「日本の夏」の睡眠の質を調査、健康被害は熱中症に匹敵
2022年10月3日(月)
東京大学、岡山大学、関西福祉科学大学、産業技術総合研究所の研究グループは、日本の夏の都市部における睡眠の質について調査した。その結果、最低気温が25℃を上回る熱帯夜では睡眠状態が悪化し、その被害は熱中症による死亡に匹敵することが分かった。
睡眠障害は直接的な死亡には至らないため、死亡数では被害を把握できない。そこで研究グループは、世界銀行が開発した「障害調整生存年」を使って睡眠障害の被害把握に取り組んだ。障害調整生存年は、死亡ロスと健康ロスを1つの指標で扱えるようにしたもので、80歳まで生きるべき人が50歳で死ぬと30年のロスと計算する一方、重さが0.3の病に10年間罹ると3年のロスと計算する。
研究グループは、1カ月の睡眠の質を評価する自己記述式質問票である「ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)」を基に、前日の睡眠の質を評価する自己記述式質問票(SQIDS2)を開発。PSQIとSQIDS2を使って、2011年と2012年の夏に名古屋市の住民550人以上を対象として、1日ごとの睡眠の質を1カ月間計測した。SQIDS2で計測した1日ごとの睡眠の質をその日の気温と比較し、結果をPSQIで得られた1カ月の睡眠の質を示す結果で補整した。
その結果、最低気温と障害調整生存年で評価できる睡眠障害の関係を算出。この関係と過去の観測気温を比較評価したところ、名古屋市の5年間に渡る睡眠障害による被害は、障害調整生存年で毎年100年〜200年にも達することが分かったという。これは、5年間の熱中症による被害とほぼ同じだとしている。
研究成果は9月24日、スリープ・アンド・バイオロジカル・リズムス(Sleep and Biological Rhythms)誌に掲載された。これまで統計では把握できなかった熱帯夜の睡眠障害の被害を定量化したことにより、夜間の暑さ対策の必要性が認識されることが期待されるという。