施設は新規患者の受け入れができないという。
「地震の時はどうでしたか」。2日、益城整形外科医院(同町安永)で、山本正昭院長(67)が男性(77)に優しく声を掛けた。本震で転倒し、左手の薬指を骨折した男性は「これぐらいは不幸中の幸い。避難所は応急処置しかできず、かかりつけは安心できる」と笑顔を見せた。
同医院は地盤沈下のため、応急危険度判定で危険を示す「赤紙」が張られたが、専門家の診断では建物に大きな被害はなかったという。上下水道も破断したが、飲料水などで器具を洗浄するなどしてカレンダー通りの診療を続けている。
4月14日夜の前震後、診療ロビーはけが人や避難者であふれた。翌日未明まで山本院長は懐中電灯を手に診療を続け、入院患者を別の病院などに移送した。
本震で院内の被害は広がったが、今も毎日約60人の診療を続けている。山本院長は「ほとんどが避難所から通ってくる患者さん。通常の半数ほどに減り、来ていない方が心配」と表情を曇らせる。
同医院から入院患者を受け入れたさくら病院(広崎)では、ほかの医療機関の透析患者も引き受ける。前震直後は、高齢者施設の避難者も受け入れた。
昨年9月の建て替えで専門家に「近くに断層がある」と指摘を受け、耐震強度を上げた結果、被害はほぼなかった。人工呼吸器が必要な患者や透析患者らが多く、柴田美貴子事務長(65)は「自分で動けない方も多い。被害がなくてよかった」と胸をなで下ろす。
かかりつけ患者の容体変化が気掛かりな医師もいる。おがた整形外科(福富)の緒方博司院長(56)は「膝や腰の痛みを訴える患者が多い。窮屈な避難所生活の影響だろう」と心配する。
どの施設も職員自身が被災者でもある。自宅兼医院が被災した永田内科医院(福富)で事務を担当する永田昭子さん(70)は、4月末まで避難所暮らし。職員6人のうち4人は自宅が全半壊した。それでも、次女の美与院長(45)を中心に診療を続ける。永田さんは「患者さんがいる限り医院は閉められない。規模を縮小してでも続ける」と力を込めた。(林田賢一郎)