< 空 >
心のなかにも空があるのだろうか。
その日のベースになる気分が、意外と天気に左右される。
朝起きて青空をみあげると、たったそれだけのことなのに気分がいい。よーし
今日も一日やるぞ。そんな活力がチョッピリ生まれる。
反対に、雨の日はそれだけでたちまち気鬱になってしまう。あーあ、そうか
やっぱりそうなのね、晴れた日ばっかりずっと続くわけないもんね。その日使う
分の元気の量が一瞬にして半分ほど目減りする。空に青がないと、自分のほうが
ブルーになるのである。
雨でもひとつだけいい点があって、いつも行列するような店が空いていること
だ。
そういえば、晴れた休みの日と、雨の日では高速道路の混みようがまったく
違う。週末の土曜日が雨だったりすると、かなり空いているのだ。どうやら、
晴れた日のほうが人間は活発になるらしいとわかる。雨の日はなりをひそめ、
晴れるとぞろぞろと蠢きだす・・・人間はどこか虫にも似ているかもしれない。
朝、鳥の鳴き声で眼が覚める。
カーテンを引くと、山の稜線が青空と白雲を大きく切り取っている。思い切り
窓をあける。生まれたばかりの冷たく澄みきった空気が、わたしの胸と、部屋に
たちまち流れ込む。旅先の辺鄙な温泉宿でよくある朝のシーンである。
(ウーン。さあて、ひと風呂いくかな)
浴衣の乱れを直し、部屋の隅のタオル掛けからすっかり乾いたタオルを取り、
部屋の鍵煙草ライター小銭いれ、そして髭剃りを掴んで温泉に向かう。
旅先での朝の入浴は、一回だけふだんの入浴とはすこし違う。温泉の堪能惑溺
が目的の入浴ではなく、髭剃りの行事がとりあえずの命題となる。
だから、たっぷり掛け湯をして熱めの温泉にゆっくり身体を沈める、その深さが
違ってくる。いつもは肩ぐらいだが、アゴの先まで、どっぷり浸かるのである。
他にひとの目がなければ、下唇すれすれぐらいまで沈める。ベトナム戦争で、
捕まって川の中の木を組んだ水牢に沈められ、水面から顔だけ出して空気を貪る
日系アメリカ兵、みたいな感じですこぶる格好が悪い。あまりにも混んでいるとき
は、朝食後に出なおす。
髭が濃いので、湯の熱さで髭を充分にしんなりさせないと痛いだけではなく、
宿の安い髭剃りでは血だらけになってしまうのだ。わたしにすれば、朝の荒行
なのだ。タオルで蒸せばよろしい、という意見もあろうが、数々の失敗を経て、
この旅先での習慣にあいなったのである。
内湯で荒行をすませて、露天風呂で気分一新させる。
湯のなかから青空をみあげていると、頭のなかの、今日の白いスケジュール表
がつぎつぎと埋まっていく。あそこに寄ってみるか、昼は行ってみたかったあそこ
で食べてみよう。多少の無理も、なにか可能性があるような気がしてくる。
ところが雨だったりすると、まず面倒くささがさきにたつ。明日は仕事だし
まっすぐ帰るかな、昼もサービスエリアの軽食でいいか。とこうなってしまう。
旅先でも、雨は気鬱である。日常よりはいくぶん軽めではあるが・・・。
やはり、晴れのほうが断然いい。
心のなかに空はあるのだろう。すくなくてもわたしの心には。
心のなかにも空があるのだろうか。
その日のベースになる気分が、意外と天気に左右される。
朝起きて青空をみあげると、たったそれだけのことなのに気分がいい。よーし
今日も一日やるぞ。そんな活力がチョッピリ生まれる。
反対に、雨の日はそれだけでたちまち気鬱になってしまう。あーあ、そうか
やっぱりそうなのね、晴れた日ばっかりずっと続くわけないもんね。その日使う
分の元気の量が一瞬にして半分ほど目減りする。空に青がないと、自分のほうが
ブルーになるのである。
雨でもひとつだけいい点があって、いつも行列するような店が空いていること
だ。
そういえば、晴れた休みの日と、雨の日では高速道路の混みようがまったく
違う。週末の土曜日が雨だったりすると、かなり空いているのだ。どうやら、
晴れた日のほうが人間は活発になるらしいとわかる。雨の日はなりをひそめ、
晴れるとぞろぞろと蠢きだす・・・人間はどこか虫にも似ているかもしれない。
朝、鳥の鳴き声で眼が覚める。
カーテンを引くと、山の稜線が青空と白雲を大きく切り取っている。思い切り
窓をあける。生まれたばかりの冷たく澄みきった空気が、わたしの胸と、部屋に
たちまち流れ込む。旅先の辺鄙な温泉宿でよくある朝のシーンである。
(ウーン。さあて、ひと風呂いくかな)
浴衣の乱れを直し、部屋の隅のタオル掛けからすっかり乾いたタオルを取り、
部屋の鍵煙草ライター小銭いれ、そして髭剃りを掴んで温泉に向かう。
旅先での朝の入浴は、一回だけふだんの入浴とはすこし違う。温泉の堪能惑溺
が目的の入浴ではなく、髭剃りの行事がとりあえずの命題となる。
だから、たっぷり掛け湯をして熱めの温泉にゆっくり身体を沈める、その深さが
違ってくる。いつもは肩ぐらいだが、アゴの先まで、どっぷり浸かるのである。
他にひとの目がなければ、下唇すれすれぐらいまで沈める。ベトナム戦争で、
捕まって川の中の木を組んだ水牢に沈められ、水面から顔だけ出して空気を貪る
日系アメリカ兵、みたいな感じですこぶる格好が悪い。あまりにも混んでいるとき
は、朝食後に出なおす。
髭が濃いので、湯の熱さで髭を充分にしんなりさせないと痛いだけではなく、
宿の安い髭剃りでは血だらけになってしまうのだ。わたしにすれば、朝の荒行
なのだ。タオルで蒸せばよろしい、という意見もあろうが、数々の失敗を経て、
この旅先での習慣にあいなったのである。
内湯で荒行をすませて、露天風呂で気分一新させる。
湯のなかから青空をみあげていると、頭のなかの、今日の白いスケジュール表
がつぎつぎと埋まっていく。あそこに寄ってみるか、昼は行ってみたかったあそこ
で食べてみよう。多少の無理も、なにか可能性があるような気がしてくる。
ところが雨だったりすると、まず面倒くささがさきにたつ。明日は仕事だし
まっすぐ帰るかな、昼もサービスエリアの軽食でいいか。とこうなってしまう。
旅先でも、雨は気鬱である。日常よりはいくぶん軽めではあるが・・・。
やはり、晴れのほうが断然いい。
心のなかに空はあるのだろう。すくなくてもわたしの心には。
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