病気が再発「それでも野球を諦めなかった」 代打に専念
2019年7月12日 (金)配信朝日新聞
第101回全国高校野球選手権神奈川大会(県高校野球連盟、朝日新聞社主催)は11日、10球場で20試合があった。再編統合で来年から新校となる平塚農は麻布大付に敗れ、新城は九回、逆転サヨナラでシーソーゲームを制した。12日は9球場で18試合がある予定。
■ドクターストップ 諦めなかった 麻生・天尾選手
出番は突然訪れた。「天尾、いくぞ!」。八回表が始まる直前、麻生の天尾怜(れん)選手(3年)は池田隆監督に声をかけられた。「天尾が打たないと、誰が打つんだ!」。ベンチからかけ声がかかる。先頭打者として打席に入り、大きく深呼吸。3球目、振り抜いた打球は遊撃手の正面へ。一塁にヘッドスライディングするもアウト。天尾選手は、ベンチに戻ることなく三塁のコーチボックスへ。八回裏の守備につかないことを彼は知っていた。
中学入学後、足に違和感を感じ始めた。病院の診断結果は、足底筋膜炎。土踏まずが張り、走れなくなった。病院の医師からは野球をやめた方が良いと言われた。母の真知子さん(50)は「中学校へも歩いて行けないので、毎日送り迎えした」と話す。練習にも参加できない日々が続いた。「野球が大好き。どうしても続けたい」
高校に入り、足も回復し、ようやく走れるようになった。練習に参加して「やっと野球ができる」。そう思った。だが、練習を始めて半年が経った1年生の11月ごろ、再発。それでも、天尾選手は球拾いやグラウンド整備など裏方でチームを支え続けた。
今年5月、池田監督と話し合い、裏方業から代打に専念することに決めた。足への影響から多くバットを振れない分、芯に当てることを意識して練習した。
池田監督は「2年生以降、天尾はほとんど練習に参加できていない。それでも、天尾は野球を諦めなかった」と頑張りをたたえた。(岩本修弥)