<京都・伏見、月桂冠大倉記念館(1)>
祇園四条駅から京阪本線で乗車すること15分ほど、伏見桃山駅に降り立ったのは朝の8時過ぎだった。
「あのォ・・・月桂冠大倉記念館って、どっちへ行けばいいでしょうか」
閑散とした朝の伏見大手筋商店街で、店の前を掃き掃除をしている女性に道を尋ねた。
スマホで調べればいいのだが、悲しいかな人に訊くことが身にしみついているのだ。目当ての酒蔵まで、駅からは徒歩で10分くらいと所要時間は調べてあった。
教えてもらった道順をたどり、月桂冠大倉記念館に到着したのは8時半ごろである。開館時間は9時半なので、そのまま前を通り過ぎて近くを散策することにした。
酒蔵裏にある、宇治川派流を渡る弁天橋の途中で、遊覧船「十石舟」の乗船場をみつけ、足を止める。残念ながら今日は運行していないようだ。
冬場、琵琶湖から流れるてくる川の水を上流で止めて、安全維持のため河川改修等を行うため12月中旬から3月中旬の間は運休期間に入ったのだ。なに、どうせ今日は下見である。
川沿いに曲がってすぐにある「東光山 長建寺」は、真言宗醍醐派の寺である。本尊は「八臂弁財天」で、弁財天を本尊とする寺は京都でもここだけだ。
京都で最も開花が早いといわれる枝垂れ桜「糸桜」があることで知られている。
長建寺山門から川向かいの酒蔵あたりの景色は、伏見を代表するもので「新京都百景」のひとつに数えられている。山門前の階段を降りて、川沿いの遊歩道をゆっくり散歩することにした。
降りた川向こうに乗船場があった。
名水に恵まれ、現在も酒処として知られる伏見は、江戸のころには淀川舟運の拠点として栄えた。1997年に復活した遊覧船だが、当時伏見と大阪間を三十石の米を積んでいたことに因む「三十石舟」という観光船と、定員数の少ない「十石舟」が運行されている。
一度、満開の桜の季節に十石舟に乗ってみたい。
シーズンオフの川沿いの遊歩道には誰もおらず、犬を連れて散歩する人と一度だけすれ違った。
桜のシーズンには、舟の運航する川沿いには百数十本の桜が開花する。夏場には涼しげな紫陽花が、秋には紅葉が水辺を彩る。
滑るように進む十石舟で、爽やかな風を頬に受け、風情のある連なる酒蔵と古い町並みを見あげながら、伏見城の外堀であった“濠川”につながる「宇治川派流」をゆっくり往復するのだ。
川沿いの路には、ところどころに紅葉の名残りがあった。
立ちどまり、携帯灰皿で煙草を吸いながら休憩する。
時計を確認するといい頃合いである。なかなか有意義な時間を過ごせた。そろそろ酒蔵に引き返してみるとするか。
― 続く ―
→「京都、千本鳥居と百年食堂(1)」の記事はこちら
→「京都、千本鳥居と百年食堂(2)」の記事はこちら
祇園四条駅から京阪本線で乗車すること15分ほど、伏見桃山駅に降り立ったのは朝の8時過ぎだった。
「あのォ・・・月桂冠大倉記念館って、どっちへ行けばいいでしょうか」
閑散とした朝の伏見大手筋商店街で、店の前を掃き掃除をしている女性に道を尋ねた。
スマホで調べればいいのだが、悲しいかな人に訊くことが身にしみついているのだ。目当ての酒蔵まで、駅からは徒歩で10分くらいと所要時間は調べてあった。
教えてもらった道順をたどり、月桂冠大倉記念館に到着したのは8時半ごろである。開館時間は9時半なので、そのまま前を通り過ぎて近くを散策することにした。
酒蔵裏にある、宇治川派流を渡る弁天橋の途中で、遊覧船「十石舟」の乗船場をみつけ、足を止める。残念ながら今日は運行していないようだ。
冬場、琵琶湖から流れるてくる川の水を上流で止めて、安全維持のため河川改修等を行うため12月中旬から3月中旬の間は運休期間に入ったのだ。なに、どうせ今日は下見である。
川沿いに曲がってすぐにある「東光山 長建寺」は、真言宗醍醐派の寺である。本尊は「八臂弁財天」で、弁財天を本尊とする寺は京都でもここだけだ。
京都で最も開花が早いといわれる枝垂れ桜「糸桜」があることで知られている。
長建寺山門から川向かいの酒蔵あたりの景色は、伏見を代表するもので「新京都百景」のひとつに数えられている。山門前の階段を降りて、川沿いの遊歩道をゆっくり散歩することにした。
降りた川向こうに乗船場があった。
名水に恵まれ、現在も酒処として知られる伏見は、江戸のころには淀川舟運の拠点として栄えた。1997年に復活した遊覧船だが、当時伏見と大阪間を三十石の米を積んでいたことに因む「三十石舟」という観光船と、定員数の少ない「十石舟」が運行されている。
一度、満開の桜の季節に十石舟に乗ってみたい。
シーズンオフの川沿いの遊歩道には誰もおらず、犬を連れて散歩する人と一度だけすれ違った。
桜のシーズンには、舟の運航する川沿いには百数十本の桜が開花する。夏場には涼しげな紫陽花が、秋には紅葉が水辺を彩る。
滑るように進む十石舟で、爽やかな風を頬に受け、風情のある連なる酒蔵と古い町並みを見あげながら、伏見城の外堀であった“濠川”につながる「宇治川派流」をゆっくり往復するのだ。
川沿いの路には、ところどころに紅葉の名残りがあった。
立ちどまり、携帯灰皿で煙草を吸いながら休憩する。
時計を確認するといい頃合いである。なかなか有意義な時間を過ごせた。そろそろ酒蔵に引き返してみるとするか。
― 続く ―
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→「京都、千本鳥居と百年食堂(2)」の記事はこちら
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