<京都・東寺通、殿田食堂のうどん>
(さあて、そろそろホテルに戻ってチェックインでもするか・・・)
東本願寺の別邸「渉成園」の観光をサクッとすませ、門を後に歩きだす。
京都駅の構内を通り抜け、ホテルへ向かっていると、なんか小腹が空いてきた。それに喉も乾いている。移動の電車の中でおにぎり二個を食べたきりであった。
そうだ! 先ほどチラリと見た店にいってみるとしよう。まずはホテルに荷物を預けにいくのに往復したとき、客が次々に吸い込まれていく蕎麦屋らしき店があったのだ。
(ここだ! 殿田というのか・・・)
あとで調べると、この店は昭和38年(1963年)創業の老舗食堂「殿田食堂」だった。京都駅から徒歩で5分と、とても便利な場所にある。
店に入り、腰を降ろしメニューを手にとった。冷たい麺類を探すがぜんぜんみつからない。
悩んでいるのをみかねたのか、人気メニューをいくつか奨めてくれたので、それの最初の「たぬきうどん」にのっかることにした。後でわかったが、どうやら名物らしい。
喉もかわいていたので、冷酒か常温の日本酒でもと思ったがサワ―すら無く、瓶ビールのみ。しかたがない。他のテーブルの客を真似て珍しくビールを追加した。
店内を見渡すと、どうやら全面禁煙のようである。まあ、これは予想通りだけど。京都駅にある喫煙所で一服しといてよかった。
ビールを飲んでいると、「たぬきうどん」が運ばれてきた。
関東モンなら思わず「これ、オレ頼んだ“たぬき”と違うぞ!」と叫びそうなルックスの、天かすなしのシロモノである。横浜生まれのわたしもまったくの初対面であるが知識だけはあったので、比較的落ち着いた表情でお迎えできた。
愛読している柏井壽著の、鴨川食堂シリーズ10冊目となる「鴨川食堂 ひっこし」を読んでいたら、まったく偶然にこの店のうどんを書いた文章にめぐりあった。さすがにプロの文筆家、段違いに優れた描写の名文なので図々しくも引用させていただく。
『うちの探偵事務所から、京都駅をはさんで、ちょうど反対側、東寺通にある「殿田」はんは、
お父ちゃんもよう食べにいかはるおうどん屋さん、お昼はたいていここです。
京都らしいお飾りは一切ありません。普通の食堂ていう雰囲気がええんです。ご近所さんと観光客の
お客さんが、程よう混じり合うてはります。
おうどん、中華そば、お丼、何を食べても美味しいんですけど、うちの一番のお奨めは
「たぬきうどん」です。
京都ではお揚げさんを載せて、餡かけにしたんを「たぬき」て言いますねん。「きつね」が餡かけで
「たぬき」に化けた、ていうことですねんよ。
九条ネギの刻んだんをたっぷり載せて、おろし生姜を天盛りにして食べたら、熱々のとろとろの餡と、
じゅわーっと味の染み出るお揚げさんがたまりまへん。
京都のおうどんは、やわらかいのが一番の特徴です。讃岐うどんみたいなコシは一切ありませんねん。
そやさかい、うちらは「こし抜けうどん」て呼んでます。
主役はお出汁です。色は薄いけど、お昆布と鰹のお味はしっかり付いてます。その出汁の餡を
食べるんです。おうどんは脇役やさかい目立ったらあきません。ほんのり甘うて芳ばしいお出汁の
餡が絡んだお揚げさんとおうどんは、ホンマ美味しおすえ。』
―「京都のたぬきうどん」より
そうそう、大家から立ち退きを迫られている「鴨川食堂」だが、わたしが観光した「渉成園」の蝉き声が届くほど近い距離にあることもこの本で知ったのだった。
京都では「京都御苑」を境に、北を「上(かみ)、南を「下(しも)」と呼ぶ。おおむね下は繁華な地域で上は住宅地と色分けされている。こいつは、京都の“左右の謎(左京区・右京区)”よりはずっとわかりやすい。(参照「京都、大原三千院(2)」の記事)
鴨川食堂だが、「下」の東本願寺近くから、どうやら「上」の上賀茂神社近くに移転になるようである。(まだ読んでいる途中なのだ)
京都のたぬきうどん、満足した。
いい店みつけたが、アルコール類の選択肢がひとつだけというのはジツに惜しい。
→「京都、大原三千院(2)」の記事はこちら
(さあて、そろそろホテルに戻ってチェックインでもするか・・・)
