問われる説明責任 消費増税再延期
2016年5月27日 (金)配信共同通信社
【解説】議論を重ねた末に与野党が合意し法律に定めた消費税率10%への引き上げを、安倍晋三首相が再び延期する道を選んだ。国内外の景気が停滞していることは確かだが、首相が伊勢志摩サミットで訴えた「リーマン・ショック前に似た状況」とは程遠いとの見方が専門家の間では強い。大衆迎合や選挙を意識した安易な先送りなら許されず、首相は説明責任を厳しく問われている。
消費税の扱いは、景気への影響にとどまらず、社会保障や国の財政、将来世代も含めた国民負担の在り方といった幅広い観点から論じられるべきテーマだ。増税で得た財源は社会保障の安定や拡充に充てる計画だった。延期のしわ寄せは社会保障の対象となる高齢者や子育て世帯に真っ先に及ぶ可能性がある。
既に深刻な状況にある国の財政の再建はさらに遠のくことになる。前回延期時に「再び延期することはない」と約束した首相が前言を翻したことで増税実施への本気度を疑われ、日本国債の格下げを含め市場の信認低下を招く事態も予想される。
熊本地震の被災地はなお厳しい状況に置かれており、消費低迷が続く家計にとって増税先送りの恩恵は大きい。ただ、増税を予定通りに実施できる経済環境を整えられなかった安倍政権の責任は重い。「アベノミクス」の限界を露呈したとも言え、政権への批判や経済政策の見直しを求める声が強まるのは必至だ。
2016年5月27日 (金)配信共同通信社
【解説】議論を重ねた末に与野党が合意し法律に定めた消費税率10%への引き上げを、安倍晋三首相が再び延期する道を選んだ。国内外の景気が停滞していることは確かだが、首相が伊勢志摩サミットで訴えた「リーマン・ショック前に似た状況」とは程遠いとの見方が専門家の間では強い。大衆迎合や選挙を意識した安易な先送りなら許されず、首相は説明責任を厳しく問われている。
消費税の扱いは、景気への影響にとどまらず、社会保障や国の財政、将来世代も含めた国民負担の在り方といった幅広い観点から論じられるべきテーマだ。増税で得た財源は社会保障の安定や拡充に充てる計画だった。延期のしわ寄せは社会保障の対象となる高齢者や子育て世帯に真っ先に及ぶ可能性がある。
既に深刻な状況にある国の財政の再建はさらに遠のくことになる。前回延期時に「再び延期することはない」と約束した首相が前言を翻したことで増税実施への本気度を疑われ、日本国債の格下げを含め市場の信認低下を招く事態も予想される。
熊本地震の被災地はなお厳しい状況に置かれており、消費低迷が続く家計にとって増税先送りの恩恵は大きい。ただ、増税を予定通りに実施できる経済環境を整えられなかった安倍政権の責任は重い。「アベノミクス」の限界を露呈したとも言え、政権への批判や経済政策の見直しを求める声が強まるのは必至だ。