「ワクチン不足」再燃 在庫管理、新たな混乱も 「表層深層」高齢者接種完了後の行方
その他 2021年6月28日 (月)配信共同通信社
新型コロナウイルスワクチンの高齢者接種の7月完了に向けて事業が進む中、先をにらむ自治体に「ワクチン不足」の不安が再燃している。最近のハイスピード接種を支えた「潤沢な供給」が一転、配送量が減り調整局面に移行するためだ。早く打ってもらおうと、各地に大量に配ってきた国。市区町村という現場を含めた在庫の過不足で混乱する可能性もある。
▽犯人捜し
「いろいろな関係者にご協力いただき、感謝を申し上げる」。河野太郎行政改革担当相は26日、視察先の神奈川県茅ケ崎市内で記者会見し、高齢者分について「7月末までに打ち終わる」と言い切り、目標達成に対する謝意にまで言及した。
同時に「10~11月に希望する全ての国民の接種を終える目標を達成できるよう、頑張りたい」として、64歳以下の促進へ意欲を示した。
足元で順調に見える事業。先行きを巡り、自治体にはワクチン配分が減ることへの不満が出る。河野氏は「ワクチンは不足しているわけでない。希望する国民が打てる量を9月末までに確保している」と、火消しに追われ始めている。
国は「自治体、医療機関の中に在庫がたまっている可能性がある」(田村憲久厚生労働相)としており、一部で接種が進まず在庫を抱え、事業が進む自治体に回らないと見立てる。各都道府県が主導し、市区町村間で「いかにうまく在庫を回せるかの勝負」(河野氏)として、在庫の実態調査にも乗り出す意向。ワクチンを追加購入する考えは示されず「大量に在庫を抱える犯人捜し」(自治体関係者)というわけだ。
▽次の目標
厚労省によると、主に自治体向けとなるファイザー製の供給は4~6月では約5千万人分と大量だ。7~9月約3500万人分、10~12月約1200万人分へと減る。不安顕在化の一つの発端は6月19日の全国知事会だ。緊急提言で「ファイザー製が、7月以降急減する実情にある」と強調し「供給量減少」の対応策も求めた。
追い打ちを掛けるのが10~11月接種完了という次なる目標の重圧だ。モデルナ製を使う企業・大学の接種でワクチン量の限界などのため、申請の受け付け停止を発表したことも拍車を掛ける。
▽有効期限
高齢者への接種が始まった4月、ワクチンの供給不足が最大の課題だった。5月に入り「ワクチン供給は問題ない」と解消に向かったものの、今月24日、河野氏は「接種スピードが上がり、供給が追い付かず、綱渡りになる」との弱音も見せた。
ファイザー製の7月5日から2週間分の市区町村への配分で、自治体の希望量を大幅に下回る例が続出。これを受け、山形市は25日に個別接種の予約受け付けを停止。長野県佐久市は64歳以下への接種券の配布を終えたばかりで、集団接種の予約枠を抑えて対処する。北海道釧路市の担当者は「見通しが立たないと64歳以下の予約が始められない」と話した。
首都圏の首長は、置かれた現状を「最前線に立つ自治体は64歳以下という大きな山を前に『補給』が気になり、前に進めない」と語った。
中部地方の自治体の首長は、ファイザー製の有効期限が製造時から6カ月間だとして、在庫の期限切れという新たな課題を口にする。「届いたワクチンを見ると、一部はあと2カ月しか持たない。今後、こうした問題が深刻化しかねない」