<読んだ本 2023年5月と6月>
少年だったころ、ためた小銭を持って、我が町だけでなく、チビには旅みたいに遠い隣町のお好み焼き屋まで食べ歩いたものである。ヘラでぎゅうぎゅう押しつけてペッタンコになったやつとか、贅沢に生地に山芋を混ぜて焼き上がりがキツネ色になったやつとか。どれもどえりゃー旨かったな。
北九州の若松に、どうしてもいってみたいお好み焼き屋がある。ただ、そんなアホな目的だけで九州に行くわけにもいかず、ひたすら機会を狙っている。
歴史小説と映画「のぼうの城」の舞台となった「忍(おし)城」に沿った路を南に向かう。
時の領主「成田長親(なりたながちか)」はたった500人の軍勢で、石田三成が率いる2万の豊臣軍に喧嘩を売った。長親は、領民たちから「(でく)のぼう」と呼ばれて親しまれていたそうである。
秩父線行田市駅に近い「深町フライ店」をすぐに見つけ入店したら、恐ろしくぞんざいな客あしらいだったため急遽“プランB”に変更したのである。「フライ」の“基準になる味”をまったく持ち合わせていないわたしなので、店にこだわる必要も容赦も、金輪際ないのだ。
わざわざ行田まで出張ったのは、テレビでチラリと観たのだが、行田の名物B級グルメである「フライ」が北九州のお好み焼きによく似ているからで、どうしても一度食べてみたくなったのだ。人間、なにごとも億劫がったらおしまい、騙されたつもりで飛んで来たといっていい。前に“わ鐡”の水沼に来たときに時間がなくて一度断念してるしね。
10分と経たないうちに、右手に“プランB”の店「ときわ」を発見した。どこか香川の、製麺所がやっている“さぬきうどん店”みたいな佇まいである。
メニューをじっくり見て、フライと焼そばのそれぞれ「小」を注文した。先ほどの店では、焼きそば入りの折り畳んだフライを食べていたが、わたしは初めてなので別々に味わいたい。代金は合わせても720円と、どれもこれもジツに安い。
店の奥のテーブルに座っていると、まったくわたしと同じものを注文した常連客が入ってきて、自分のばかりでなくわたしの分までお茶を入れてくれて、恐縮してしまった。セルフで入れるお茶セットがあんなところにあったのか。
ジャーン! ソウルフードの“フライ”と焼そばが登場した。
まずは、焼きそばからいただく。うん、ソースの量が絶妙で軽やか、いい味だ。半分ふつうに食べ、残りをドッグパンかロールパンに挟んでむしゃむしゃがっつきたくなる。
さて、次はヘラでぎゅうぎゅうペッタンコでソースがべったり沁みた、大本命の「フライ」だ。
(オオッ! なんとも、これは旨い・・・)
お好み焼きをよく食べた、子どものころを思いだしてつい遠い眼つきになってしまう。あのころ通った数軒の店のひとつで味わったことのあるような懐かしい味である。見た目ほどソースがきつくなく、丁度いい。しかも今どき高価な玉子入りだ。これって焼酎にも酒にも合いそうだが、ないのが残念だ。善意のお茶でお茶をにごす。
もう一枚頼むか悩む。ああ、こんなことなら、電車の中でおにぎりをたべなければよかったなと悔やむ。
よし。またこの店を訪れて、そのときはしょうゆと梅じそ味のフライを食べて、謎の「ゼリーフライ」のじゃがいもにも挑戦し、そして今日食べたセット(ソースの焼きそばとフライ)は持ち帰ってパンの具と酒のアテにしたい。
常連客にはお茶の礼を繰返し、店主には代金を支払いながら「どちらも美味しかった!」と強めのひと言いって店をあとにした。はぁ、大満足。
騙されてなかったぞ。フライ、大いに気にいった。
行田も遠いけど、なんたってこちとら全国区なので隣町の範囲である。北九州ほど長距離ではないのだ。
さて、5月と6月に読んだ本ですが、今回も2カ月で7冊、累積で21冊。
1. △伊賀の残光 青山文平 新潮文庫
2. ○火喰い鳥 今村翔吾 祥伝社文庫
3.○上海 交代寄合伊奈衆異聞七 佐伯泰英 講談社文庫
4.○推定脅威 未須本有生 文春文庫
5.○京都しあわせ食堂 柏井壽 PHP研究所
6.○侠(おとこ)飯4 魅惑の立ち呑み篇 福澤徹三 文春文庫
7.◎ペットショップ無惨 IWGPXVⅢ 石田衣良 文芸春秋
図書館の6冊の予約枠のうち、5枠分が順番待ちで使えるのは1枠のみなので、予約待ちゼロ人を選んでの予約か直接書架から借りて読むしかなかった。
IWGPシリーズ「ペットショップ無惨」は、いつもどおりの安定ぶりで面白かった。
『たとえ一年に一度でも、神様のために小銭を放るって、いい気分だよな。
雲の上の誰かさんにこっちは元気でやってますって、報告している感じになる。いいことを願えば胸がすっきりして、
悪しき想念をデトックスした晴ればれとした気分にもなる。その場合、実は願いがかなうかなんて、どうでもいいのだ。
願うこと自体が頭とハートのいい運動なんだから。』
「神様のポケット」より
去年の年末からまったくロクな事がない。
晴ればれとした気分になりたいので、近い内に野毛の成田山にでもいってみるかな。
→「群馬・桐生、水沼駅温泉センター」の記事はこちら
→「読んだ本 2023年3月と4月」の記事はこちら
