<餘部鉄橋>
長さ約310メートル、高さ41メートルの巨大な鉄橋である。トレッスル橋という
らしい。
「夢千代日記」というテレビドラマがあったのをご存知だろうか。
主役は吉永小百合である。わたしはファンだ。男なら、嫌いというひとはあまり
いないと思う。
1981年にNHKで放送されたから、なんと、いまから27年前になる。
山陰の温泉地の置屋「はる家」の女将であり、芸者でもある夢千代という女性を
とりまく人間模様を描いたドラマである。主人公は広島での被爆者を母に持ち、
胎児であった夢千代はそのせいで白血病を患う。あと、数年の命である。
作者の早坂暁いわく、吉永小百合(=夢千代)がいたからこそ書けた脚本だった
そうだ。
冒頭のシーン、定期的な検診を行って表日本(神戸)から電車で鉛の空の山陰へ
帰ってくる夢千代が、餘部鉄橋のシーンにおいて、そのシリーズの重要なひとと
重なるのだ。
鉄橋を列車が走ると、ガラガラを音がする。
「この音は山陰の音です。これを聞くと、帰ってきた気がします」
夢千代はそう言うのだ。
「(小さく)まいったなあ」
眺めへの男(神奈川県の川崎の刑事)の感嘆符。
「この鉄橋どこですか」
「アマルベです」
と、夢千代。
「アマルベ・・・こりゃァ、落ちたら一発だ。一発で死ぬなあ・・・」
と、乗客の男が窓から下をみて言う。
『はるか下の、せまい平地に屋根瓦の家々が身をよせ合うように群れ、そして、
白波がおしよせる荒海に向かって、可憐とも見える防波堤がつき出しているー小さ
な漁港である』
早坂暁の脚本にはそう書いてあるが、そうなのだろう。わたしは電車に乗って
ないのでわからない。
「はる家」の芸者の金魚(秋吉久美子)が列車の窓から身を投げようとして、たま
たま同じように隣の窓から身を投げようとした男をみていったんあきらめる、そん
な思いにかられる鉄橋である。
あとで海でふたりで心中するのだが。(金魚は死にきれなかったが)
「山一つ越えるとね、十度近く寒いの。山陰ははじめてなのね」
「続夢千代日記」の冒頭でのシーンでの、夢千代と寒そうに震えている家出少女と
の会話である。
この餘部鉄橋も、見納めなのが悲しい。
いわゆる鉄男と鉄子を、いっぱいみた。わたしも残してもらいたいと切に願う。
長さ約310メートル、高さ41メートルの巨大な鉄橋である。トレッスル橋という
らしい。
「夢千代日記」というテレビドラマがあったのをご存知だろうか。
主役は吉永小百合である。わたしはファンだ。男なら、嫌いというひとはあまり
いないと思う。
1981年にNHKで放送されたから、なんと、いまから27年前になる。
山陰の温泉地の置屋「はる家」の女将であり、芸者でもある夢千代という女性を
とりまく人間模様を描いたドラマである。主人公は広島での被爆者を母に持ち、
胎児であった夢千代はそのせいで白血病を患う。あと、数年の命である。
作者の早坂暁いわく、吉永小百合(=夢千代)がいたからこそ書けた脚本だった
そうだ。
冒頭のシーン、定期的な検診を行って表日本(神戸)から電車で鉛の空の山陰へ
帰ってくる夢千代が、餘部鉄橋のシーンにおいて、そのシリーズの重要なひとと
重なるのだ。
鉄橋を列車が走ると、ガラガラを音がする。
「この音は山陰の音です。これを聞くと、帰ってきた気がします」
夢千代はそう言うのだ。
「(小さく)まいったなあ」
眺めへの男(神奈川県の川崎の刑事)の感嘆符。
「この鉄橋どこですか」
「アマルベです」
と、夢千代。
「アマルベ・・・こりゃァ、落ちたら一発だ。一発で死ぬなあ・・・」
と、乗客の男が窓から下をみて言う。
『はるか下の、せまい平地に屋根瓦の家々が身をよせ合うように群れ、そして、
白波がおしよせる荒海に向かって、可憐とも見える防波堤がつき出しているー小さ
な漁港である』
早坂暁の脚本にはそう書いてあるが、そうなのだろう。わたしは電車に乗って
ないのでわからない。
「はる家」の芸者の金魚(秋吉久美子)が列車の窓から身を投げようとして、たま
たま同じように隣の窓から身を投げようとした男をみていったんあきらめる、そん
な思いにかられる鉄橋である。
あとで海でふたりで心中するのだが。(金魚は死にきれなかったが)
「山一つ越えるとね、十度近く寒いの。山陰ははじめてなのね」
「続夢千代日記」の冒頭でのシーンでの、夢千代と寒そうに震えている家出少女と
の会話である。
この餘部鉄橋も、見納めなのが悲しい。
いわゆる鉄男と鉄子を、いっぱいみた。わたしも残してもらいたいと切に願う。
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