糖尿病治療が様変わり ウエアラブル端末で血糖管理 福井県内専門医「痛み、手間から解放」
2022年11月10日 (木)配信福井新聞
糖尿病治療がデジタル技術で大きく変わってきている。ウエアラブル(身に着けられる)端末を活用することで、血糖値を測るための採血やインスリン注射といった患者の日々の手間や痛みが減った。福井県糖尿病協会長の笈田医師は「デジタル技術によって、より適切な治療に結びつけられるようになった」と話す。14日は世界糖尿病デー。
笈田医師の診療室。パソコンモニターに、糖尿病患者の1日の血糖値推移のグラフを表示しながら診療する。このグラフは、患者の腕などに装着したセンサーで測定したデータを基にしたものだ。
毎日のインスリン投与が必要な1型糖尿病患者らは、食前、食後を中心に1日に何度も血管内の血糖値を測定する必要があり、そのたびに指先に針を刺して採血するのが一般的だった。5年ほど前からウエアラブル型の血糖測定器が相次いで登場し、公的な健康保険が適用されるようになった。腕や腹にセンサーを装着すると極細のフィラメントが皮下に刺さり、細胞と細胞の間にある間質液に含まれるブドウ糖濃度を数分おきに測定。血糖値に換算され、センサーにかざしたリーダーや、連動するスマートフォンアプリでモニタリングする。
センサーを装着する際に少し痛みはあるものの、装着している時に痛みはない。機種によっては2週間、持続的に測定でき、入浴時や就寝時も外さなくていい。笈田医師は「痛み、煩わしさからの解放は大きい」と力を込める。また、命に関わる低血糖の状態を知らせるアラート機能も装備。特に子どもの1型患者の場合、「血糖値の確認で夜間に寝られなかった保護者がすごく助かっている」という。さらに、数値はクラウドに自動保存され、医師と共有することが可能。医師は血糖値の変動をきめ細かく把握でき、インスリンの投与量やタイミングを最適に調整しやすくなった。
ほかにも、腹に装着したポンプがセンサーと連動し、測定結果に基づいて最適な速度でインスリンを自動注入し、24時間、血糖値を目標範囲内に保つようにサポートする機器もある。また、「糖尿病の治療機器は研究がさかんな分野」と笈田医師。針を刺さずに血糖値を測れる機器や、血糖値を人工知能(AI)が解析して最適なインスリン量をポンプで自動投与する機器の開発も進む。笈田医師は「さらに患者の負担の少ない治療ができるようになっていく」と期待した。