少年だったころ、ためた小銭を持って、我が町だけでなく、チビには旅みたいに遠い隣町のお好み焼き屋まで食べ歩いたものである。ヘラでぎゅうぎゅう押しつけてペッタンコになったやつとか、贅沢に生地に山芋を混ぜて焼き上がりがキツネ色になったやつとか。どれもどえりゃー旨かったな。
北九州の若松に、どうしてもいってみたいお好み焼き屋がある。ただ、そんなアホな目的だけで九州に行くわけにもいかず、ひたすら機会を狙っている。
歴史小説と映画「のぼうの城」の舞台となった「忍(おし)城」に沿った路を南に向かう。
時の領主「成田長親(なりたながちか)」はたった500人の軍勢で、石田三成が率いる2万の豊臣軍に喧嘩を売った。長親は、領民たちから「(でく)のぼう」と呼ばれて親しまれていたそうである。
秩父線行田市駅に近い「深町フライ店」をすぐに見つけ入店したら、恐ろしくぞんざいな客あしらいだったため急遽“プランB”に変更したのである。「フライ」の“基準になる味”をまったく持ち合わせていないわたしなので、店にこだわる必要も容赦も、金輪際ないのだ。
わざわざ行田まで出張ったのは、テレビでチラリと観たのだが、行田の名物B級グルメである「フライ」が北九州のお好み焼きによく似ているからで、どうしても一度食べてみたくなったのだ。人間、なにごとも億劫がったらおしまい、騙されたつもりで飛んで来たといっていい。前に“わ鐡”の水沼に来たときに時間がなくて一度断念してるしね。
10分と経たないうちに、右手に“プランB”の店「ときわ」を発見した。どこか香川の、製麺所がやっている“さぬきうどん店”みたいな佇まいである。
メニューをじっくり見て、フライと焼そばのそれぞれ「小」を注文した。先ほどの店では、焼きそば入りの折り畳んだフライを食べていたが、わたしは初めてなので別々に味わいたい。代金は合わせても720円と、どれもこれもジツに安い。
店の奥のテーブルに座っていると、まったくわたしと同じものを注文した常連客が入ってきて、自分のばかりでなくわたしの分までお茶を入れてくれて、恐縮してしまった。セルフで入れるお茶セットがあんなところにあったのか。
ジャーン! ソウルフードの“フライ”と焼そばが登場した。
まずは、焼きそばからいただく。うん、ソースの量が絶妙で軽やか、いい味だ。半分ふつうに食べ、残りをドッグパンかロールパンに挟んでむしゃむしゃがっつきたくなる。
さて、次はヘラでぎゅうぎゅうペッタンコでソースがべったり沁みた、大本命の「フライ」だ。
(オオッ! なんとも、これは旨い・・・)
お好み焼きをよく食べた、子どものころを思いだしてつい遠い眼つきになってしまう。あのころ通った数軒の店のひとつで味わったことのあるような懐かしい味である。見た目ほどソースがきつくなく、丁度いい。しかも今どき高価な玉子入りだ。これって焼酎にも酒にも合いそうだが、ないのが残念だ。善意のお茶でお茶をにごす。
もう一枚頼むか悩む。ああ、こんなことなら、電車の中でおにぎりをたべなければよかったなと悔やむ。
よし。またこの店を訪れて、そのときはしょうゆと梅じそ味のフライを食べて、謎の「ゼリーフライ」のじゃがいもにも挑戦し、そして今日食べたセット(ソースの焼きそばとフライ)は持ち帰ってパンの具と酒のアテにしたい。
常連客にはお茶の礼を繰返し、店主には代金を支払いながら「どちらも美味しかった!」と強めのひと言いって店をあとにした。はぁ、大満足。
騙されてなかったぞ。フライ、大いに気にいった。
行田も遠いけど、なんたってこちとら全国区なので隣町の範囲である。北九州ほど長距離ではないのだ。
さて、5月と6月に読んだ本ですが、今回も2カ月で7冊、累積で21冊。
1. △伊賀の残光 青山文平 新潮文庫
2. ○火喰い鳥 今村翔吾 祥伝社文庫
3.○上海 交代寄合伊奈衆異聞七 佐伯泰英 講談社文庫
4.○推定脅威 未須本有生 文春文庫
5.○京都しあわせ食堂 柏井壽 PHP研究所
6.○侠(おとこ)飯4 魅惑の立ち呑み篇 福澤徹三 文春文庫
7.◎ペットショップ無惨 IWGPXVⅢ 石田衣良 文芸春秋
図書館の6冊の予約枠のうち、5枠分が順番待ちで使えるのは1枠のみなので、予約待ちゼロ人を選んでの予約か直接書架から借りて読むしかなかった。
IWGPシリーズ「ペットショップ無惨」は、いつもどおりの安定ぶりで面白かった。
『たとえ一年に一度でも、神様のために小銭を放るって、いい気分だよな。
雲の上の誰かさんにこっちは元気でやってますって、報告している感じになる。いいことを願えば胸がすっきりして、
悪しき想念をデトックスした晴ればれとした気分にもなる。その場合、実は願いがかなうかなんて、どうでもいいのだ。
願うこと自体が頭とハートのいい運動なんだから。』
「神様のポケット」より
去年の年末からまったくロクな事がない。
晴ればれとした気分になりたいので、近い内に野毛の成田山にでもいってみるかな。
→「群馬・桐生、水沼駅温泉センター」の記事はこちら
→「読んだ本 2023年3月と4月」の記事はこちら
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