中高生ピロリ検診・除菌の意義【119JPS】
兵庫医大の奥田氏、篠山市の取り組みから指摘
日本小児科学会2016年5月23日 (月)配信 消化器疾患小児科疾患感染症
奥田真珠美氏
兵庫医科大学ささやま医療センター小児科教授の奥田真珠美氏は、札幌市で開かれた第119回日本小児科学会学術集会(119JPS、5月13-15日)のシンポジウムで、希望者へのピロリ菌(Hp)検診の実績と、保護者などへの意識調査の結果を踏まえ、2014年度から兵庫県篠山市で中学生を対象に、公費負担によるHp検診を開始したことを紹介した。感染早期の除菌によって小児の将来的な胃癌を予防し、世代間感染の連鎖も断ち切れる可能性があるとして、中高生に対するHp検診の意義を強調した。
2012年は対象者の4.2%が陽性反応
胃癌の原因とされるHpの除菌は、慢性胃炎にまで拡大されているが、近年は胃癌予防目的で中高生を対象としたHp検診を公費負担で行う自治体が増えている。
奥田氏らは、2012年に篠山市内の全6中学校の1-3年生1225人を対象にHp検診を実施した。事前説明で検査を希望した337人に対し、尿中Hp抗体または血清Hp抗体をELISA(Enzyme-Linked Immuno-Sorbent Assay)法で測定した。尿のみの検体提出は131人、血液のみは19人、両方が187人だった。
尿中抗体の陽性率は3.1%(10人)、血中では5.8%(12人)に上り、尿中と血中のいずれかで陽性反応を示した生徒は4.2%(14人)となった。2次検診を受けた7人のうち6人が尿素呼気試験(UBT)で陽性反応を示し、除菌を希望した4人に対しプロトンポンプ阻害薬(PPI)とアモキシシリン(AMPC)に、クラリスロマイシン(CAM)またはメトロニダゾール(MNZ)を加えたPAC療法かPAM療法を施行、除菌成功率は100%だった。
保護者の93%超が子供の受診を希望
2013年にHp検診・除菌に関する小中学生とその保護者に対する意識調査を行ったところ、中学2、3年生では6割以上、保護者では95%以上が賛同した。検診希望については、小中学生の半分以上が「分からない」と答えたが、保護者は93%が子供の検診を望んでいることが分かった。
奥田氏らの検診実績と意識調査の結果を受け、同市では2014年度より公費負担で市内の中学生全員を対象にHp検診と除菌治療を行っている。検査の流れは、1次検診として学校検尿を利用して希望者の尿中抗体を測定し、陰性の場合は20歳での検診を勧める。陽性であれば2次検診で便中抗原の測定かUBT(2016年度より)を実施し、そこでも陽性反応を示した場合は、希望者に対し高校3年生まで、2次除菌までとの条件で除菌を施行している。この際に腹部症状があれば、保険診療での上部内視鏡を実施しているという。
2014年の対象者(366人)受診率は96.66%に上り、受診者355人の陽性率は5.35%だった。これらの結果について奥田氏は「小児Hp感染者の一部から胃癌が将来発生することは確実だが、感染早期の除菌で若年胃癌を予防できる可能性がある。親になる前に除菌すれば、子への感染も予防できる」として、中高生に対するHp検診と除菌の意義を説明。実施については「十分な議論を行い、安全かつ確実な方法を検討することが重要」との見解を示した。
兵庫医大の奥田氏、篠山市の取り組みから指摘
日本小児科学会2016年5月23日 (月)配信 消化器疾患小児科疾患感染症
奥田真珠美氏
兵庫医科大学ささやま医療センター小児科教授の奥田真珠美氏は、札幌市で開かれた第119回日本小児科学会学術集会(119JPS、5月13-15日)のシンポジウムで、希望者へのピロリ菌(Hp)検診の実績と、保護者などへの意識調査の結果を踏まえ、2014年度から兵庫県篠山市で中学生を対象に、公費負担によるHp検診を開始したことを紹介した。感染早期の除菌によって小児の将来的な胃癌を予防し、世代間感染の連鎖も断ち切れる可能性があるとして、中高生に対するHp検診の意義を強調した。
2012年は対象者の4.2%が陽性反応
胃癌の原因とされるHpの除菌は、慢性胃炎にまで拡大されているが、近年は胃癌予防目的で中高生を対象としたHp検診を公費負担で行う自治体が増えている。
奥田氏らは、2012年に篠山市内の全6中学校の1-3年生1225人を対象にHp検診を実施した。事前説明で検査を希望した337人に対し、尿中Hp抗体または血清Hp抗体をELISA(Enzyme-Linked Immuno-Sorbent Assay)法で測定した。尿のみの検体提出は131人、血液のみは19人、両方が187人だった。
尿中抗体の陽性率は3.1%(10人)、血中では5.8%(12人)に上り、尿中と血中のいずれかで陽性反応を示した生徒は4.2%(14人)となった。2次検診を受けた7人のうち6人が尿素呼気試験(UBT)で陽性反応を示し、除菌を希望した4人に対しプロトンポンプ阻害薬(PPI)とアモキシシリン(AMPC)に、クラリスロマイシン(CAM)またはメトロニダゾール(MNZ)を加えたPAC療法かPAM療法を施行、除菌成功率は100%だった。
保護者の93%超が子供の受診を希望
2013年にHp検診・除菌に関する小中学生とその保護者に対する意識調査を行ったところ、中学2、3年生では6割以上、保護者では95%以上が賛同した。検診希望については、小中学生の半分以上が「分からない」と答えたが、保護者は93%が子供の検診を望んでいることが分かった。
奥田氏らの検診実績と意識調査の結果を受け、同市では2014年度より公費負担で市内の中学生全員を対象にHp検診と除菌治療を行っている。検査の流れは、1次検診として学校検尿を利用して希望者の尿中抗体を測定し、陰性の場合は20歳での検診を勧める。陽性であれば2次検診で便中抗原の測定かUBT(2016年度より)を実施し、そこでも陽性反応を示した場合は、希望者に対し高校3年生まで、2次除菌までとの条件で除菌を施行している。この際に腹部症状があれば、保険診療での上部内視鏡を実施しているという。
2014年の対象者(366人)受診率は96.66%に上り、受診者355人の陽性率は5.35%だった。これらの結果について奥田氏は「小児Hp感染者の一部から胃癌が将来発生することは確実だが、感染早期の除菌で若年胃癌を予防できる可能性がある。親になる前に除菌すれば、子への感染も予防できる」として、中高生に対するHp検診と除菌の意義を説明。実施については「十分な議論を行い、安全かつ確実な方法を検討することが重要」との見解を示した。