電子カルテには治療・投薬履歴など記録…「診療の質落ちる」攻撃受けた病院、診療停止続く
2022年11月2日 (水)配信読売新聞
大阪急性期・総合医療センター(大阪市住吉区、病床数865床)の電子カルテシステムに障害が発生した問題で、同センターでは1日も通常診療ができない状況が続いた。災害や故障などで電子カルテのデータが失われないようバックアップを取っているが、閲覧するには攻撃を受けたシステムへの接続が必要で、安全性が確認できるまでは閲覧できないという。
同センターでは、10月31日朝から全患者の電子カルテが閲覧できなくなった。電子カルテのシステムが外部から不正アクセスを受け、暗号化されたデータを復旧するために金銭を要求する「ランサム(身代金)ウェア」と呼ばれるコンピューターウイルスに感染したとみられる。
電子カルテには、患者の氏名や年齢、治療・投薬履歴、エックス線画像などの検査データが記録されている。同センターは2018年に全36診療科で導入した。
同センター事務局の能勢一臣総務・人事マネジャーは「サーバーに関わる全ての機械がコンピューターウイルスに感染しているのかどうかを含め、確認を急いでいる」と話す。
電子カルテが使えなくなったことを受け、同センターは一般診療や救急患者の受け入れを停止。岩瀬和裕病院長は「過去の治療歴や検査データが見られないため、診療の質が落ちる恐れがある」とし、急に出血を起こすなど急変した入院患者の緊急手術のみ電子カルテなしで続ける方針だ。
7月に大腸がんの手術を受け、定期検診のため来院した大阪市住吉区の男性(86)は「検診が中止になったのは仕方がないが、再発の不安があるので早く診てもらいたい」と話した。
吉村知事「一日でも早く復旧できるよう支援」、厚労省は情報セキュリティーに詳しい民間人材を派遣
大阪急性期・総合医療センターは、地方独立行政法人「大阪府立病院機構」が運営している。大阪府の吉村洋文知事は1日、府庁で記者団に対し、「完全復旧にはしばらく時間がかかる」との見通しを示した上で、「一日でも早く復旧できるよう支援したい」と述べた。
同センターには新型コロナウイルスの中等症や重症用の病床があり、入院中の患者の治療は継続できるものの、新たな患者を受け入れるのは難しいという。吉村知事は、今冬にも感染の新たな波が起きる可能性があるとして、「その時までには何とか復旧させたい」と述べた。
また、松野官房長官は1日の記者会見で、政府として同センターに専門家を派遣し、原因の特定などを支援していることを明らかにした。厚生労働省によると、情報セキュリティーに詳しい民間人材を充てたという。