お客の不満、女将は瞬時に見抜いた…表情見て0・1秒後に脳波が反応
2022/06/15 08:25
旅館の 女将おかみ は客の不満を素早く察知していると考えられることが、自然科学研究機構・生理学研究所(愛知県岡崎市)の柿木隆介名誉教授(神経生理学)らの研究で明らかになった。怒った表情などを見た際に、一般女性よりも脳波が大きくなる傾向が確認されたといい、研究成果は14日付の英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載された。
研究に際しては、蒲郡温泉(同県蒲郡市)の旅館の女将ら21人と、接客に関わりのない一般女性19人らを対象に、怒った顔や無表情、笑顔の画像を見てもらった上で、脳波を測定する実験を行った。すると、女将たちが怒った顔や無表情を見た時には、0・1秒後に現れる「P100」と呼ばれる脳波が、一般女性よりも大きくなったのが確認された。一方で、0・17秒後に現れる「N170」の脳波には両者に差は見られなかったという。
この結果からは、女将たちが相手の表情を素早く読み取り、相手に悟られないようにすぐに平常心に戻っていることが考えられるという。柿木名誉教授は「客のわずかな不満を見逃さないプロの心得が見てとれる」と指摘。一方、実験に協力した女将たちの団体「こはぜの会」(蒲郡市)の渡辺栄子会長(72)は「接待の経験から身についた私たちの心がけが、科学的に裏付けられたならばうれしい」と述べた。
顔の認知と脳波の反応に詳しい 宝珠山ほうしやま 稔・名古屋大大学院教授(臨床神経生理学)は「女将たちに素早く表情を読み取る能力が備わっていることが示されたのは興味深い。経験や訓練で向上するのだとすれば、どのような訓練が必要かを解明できれば、コミュニケーション教育などに役立つのではないか」と話している。