<読んだ本 2009年11月>
超強行スケジュール(いつものことだが)で三重県を走っていたときのことだ。
海沿いの国道をひたすら伊勢を目指していた。
進行方向の右側に渚が続いている。
あれは、いったいなんだ!
遠目でも、そうとうに莫迦でかいものが浜辺に打ち上げられている。
鯨か。
鯨漁で有名な和歌山県の太市町も、すぐ近くである。
途中で車をとめ、歩道橋のうえからバードウォッチ用の双眼鏡でたしかめる
と、なんと横倒しになった船であった。
そういえば、ラジオのニュースでやっていたのを思い出す。
一族に船乗りがいるので、船の事故には敏感で、ついつい聞き耳をたててしま
うのだ。
『東京から鹿児島県の志布志港に向かっていたフェリー「ありあけ」は13
日早朝、三重県尾鷲市の三木埼(みきさき)灯台の南約四十キロの熊野灘
を航行中に横波を受けて傾き、浅瀬で座礁、横転した。乗員21名、乗客
7名は海上保安庁のヘリコプターや巡視船により全員救助された・・・』
そうか、どこか遠くのことと思っていたら案外身近な出来事だったのだ。乗員
乗客が全員無事はなによりである。
近づいてくると、みんな眼を奪われて走行している車の速度が落ちていく。
わたしも、危ないけれどもカメラを船の方向にむけて見当でシャッターを切
った。
さて、読んだ本の話ですが、今月は情けなくもたったの4冊、2009年の累計で
55冊です。
1.○ブラディ・リバー・ブルース ジェフリー・ディバー 早川書房
2.◎ヘルズ・キッチン ジェフリー・ディバー 早川書房
3.○夜の桃 石田衣良 新潮社
4.○妖説 太閤記(上) 山田風太郎 講談社
リンカーン・ライムとは別な主人公のシリーズ「ブラディ・リバー・ブルー
ス」「シャロウ・グレイブズ」「ヘルズ・キッチン」と三冊読んだがいまひとつ
である。
ジェフリー・ディーバーは、お勧めするならやっぱり「リンカーン・ライム」
シリーズであります。
「ヘルズ・キッチン」で、放火されたホテルの描写であるが、これは迫力が
あった。長いが引用してみる。
『炎よりも人をぞっとさせたのは煙だった。高圧力で押し出されているかの
ように、あっという間にあたりは煙だらけになった。電気系統はすぐに
止まり、煙のカーテンに囲まれたまま、ロビーも廊下も闇に閉ざされて
いった。赤々と輝く非常口の標識でさえ見えなくなっていった。
悲鳴、電話のベル、非常ベル。なかでもひときわ大きく響いていたのは、
荒れ狂う炎の低いうなり声だった。
炎は安手の緑色のカーペットを呑み込み、たちまち黒焦げにしていった。
炎はプラスティックをあぶり、しわの寄った皮膚のように縮ませていった。
炎は壁を這い、漆喰をバターのように溶かしていった。炎は泥水のように
どんよりとした煙を吐き出し、行き止まりのアルコープに閉じ込められた
五、六名の外国人客の息を詰まらせていった。
炎はキスをし、炎は命を奪っていく。
・・・
階上では、正装したひとりの若者がいいことを思いついたとばかりに、水を
いっぱいに満たした浴槽に飛び込んだ。こうすれば安全だろうと思って・・・
二時間後、吐き気をこらえながら捜索中のレスキュー隊員らによって、若者
の体の残骸が発見された。沸点に向かってゆっくり加熱されつづけている
浴槽のなかで。・・・
・・・
高層階に滞在中の客たちのなかには、ここまでは火も上がってこないから
大丈夫だと信じている者もいた。煙がうっすらとあたりに立ち込めてくる
と、彼らは落ち着いて緊急の際の手引書を読み、その指示に従って浴用
タオルを濡らし、顔を覆うと、静かに床に座って救いの手を待った。
そうして一酸化炭素中毒で気を失い、穏やかに死んでいった。・・・』
石田衣良の「夜の桃」は、読んでいると「あれ、これって渡辺淳一だったけ
か」と思うような本である。つまり後ろに背の高いひとが立つと、読むのをやめ
てしまうような恥ずかしい文章が続く。路線変更したのだろうか。
山田風太郎は「くのいち忍法帖」とかの、忍法帖シリーズが有名だが、こん
な「太閤記」も書いていたのかと思い、思わず借りてしまったものだ。
→「読んだ本 2009年10月」の記事はこちら
超強行スケジュール(いつものことだが)で三重県を走っていたときのことだ。
海沿いの国道をひたすら伊勢を目指していた。
進行方向の右側に渚が続いている。
あれは、いったいなんだ!
