<遥かなる知床、ウトロ温泉へ(3)>
ぶるるるる・・・ライティングデスクに置いた携帯が派手に振動を始める。
ロビーフロアで暇潰しにぶらぶらしているときに、日没時間が掲示されているのをみつけてアラームをセットしておいたのだ。もちろん、余裕をもってその時間の15分前にしておいた。
(可能性は少ないが一応いってみるとしようか)
一階の西側にあるラウンジに入り、窓際に近づきオホーツク海を眺める。大量にあった雲がさきほどより驚くほど少なくなっている。
見えるかもしれんぞ。客用のクロックスを穿き、庭にでた。
「おっ、見えたぞ!」
ミディ丈のスカートと二―ハイブーツを穿いたやんごとなき美形のレディが、洒落たヒップバーに腰かけた瞬間、可愛い膝小僧がこぼれ出て白い美脚もほんのチラリと見えた・・・そんな感じ。(この表現ってハラスメントかな)
ラッキー!
そのまま、そのままじっとして、動かないで。あのエゾモモンガみたいに。
どうやら、わたしは画像に旅情をそそられるようだ。
映画とテレビとかから、物語そっちのけで、一瞬の風景画像を切り取って心に焼きつけるのだ。魅惑的なナレーターの声で語られる旅番組とスポットで繰返し流されるコマーシャルのときもある。
風景写真や、雑踏のなかで見る駅構内に貼ってあるポスターなど、既に切り取られた画像もある。
映画では意外や寅さんの映画が多いのである。(意外でもないか)他には高倉健主演の「駅 STATION」、「幸福の黄色いハンカチ」、「あなたへ」くらい。テレビドラマでは「北の国から」とか「青い鳥」だろうか。
わたしが、ウトロの夕陽にこだわったのは、たぶん、昭和62年(1987)年8月に封切の第38作「男はつらいよ 知床慕情」のせいだと思う。
オホーツク海に沈む赤い夕陽・・・それを見ている寅さんとりん子。そんなシーンを記憶している。(宿泊料金で悶着を起こした今、自信はないが)
「今言わなかったらな、一生死ぬまで言えないぞ」
知床で居候している寅さんが、やもめ暮らしの獣医である上野順吉(三船敏郎)にウトロのスナック<はまなす>の雇われママ悦子(淡路恵子)に愛の告白を勧めたシーンでの名セリフ。悦子は近々に知床を去って、故郷の新潟で芸者をしている妹と暮らすと決めたという。
この映画でのマドンナは、東京から出戻ってきた順吉の娘りん子(竹下景子)。
ふた昔前、日本海側の苫前(留萌の北)から、方向違いのオホーツク海側である知床ウトロの夕陽をみるためにひたすら突っ走ったが、あえなくスピード違反で捕まってしまい、夕陽が見られる時間に到着することは叶わなかった。
摩周ブルーとか羅臼岳の全容とかオホーツク海に沈む夕陽など、大自然を観る僥倖にめぐりあうには、とどのつまり<幸運>という切り札が一枚どうしても必要なのである。
長年果たせなかったミッションを完遂できたわけで、これでウトロの地に心残りはなくなった。荘厳で雄大な夕暮れの絶景とまではいかなかったけど、満足である。超地味だったけどね、いいの、いーの。
ホテル到着からずっと続いていた、けったくそ悪い気分も晴れてきたぞ。
― 続く ―
→「遥かなる知床、ウトロ温泉へ(1)」の記事はこちら
→「遥かなる知床、ウトロ温泉へ(2)」の記事はこちら
→「夕陽」の記事はこちら
→「摩周ブルー、そんでもってカットメロン」の記事はこちら
ぶるるるる・・・ライティングデスクに置いた携帯が派手に振動を始める。
ロビーフロアで暇潰しにぶらぶらしているときに、日没時間が掲示されているのをみつけてアラームをセットしておいたのだ。もちろん、余裕をもってその時間の15分前にしておいた。
(可能性は少ないが一応いってみるとしようか)
一階の西側にあるラウンジに入り、窓際に近づきオホーツク海を眺める。大量にあった雲がさきほどより驚くほど少なくなっている。
見えるかもしれんぞ。客用のクロックスを穿き、庭にでた。
「おっ、見えたぞ!」
ミディ丈のスカートと二―ハイブーツを穿いたやんごとなき美形のレディが、洒落たヒップバーに腰かけた瞬間、可愛い膝小僧がこぼれ出て白い美脚もほんのチラリと見えた・・・そんな感じ。(この表現ってハラスメントかな)
ラッキー!
そのまま、そのままじっとして、動かないで。あのエゾモモンガみたいに。
どうやら、わたしは画像に旅情をそそられるようだ。
映画とテレビとかから、物語そっちのけで、一瞬の風景画像を切り取って心に焼きつけるのだ。魅惑的なナレーターの声で語られる旅番組とスポットで繰返し流されるコマーシャルのときもある。
風景写真や、雑踏のなかで見る駅構内に貼ってあるポスターなど、既に切り取られた画像もある。
映画では意外や寅さんの映画が多いのである。(意外でもないか)他には高倉健主演の「駅 STATION」、「幸福の黄色いハンカチ」、「あなたへ」くらい。テレビドラマでは「北の国から」とか「青い鳥」だろうか。
わたしが、ウトロの夕陽にこだわったのは、たぶん、昭和62年(1987)年8月に封切の第38作「男はつらいよ 知床慕情」のせいだと思う。
オホーツク海に沈む赤い夕陽・・・それを見ている寅さんとりん子。そんなシーンを記憶している。(宿泊料金で悶着を起こした今、自信はないが)
「今言わなかったらな、一生死ぬまで言えないぞ」
知床で居候している寅さんが、やもめ暮らしの獣医である上野順吉(三船敏郎)にウトロのスナック<はまなす>の雇われママ悦子(淡路恵子)に愛の告白を勧めたシーンでの名セリフ。悦子は近々に知床を去って、故郷の新潟で芸者をしている妹と暮らすと決めたという。
この映画でのマドンナは、東京から出戻ってきた順吉の娘りん子(竹下景子)。
ふた昔前、日本海側の苫前(留萌の北)から、方向違いのオホーツク海側である知床ウトロの夕陽をみるためにひたすら突っ走ったが、あえなくスピード違反で捕まってしまい、夕陽が見られる時間に到着することは叶わなかった。
摩周ブルーとか羅臼岳の全容とかオホーツク海に沈む夕陽など、大自然を観る僥倖にめぐりあうには、とどのつまり<幸運>という切り札が一枚どうしても必要なのである。
長年果たせなかったミッションを完遂できたわけで、これでウトロの地に心残りはなくなった。荘厳で雄大な夕暮れの絶景とまではいかなかったけど、満足である。超地味だったけどね、いいの、いーの。
ホテル到着からずっと続いていた、けったくそ悪い気分も晴れてきたぞ。
― 続く ―
→「遥かなる知床、ウトロ温泉へ(1)」の記事はこちら
→「遥かなる知床、ウトロ温泉へ(2)」の記事はこちら
→「夕陽」の記事はこちら
→「摩周ブルー、そんでもってカットメロン」の記事はこちら
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