論文を読んでもすぐ忘れてしまう...苦しんだ更年期障害 医学博士の女性、研究とケアへ起業
2022年11月18日 (金)配信沖縄タイムス
■ハーライフラボ エリセーバ・オリガさん
睡眠障害や記憶力低下、糖尿病に高血圧-。更年期世代の女性は、ホルモンの変化に伴いさまざまな健康リスクを抱えている。更年期世代の働く女性をサポートしようと、医学博士のエリセーバ・オリガさんが5月に「HerLifeLab(ハーライフラボ)」を立ち上げた。女性の体に特化し、更年期障害と男性ホルモンの相関性や、同時期に発症しやすい糖尿病やアルツハイマー病の関連性などの基礎研究を進めている。
オリガさんは2007年から沖縄科学技術大学院大学(OIST)でがん免疫の研究に従事。多忙な日々の中、43歳の時に更年期障害に悩まされるようになった。ほてりや漠然とした不安感、記憶力の低下などに一気に襲われ、論文を読んでもすぐに忘れてしまう。研究にも支障を来すようになり「自分は何もできない」と自信喪失に陥った。
婦人科で更年期障害と診断されたが治療法は安定せず、ホルモン補充治療が始まった頃には症状が進み、リウマチも発症していた。漢方薬も併用し約2年で症状は落ち着いたが、医療現場でも専門知識を持って治療に臨む病院は多くないと感じたという。
自ら更年期障害について調べたものの、細胞レベルで先進治療が進むがん研究とは相対的に、女性の体に関する研究は全く進んでおらず、情報の乏しさに驚いた。「もっと早く適切な治療を始めていたら、症状は緩和されていたのではないか」と痛感すると同時に「同じ症状でつらい思いを抱える女性は私だけではない」と起業を決意した。
ハーライフラボでは、女性の体の変化に関する研究を深めると共に、心身の不調に悩む女性には医療機関と連携し、適正なケアを受けられるようサポートする。9月には沖縄セルラー電話など4社と連携し、働く女性の睡眠改善を目的とした共同実証事業を実施した。オリガさんは「女性が、一生を通じて健康で幸せに生きていける社会づくりを応援したい」と力を込めた。(学芸部・久高愛)