遠目でも、そうとうに莫迦でかいものが浜辺に打ち上げられている。
鯨か。
鯨漁で有名な和歌山県の太市町も、すぐ近くである。
途中で車をとめ、歩道橋のうえからバードウォッチ用の双眼鏡でたしかめる
と、なんと横倒しになった船であった。
そういえば、ラジオのニュースでやっていたのを思い出す。
一族に船乗りがいるので、船の事故には敏感で、ついつい聞き耳をたててしま
うのだ。
『東京から鹿児島県の志布志港に向かっていたフェリー「ありあけ」は13
日早朝、三重県尾鷲市の三木埼(みきさき)灯台の南約四十キロの熊野灘
を航行中に横波を受けて傾き、浅瀬で座礁、横転した。乗員21名、乗客
7名は海上保安庁のヘリコプターや巡視船により全員救助された・・・』
そうか、どこか遠くのことと思っていたら案外身近な出来事だったのだ。乗員
乗客が全員無事はなによりである。
近づいてくると、みんな眼を奪われて走行している車の速度が落ちていく。
わたしも、危ないけれどもカメラを船の方向にむけて見当でシャッターを切
った。
さて、読んだ本の話ですが、今月は情けなくもたったの4冊、2009年の累計で
55冊です。
1.○ブラディ・リバー・ブルース ジェフリー・ディバー 早川書房
2.◎ヘルズ・キッチン ジェフリー・ディバー 早川書房
3.○夜の桃 石田衣良 新潮社
4.○妖説 太閤記(上) 山田風太郎 講談社
リンカーン・ライムとは別な主人公のシリーズ「ブラディ・リバー・ブルー
ス」「シャロウ・グレイブズ」「ヘルズ・キッチン」と三冊読んだがいまひとつ
である。
ジェフリー・ディーバーは、お勧めするならやっぱり「リンカーン・ライム」
シリーズであります。
「ヘルズ・キッチン」で、放火されたホテルの描写であるが、これは迫力が
あった。長いが引用してみる。
『炎よりも人をぞっとさせたのは煙だった。高圧力で押し出されているかの
ように、あっという間にあたりは煙だらけになった。電気系統はすぐに
止まり、煙のカーテンに囲まれたまま、ロビーも廊下も闇に閉ざされて
いった。赤々と輝く非常口の標識でさえ見えなくなっていった。
悲鳴、電話のベル、非常ベル。なかでもひときわ大きく響いていたのは、
荒れ狂う炎の低いうなり声だった。
炎は安手の緑色のカーペットを呑み込み、たちまち黒焦げにしていった。
炎はプラスティックをあぶり、しわの寄った皮膚のように縮ませていった。
炎は壁を這い、漆喰をバターのように溶かしていった。炎は泥水のように
どんよりとした煙を吐き出し、行き止まりのアルコープに閉じ込められた
五、六名の外国人客の息を詰まらせていった。
炎はキスをし、炎は命を奪っていく。
・・・
階上では、正装したひとりの若者がいいことを思いついたとばかりに、水を
いっぱいに満たした浴槽に飛び込んだ。こうすれば安全だろうと思って・・・
二時間後、吐き気をこらえながら捜索中のレスキュー隊員らによって、若者
の体の残骸が発見された。沸点に向かってゆっくり加熱されつづけている
浴槽のなかで。・・・
・・・
高層階に滞在中の客たちのなかには、ここまでは火も上がってこないから
大丈夫だと信じている者もいた。煙がうっすらとあたりに立ち込めてくる
と、彼らは落ち着いて緊急の際の手引書を読み、その指示に従って浴用
タオルを濡らし、顔を覆うと、静かに床に座って救いの手を待った。
そうして一酸化炭素中毒で気を失い、穏やかに死んでいった。・・・』
石田衣良の「夜の桃」は、読んでいると「あれ、これって渡辺淳一だったけ
か」と思うような本である。つまり後ろに背の高いひとが立つと、読むのをやめ
てしまうような恥ずかしい文章が続く。路線変更したのだろうか。
山田風太郎は「くのいち忍法帖」とかの、忍法帖シリーズが有名だが、こん
な「太閤記」も書いていたのかと思い、思わず借りてしまったものだ。
→「読んだ本 2009年10月」の記事はこちら
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます