原因分からない高熱続く「不明熱」、心身つらく...いったい何が? 診断の流れや検査、問題点 専門家に聞く
2022年11月4日 (金)配信新潟日報
原因が分からない高熱が長期間続く「不明熱」。医療関係者以外にはあまりなじみがないが、国の基礎統計である「患者調査」でも使われる病名だ。診察や検査でもなかなか診断がつかないと、患者は自分の体に何が起きているのか―分からないままのつらい状態に置かれ、体力が落ちれば一層不安が募る。どう受け止めたらいいのか。専門家に聞いた。
▽患者は年7千人
不明熱の定義は時代によって変わってきたが、現在は「38度以上の発熱が繰り返し認められる」「その状態が3週間以上続く」「病歴の聞き取り、血液検査など必須の問診、検査をしても診断がつかない」こととされる。
厚生労働省の「患者調査」によると、2017年の不明熱の患者は7千人。定義を満たさないうちに原因が判明したり、熱が下がったりするケースも多い。
不明熱の疫学や診断に詳しい国立国際医療研究センター放射線核医学科の南本亮吾診療科長によると、近年は感染症や悪性腫瘍の検査が進歩して原因が判明するケースが増え、原因の内訳では膠原(こうげん)病や血管炎、リウマチなどの炎症性疾患の割合が高まっているという。
患者を半年から1年追跡したこれまでの研究によると、以前の死亡率は7~33%だったが、00年以降は7%程度で落ち着いている。不思議なことに、最後まで原因が分からないケースは一貫して2割程度はあるものの、そのほとんどは結果的に熱が下がる。
▽繰り返しの問診、検査で消耗
診断を確定させる手順はほぼ定まっている。体の診察、本人や場合によっては家族の病歴の聞き取り、ふだん飲んでいる薬のチェック、血液や尿の各種検査、細菌がいないかどうかの培養検査、結核や肺炎が隠れていないか調べる胸部エックス線、腹部の超音波検査、CT検査...。疑わしい病気の有無を順に確かめ、絞り込んでいく。
「なかなか診断がつかない場合は、検査や聞き取りで新たな情報を得て、それを基に考えることの繰り返し」(南本さん)になる。発熱の原因がなかなか分からないため、かかりつけ医から大きな病院へ紹介されることが大半で、高熱の中で再々の問診、検査を強いられる患者は「消耗しきった状態」になるという。
心配する家族がインターネットなどで検索すると、悪性腫瘍や炎症性疾患の難しい病名が候補として次々に現れ、そのことも家族や本人を疲弊させていく。
▽保険が適応外
標準的な手順を尽くし、ひと通り検査を重ねてもなお原因が明らかでない場合、陽電子放射断層撮影(PET)装置を使った検査が有用であることが分かってきた。FDG・PETと呼ばれる方法だ。
通常の組織に比べて炎症や腫瘍に糖がより多く取り込まれることを利用する。ブドウ糖の分子の一部を、PETに写る元素である「フッ素18」に置き換えたFDGという物質を投与し、どこに集まるかを撮影して炎症や腫瘍が疑われる部位を調べる。
従来の検査に比べて感度が高く、被ばく量が少ない。結果が出るまで約1時間半と、検査時間が大幅に短縮できることも利点だという。
南本さんによると、FDG・PETは既に、不明熱の患者で診察や各種の検査を終えた次の手順として標準的に用いられ、欧米では保険医療で受けられるようにもなってきた。
半面、日本では炎症や腫瘍の検査としては保険が使えるものの、不明熱は適応外。3割の患者は自己負担で検査を受けていた。日本核医学会などは、この検査を不明熱でも保険で使えるよう国に要望している。