温泉クンの旅日記

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読んだ本 2017年8月

2017-09-03 | 雑読録
  <読んだ本 2017年8月>

 八月だというのに、長雨のせいか意外と涼しくて寝やすい日も多かった。



(あれっ、現金がいるのかよ!)
 煙草の自動販売機が二台あって、わたしが吸っている銘柄の販売機が現金のみの販売となっていた。
 静岡の清水に向かってバイパスを走っていると「駿河健康ランド」という建物がドーンと眼の前に聳えていた。清水駅あたりのビジネスホテルでもいいが、たまにはこんなところに寄ってみるか。
 フロントで料金を訊くと入館料金二千五十円、宿泊(シングル)なら入館料金込みで六千百十円だったので泊まることにした。



 大入り満員のスルケンランド館内には老若男女がワンサといてちょっとした静岡版ワンダーランドのようだ。飲食施設は和食、寿司、焼肉、手打ち蕎麦、中華料理、甘味処、居酒屋、大食堂など驚くほどのバラエティだった。館内の店舗、売店、自販機などの支払いはすべて手首につけたバンドのバーコードでいったん済ませ、帰りがけの後払いとなっている。このシステムは前に後楽園ラクアで経験済みだ。
 
 現金専用の煙草自販機をよくみると、ゲームコーナーの機械でバーコードを使用して現金を借りられます、と注意書きが書いてありなんとも魂消た。ウソだろ、ややこしいことこの上ない。ゲームコーナーにいってみて、バーコードで千円(百円玉十枚)を借りて無事に煙草を買ったのだった。
 温泉は笑っちゃうレベルだったが、入館したときから罪悪感なく飲めるのがなんともアリガタイ施設であった。

 さて、8月に読んだ本ですが今月はまあまあの7冊、年間累計で58冊でした。

 1. ○ひかりの中の海           倉本總 理論社
 2. ○坂部ぎんさんを探してください   倉本總 理論社
 3.◎あきない世傳 金と銀三 奔流篇  高田郁 ハルキ文庫
 4. ○白椿幻想          田井洋子 日本放送作家組合
 5. ○橘花の仇 鎌倉河岸捕物控一    佐伯泰英 ハルキ文庫
 6. ○伊東静雄詩集          杉本秀太郎編 岩波文庫
 7. ◎鴨川食堂 おまかせ 4      柏井壽 小学館文庫

 鎌倉河岸捕物控はいわゆる江戸市井物だが、これは達者な先達作家が多くてテイストに合わなかった。佐伯泰英は剣豪物がわたしには無難なようだ。

「あきない世傳」と「鴨川食堂」の二冊が面白かった。あきないのほうは一巻から順に読まないとまずいが鴨川食堂はどの巻のどの話から読んでもいい。

「思い出の食、探します」の一行広告で、いろいろな客が看板も暖簾もない鴨川食堂へやってくる。
 草津温泉『さつき亭』の息子鈴木は、一度だけしか食べたことがない絶品の<から揚げ>を探してほしいと依頼する。そして、鴨川流とこいしの父娘がついに探し出す。
 ちょっと長いがご容赦を。

  「『さつき亭』はんで、掬子がお代りをお願いしたんは何やったか、覚えてはりますか?」
  「たしか千切りキャベツでしたね」
  「そうです。ただキャベツを切っただけのもんを、なんで掬子がわざわざお代りを頼みよったか。お分かりになりまっか?」
  「美味しかった・・・からですよね」
   鈴木が怪訝そうな顔を流に向けた。
  「そのとおり。美味しかったからですけど、なんで美味しかったか、分かりまっか?」
  「なんだか禅問答みたいですね。美味しいものは美味しい。だけじゃいけないんですか?」
   鈴木の表情からは、いくらか面倒がっている様子がうかがえる。
  「『さつき亭』さんへ伺う三日ほど前に、掬子の親知らずが腫れてしもたんで、歯医者はんで抜いてもろたんですわ。
  八寸をいただいとるときに、そんな話をしとったんを、仲居さんが聞いてはったんですわ。傷口に障らんよう、
  あとは柔らかくしてお出しします、て言うてくれはりましてな」
   流が天井に目を遊ばせた。
  「ひょっとしてキャベツもですか?」
   鈴木が目を大きく見開いた。




  「軽ぅに塩して柔らこうして、けどシャッキリした感覚を残すのは至難の業ですんや。それを見事にやってのけはったことに
  感動したんですやろな。掬子がお代りしよったんは、板場の皆さんへの感謝のしるしです。それに気づかはったお父さんが、
  わざわざ部屋に来てくれはった。それからのお付き合いなんですわ」
   流の話を聞いていた鈴木は無言のままで立ちすくんでいる。
  「旨いもん、っちゅうのは、そういうことですんや。特別な食材を使うやたら、秘伝のタレてなもんは、
  頭に残るかもしれまへんけど、心には響きまへん。お客はんのために何ができるか、何をどうしたらお客はんの心に伝わるか。
  食いもん商売で一番大事なんはそこです。たしかにあなたが『とり岳』で食べはった、そのときのから揚げは、
  飛びきり旨かったかもしれまへん。けど、その旨さを感じとったんは舌でもなければ胃袋でもない。心なんですわ」

       小学館文庫「鴨川食堂おまかせ 4」第五話 から揚げ より

 旨さを心で感じるような料理・・・か、まさしく同感だ。ただ、いつも料理をするひとには耳が痛いだろうな。


  →「読んだ本 2017年7月」の記事はこちら


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