想定上回る事態に備えを 大阪府でコロナ対策に当たる藤井睦子・府健康医療部長 インタビュー「崩壊を超えて―コロナ医療『第5波』への課題」
2021年6月21日 (月)配信共同通信社
新型コロナウイルスの感染第4波は、大阪府で感染爆発と医療崩壊を引き起こした。行政や医療現場はどう対応したのか。次の波を前に何を考え、どう備えるべきか。
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大阪府では昨年秋―冬の第3波でも病床が逼迫(ひっぱく)したため、各病院に緊急要請し病床を2千床近くまで確保した。今年3月に緊急事態宣言が解除されてからすぐに病床確保計画を改定し、次の波に備えた。しかし、この改定は1日当たりの新規感染者が最大654人という第3波を踏まえたもので、1200人を超える今回の状況は想定していなかった。
春先から見つかっていた英国型変異株の感染力が強いことは意識していた。だが、当初は濃厚接触者を幅広く検査し囲い込む方針で、既存株に置き換わるとまでは想定しなかった。感染拡大のペースがこれまでと違うと認識したのは3月の最終週。重症患者も第3波では約3カ月で171人増加したのに対して、第4波では25日間で179人と、第3波の約3倍のスピードで増えた。増床を緊急要請したが、4月13日には重症患者数が病床数を上回った。
自宅療養者も約1万5千人に上り、保健所からのアプローチやケアが遅れてしまった。重症病床が不足すると中等症病院も重症者対応をすることになり、軽症・中等症患者の受け入れが滞る。そうすると酸素吸入が必要な患者もホテルで療養せざるを得なくなる。全体が悪循環に陥っていた。
第4波を踏まえ、さらなる医療体制の整備策をまとめた。災害級の非常事態を想定し、確保病床を約2千床から3500床に拡充する。また重症拠点病院、中等症・重症を一体的に治療する病院、軽症・中等症病院と、医療圏ごとに病院の機能分化を進める。自宅療養者対応では、オンライン診療だけでなく訪問型診療の体制充実を目指す。
変異株の影響で想定を超える事態が生じることを、大阪府は身をもって経験した。想定の一段上のリスクに備えた病床確保や、きめ細かな療養の仕組み作りが必要だ。また感染拡大の兆候を見逃さず、早期に(住民や事業者に対して)さまざまな自粛をお願いすることも重要だ。
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ふじい・むつこ 1962年生まれ。大阪府出身。京都大教育学部を卒業後、86年入庁。財務部次長などを経て2017年4月から現職。