温泉クンの旅日記

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根岸の里のおでん

2012-10-24 | 食べある記
  <根岸の里のおでん>

 現在の鶯谷、日暮里、入谷、三ノ輪あたり一帯を、その昔「根岸」といった。
 江戸時代には、田園が広がる文人墨客に好まれる風雅なところで、富裕な商家の寮(隠居所)やら大名たちの別荘が多くあった。池波正太郎の小説「剣客商売」などにもこの土地はよく登場する。

 日暮里駅の、すっかり様変わりして綺麗になってしまった南口周辺から中央通を抜けてひたすらまっすぐ歩く。繊維街の色とりどりの店先を眺めながら十五分ほど歩くと、路沿いの右手にその店が見えてきた。



 店名の「ねぎし丸昇」であるが、現在の住所地名でいうと根岸ではなく東日暮里になる。店のすぐ前の路の向こうが根岸である。

 営業時間の午前十一時前であるのにすでに暖簾が出ている。



 店の左側半分がおでん、右側が大学いもを販売していて、ガラス越しに覗くとちょうど大学いもの後ろにテーブルがふたつほど置いてありそこで座って食べられるようだ。





 おでん側の入り口からはいった。
「いらっしゃい。お持ち帰りでしょうか、こちらでお召し上がりでしょうか」
 おでん鍋を前にして、年配の店主が訊く。
「食べていきます。ええーと、ちくわぶと・・・」



 壁に貼られた品書きをみながら四つほど注文した。
 どれも安い。さすがに学校帰りの子どもたちにも絶大な人気があるはずだ。
「では席にお持ちしますので、奥のほうへ」



 大学いも担当の奥さんが、大皿で持ってきてくれた。おビールでも出しましょうかと勧められたが、酒なら呑みたいがビールはあまり呑まないので水にしてもらう。それに、まだ午前中だ。

 まずは、ちくわぶからいってみよう。なるほど「江戸うすくち」というだけあってかなりな薄味だがいける味だ。個人的には煮過ぎてでろでろなヤツが好きなのだが。小ぶりなのであとで追加しよう。レンゲで出汁を掬って飲むとやっぱり上品な薄味だ。
 次は餅っこ。



 こちらはちょうどいい煮えぐあいだ。巾着のなかは昆布をいれずシンプルに餅だけのほうがいいかな。
 大根は別の鍋でつくられたもので、ほどよい固さだがしっかり煮込んである。

 食べている間にも、次から次へとお持ち帰りの客がくる。
 見ているとおでんより大学いもの持ち帰り客のほうが断然多い。
 ふーむ、大いに気になるので大学いもを一皿注文する。

 

 おでん側の入り口からサラリーマン風のひとが入ってきて、常連なのだろう、店主と奥さんと親しげに言葉を交わし、わたしの横のテーブルに座る。

 大学いもが運ばれてくる。



 食べるのは子どものときいらいだから、恐る恐るひと齧りする。
 ややや、外側が薄い部分がパリッとしているがなかはほくほくで甘さが控えめ上品である。これは旨い。甘党ではないが、三つくらいはなんとかいけそうである。

 隣の常連のところへ大皿の盛り合わせおでんが届く。たしか注文していなかったはずなのに、さすがは常連だ。缶ビールを追加で注文している。
 こちらもおでんを食べ終わり、追加をしたいが持ち帰り客がひっきりなしなのでタイミングがとれない。

 大学いもを三つ食べ終わると、なんとなく腹がふくれたせいか煙草が吸いたくなってきた。この店は禁煙なので、切りあげて勘定にしてもらう。
 横浜の下町生まれなので、おでんはちょっと上品すぎた。もうすこし味が濃いほうがいいのと、日本酒を置いてくれるとありがたいが、これはどちらも無理か。


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