温泉クンの旅日記

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豊後・杵築を歩く(1)

2012-01-22 | ぶらり・フォト・エッセイ
  <豊後・杵築を歩く(1)>

 国東半島の城下町、杵築(「きつき」と読む)は、昭和の町で知られる豊後高田に訪れたときに通っているはずだが、訪れるのは初めてである。
 杵築は別府から近く、国道を使い車で三十分くらいの距離だ。由布院からでも高速を使えば同じ時間で行かれる。

 まずはランドマークの杵築城へ。

「お前さん、歩くのが好きなのかい?」
 杵築城のそばの駐車場に止めて車を降りたわたしに、いきなりズバリと鋭い質問を投げかけたのは、地元のお婆さんだった。たしかにわたしは歩くのは好きだが、どうして・・・。
「えーと、杵築城に行くにはここから歩くんですよね?」
 うろたえて、質問に思わず質問で返してしまう。
「杵築城に行くんならこんな遠くに止めず、お城の近くまで車で行けばいいよ」
 そうなんだ。わたしはお礼を言って、また車に乗り込んだのだった。

 城門をはいって奥に進む。



 たしかにお婆さんがいうとおり、奥の駐車場は近かったな。平日なので観光客はまるでいない。

 杵築城は、応永元年(1394年)に木付頼直によって八坂川河口の天然の要害、台山の上に築かれた。当時は「木付城」といった。
 その後、正保2年(1645年)には松平英親が入城して十代守り続き、明治維新まで居を構えた。



 現在は城山公園として整備され本丸、二の丸、三の丸の石垣と濠の一部が残っており、山上に資料館と展望台を兼ねた三層の模擬の天守閣が建っている。

 この天守のある高台からは、守江湾の海が一望できる。





 この城山公園には、ちょっと心が騒ぐ石造群がある。



「仏の郷、国東半島」に点在していた石造を集めたものだ。
 これがなんともいいのである。
 それぞれの石造には、その造られた時代と石碑の名前が立て札に書かれている。



 長い年月を経て、雨風に何度もさらされて角がとれて丸くなり、苔むして、どの石造にもとても深い味わいがある。
 真っすぐに立っていなく、すこし傾いたりしているところもなんともいい。



 いま、気が遠くなるような時の流れの集積をわたしはみつめている・・・そんな気がする。



 ざわざわと騒いでいた心も、風がなくなった水面のようにいつしか凪いでいく。



 なんとも形容しがたい仏の笑みに、時を忘れて、見入ってしまった。


   ― 続く ―


  →「昭和の町①」の記事はこちら
  →「昭和の町②」の記事はこちら
  →「昭和の町③」の記事はこちら

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