東本願寺の別邸「渉成園」の観光をサクッとすませ、門を後に歩きだす。
京都駅の構内を通り抜け、ホテルへ向かっていると、なんか小腹が空いてきた。それに喉も乾いている。移動の電車の中でおにぎり二個を食べたきりであった。
そうだ! 先ほどチラリと見た店にいってみるとしよう。まずはホテルに荷物を預けにいくのに往復したとき、客が次々に吸い込まれていく蕎麦屋らしき店があったのだ。
(ここだ! 殿田というのか・・・)
あとで調べると、この店は昭和38年(1963年)創業の老舗食堂「殿田食堂」だった。京都駅から徒歩で5分と、とても便利な場所にある。
店に入り、腰を降ろしメニューを手にとった。冷たい麺類を探すがぜんぜんみつからない。
悩んでいるのをみかねたのか、人気メニューをいくつか奨めてくれたので、それの最初の「たぬきうどん」にのっかることにした。後でわかったが、どうやら名物らしい。
喉もかわいていたので、冷酒か常温の日本酒でもと思ったがサワ―すら無く、瓶ビールのみ。しかたがない。他のテーブルの客を真似て珍しくビールを追加した。
店内を見渡すと、どうやら全面禁煙のようである。まあ、これは予想通りだけど。京都駅にある喫煙所で一服しといてよかった。
ビールを飲んでいると、「たぬきうどん」が運ばれてきた。
関東モンなら思わず「これ、オレ頼んだ“たぬき”と違うぞ!」と叫びそうなルックスの、天かすなしのシロモノである。横浜生まれのわたしもまったくの初対面であるが知識だけはあったので、比較的落ち着いた表情でお迎えできた。
愛読している柏井壽著の、鴨川食堂シリーズ10冊目となる「鴨川食堂 ひっこし」を読んでいたら、まったく偶然にこの店のうどんを書いた文章にめぐりあった。さすがにプロの文筆家、段違いに優れた描写の名文なので図々しくも引用させていただく。
『うちの探偵事務所から、京都駅をはさんで、ちょうど反対側、東寺通にある「殿田」はんは、
お父ちゃんもよう食べにいかはるおうどん屋さん、お昼はたいていここです。
京都らしいお飾りは一切ありません。普通の食堂ていう雰囲気がええんです。ご近所さんと観光客の
お客さんが、程よう混じり合うてはります。
おうどん、中華そば、お丼、何を食べても美味しいんですけど、うちの一番のお奨めは
「たぬきうどん」です。
京都ではお揚げさんを載せて、餡かけにしたんを「たぬき」て言いますねん。「きつね」が餡かけで
「たぬき」に化けた、ていうことですねんよ。
九条ネギの刻んだんをたっぷり載せて、おろし生姜を天盛りにして食べたら、熱々のとろとろの餡と、
じゅわーっと味の染み出るお揚げさんがたまりまへん。
京都のおうどんは、やわらかいのが一番の特徴です。讃岐うどんみたいなコシは一切ありませんねん。
そやさかい、うちらは「こし抜けうどん」て呼んでます。
主役はお出汁です。色は薄いけど、お昆布と鰹のお味はしっかり付いてます。その出汁の餡を
食べるんです。おうどんは脇役やさかい目立ったらあきません。ほんのり甘うて芳ばしいお出汁の
餡が絡んだお揚げさんとおうどんは、ホンマ美味しおすえ。』
―「京都のたぬきうどん」より
そうそう、大家から立ち退きを迫られている「鴨川食堂」だが、わたしが観光した「渉成園」の蝉き声が届くほど近い距離にあることもこの本で知ったのだった。
京都では「京都御苑」を境に、北を「上(かみ)、南を「下(しも)」と呼ぶ。おおむね下は繁華な地域で上は住宅地と色分けされている。こいつは、京都の“左右の謎(左京区・右京区)”よりはずっとわかりやすい。(参照「京都、大原三千院(2)」の記事)
鴨川食堂だが、「下」の東本願寺近くから、どうやら「上」の上賀茂神社近くに移転になるようである。(まだ読んでいる途中なのだ)
京都のたぬきうどん、満足した。
いい店みつけたが、アルコール類の選択肢がひとつだけというのはジツに惜しい。
→「京都、大原三千院(2)」の記事はこちら
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