ワクチン接種で忙殺、開業医「負担重すぎ」 予約電話殺到で診療に支障、休日返上、準備やデータ入力に手間
新型コロナウイルスワクチン接種が京都市でも進む中、接種の中核を担う地域の医師たちの業務負担が重くなっている。「通常の診療に影響が出ている」「人手が限られる中、これ以上の対応は難しい」といった切実な声も。7月中旬には高齢者の倍の約83万人に上る64歳から16歳への接種も順次始まる。現場はどうなっているのか、取材した。
「最大限の努力をしているが、一開業医で頑張る域を超えている」。高島診療所(右京区)の高島啓文医師(61)はため息をつく。同診療所は5月の接種開始当初から通常診療と並行して週6日、かかりつけ患者に接種を行ってきた。在宅のかかりつけ患者や山間部の集落、市の集団接種会場での接種業務も担い、休日返上の日々が続く。
予約開始当初は3日間で300件以上の電話が殺到し、業務に支障をきたした。予約の電話が一定落ち着いた今でも、木曜午前は原則的に接種のみを受け付け、開院を30分繰り上げて対応する。最近は「なぜ自分は7月中に受けられないのか」といった苦情も寄せられ、スタッフにかかる負担も重いという。高島医師は「通常の仕事は減らないまま、接種業務が上乗せされている。このペースで一般接種まで行うのは難しい」と漏らす。
ワクチンについて、市は当初からかかりつけ医での個別接種を基本とする方針を掲げてきた。しかし高齢者の集団接種には想定の5万人を上回る約6万7千人の希望者が殺到。急きょ希望者を医療機関に割り振るなど接種枠の拡充を迫られる事態となった。7月11日からは64歳以下にも順次始める予定だが、市は「集団接種会場を増やす検討はしているが、個別接種を基本とする方針に変更はない」とする。
この方針に対し、地域の医療機関からは疑問の声が上がる。かかりつけ患者への接種に対応してきた岩田整形外科医院(同)の岩田啓史医師(64)は「接種だけなら簡単だが、新型コロナワクチンは準備やデータ入力に非常に手間がかかる。通常のワクチンと同じように考えてもらっては困る」と話す。
新型コロナワクチンは衝撃に弱く慎重な扱いが求められる上に、接種前に生理食塩水でワクチン液を希釈しなければならない。注射した後には、個人の接種履歴を管理する国の「ワクチン接種記録システム」やワクチンの在庫管理システムへの入力も必要だ。全国では複雑な仕組みに対応できず、希釈ミスやデータ未入力の問題が相次ぐ。
同医院では診療時間外に行ってきた週2日の接種を、今月からは日曜日にも行うことにした。岩田医師は「どこの医療機関も市民に
早くワクチンを届けたいと頑張っているが、集団接種をもっと増やさないと追いつかない。一般接種を見据えて行政が主導権を握り、より効率的な体制を整えてほしい」と求める。