海藻食べ尽くす厄介ウニ、養殖で濃厚な味わいに…磯焼け対策・漁業者の収入増
2022/11/28 18:00
沿岸漁場の海藻類を食べ尽くす「磯焼け」の原因となるウニを漁業者から買い取り、養殖で身を太らせて販売する取り組みが、山口県長門市・青海島で進んでいる。事業の核となる養殖施設が完成し、30日に正式に動き出す。藻場の再生とともに、漁業者の収入確保につなげる狙いで、関係者から期待の声が上がる。(木崎俊勝)
「豊かな海の再生が一番の目的。やせたウニを買い取ることで漁業の活性化にもなる」。今月中旬、施設の稼働準備をしていた地元の水産加工会社「マルヤマ水産」の吉見宜浩・ウニ事業部長(44)は期待を語った。
約2000平方メートルの敷地に鉄骨平屋(約1000平方メートル)の施設が建設され、完成式が30日に行われる。これまで試験的に取り組んできたマルヤマ水産と国内外で養殖事業を手がける「ウニノミクス」(東京)が共同で事業を進める。ウニの食用部分は生殖巣で産卵期に肥大化。天然ものと同等の色やうま味などになるかが課題となる。
同島沿岸はムラサキウニの被害に悩まされてきた。2013年夏に海面温度が30度超の高水温に見舞われて藻の枯死が進んだ。一方、高水温で繁殖力が高まったウニは数を増やした。磯焼けした場所で育つウニは身がやせて食用にならず、漁業者は取らない。磯焼けは深刻化していった。
磯焼けの海を再生したい。青海島の現状に目を付けたのがウニノミクス社だ。同社はウニ養殖の高い技術を持っている。きっかけは、東日本大震災の復興支援。震災で甚大な被害を受けた宮城県の沿岸は、稚ウニを捕食するヒトデなどが津波で流され、ウニが大量発生し、磯焼けが深刻だった。同社が漁業者と研究し、ウニ養殖の安定的な仕組みを確立させた。