<読んだ本 2013年9月>
ここのところ涼しくなってすっかり過ごしやすく、そして眠りやすくなってもきた。そうなると、温かい食べ物も恋しくなってくる。
ある日、蕎麦がなんとなく食べたくなって蕎麦の名店がいくつかある神田に行った。
本当は信州蕎麦が食べたくなったのだが、それは贅沢というものと都内名店の蕎麦で我慢することにしたのだ。
「まつや」の前に行列はなかったが、この店は安心ならない。
入ると、やはりほぼ満席である。ひとりなので、すぐに席に案内された。蕎麦前(酒)を呑んでいるひとが嬉しいことに半分近い。
「お酒を一本、それと、かけそばを」
今日は、もりを頼まず温かいそばを食べることにした。
かけそばを食べ終えると、久しぶりに「竹むら」へ寄った。
いつも「いそべ焼き」を食べるのだが、ふと思いついて「ところ天」を選ぶ。亀戸天神近くの船橋屋と比べてみようと思ったのである。
ここのお茶は香り高く、とてもいい味なのだ。
ところ天はひと口目で、軽く噎せてしまう。酢がわたしにはすこし強い。細くしっかりしたところ天だが、強めの酢が邪魔をする。この店の真骨頂は甘味なのだろう。ところてんは値段といい、悔しいがこいつはどうも船橋屋に軍配があがるなと思った。
ここまで禁煙の店が二軒続いたのでガード下の喫茶店に入り、一服することにした。
古い店構えなのだがいつも店の前を清掃していて感心させられる。店内もむろん清潔そのものだ。
トイレを借りて席に戻ると、珈琲が冷めないように蓋をしておいてくれたのには驚く。細やかな配慮がとにかく好ましい。
さて、今月に読んだ本ですが、津軽旅ありぶ厚い本ありで9月はたったの5冊、累計で60冊でした。
1.○あなたへ 森沢明夫 幻冬舎文庫
2.○交趾 古着屋総兵衛影始末十 佐伯泰英 新潮文庫
3. ○帰還 古着屋総兵衛影始末十一 佐伯泰英 新潮文庫
4. ◎64 ロクヨン 横山秀夫 文芸春秋
5. ○冷血 (上) 高村薫 毎日新聞社
「あなたへ」の映画をテレビ地上波発放送とかで観た。
故郷の海に散骨してほしい・・・妻の遺言で夫が富山から長崎の平戸まで車で向かう。途中、いろいろな人を関わり合う。主演は高倉健だ。
経由地はわたしが行ったことがあるところばかりで、わたしの好きな山頭火の俳句も随所に出て来た。
『「妻は、優しい人でした。読書家で物知りだったので、私は色々なことを教えて
もらいました」
「ほう」
杉野は黙って次の言葉を待っていた。私はリビングの椅子に腰掛けて文庫本を
読んでいるときの洋子を思い出しながら、ゆっくりと懐かしい言葉を口にした。
「他人と過去は変えられないけれど、自分と未来は変えられる」
「・・・・・・」
「妻の座右の銘です」
私は鼻を掻きながら照れ笑いをしていたのだが、杉野は珍しく口を閉じたまま、
何か考え込むような顔をしていた。
「それと、もうひとつ。人生に賞味期限はない――なんて、よく言ってました」』
賞味期限の話はちょっと・・・だが、「他人と過去は変えられないけれど、自分と未来は変えられる」のほうは、確かにそうだなと頷ける。
「古着屋総兵衛影始末」のシリーズ十一冊をとにもかくにも読了した。
江戸富沢町で古着問屋を営む「大黒屋」の主人「総兵衛」こと、徳川家危急の折りに働く隠れ旗本「鳶沢勝頼」。鳶沢一族を率いて時の権力者柳沢吉保と暗闘が主軸の、荒唐無稽な物語である。
「64 ロクヨン」・・・奇妙な題名だが、D市で昭和六十四年に起きた未解決の少女誘拐殺人事件の符丁である。
さすが横山秀夫、ぶ厚い本だが、ぐいぐいと読ませてくれる本格派の警察小説だ。予約してからずいぶん待たされたが、待った甲斐があった。面白かった。
「冷血」は二段組みの上下二巻だが、上巻だけでも息切れがしてしまった。
海外ミステリーのように下巻で、俄然面白くなればいいのだが・・・不安がちょっとある。
→「読んだ本 2013年8月」の記事はこちら
→「亀戸天満宮」の記事はこちら
ここのところ涼しくなってすっかり過ごしやすく、そして眠りやすくなってもきた。そうなると、温かい食べ物も恋しくなってくる。
ある日、蕎麦がなんとなく食べたくなって蕎麦の名店がいくつかある神田に行った。
本当は信州蕎麦が食べたくなったのだが、それは贅沢というものと都内名店の蕎麦で我慢することにしたのだ。
「まつや」の前に行列はなかったが、この店は安心ならない。
入ると、やはりほぼ満席である。ひとりなので、すぐに席に案内された。蕎麦前(酒)を呑んでいるひとが嬉しいことに半分近い。
「お酒を一本、それと、かけそばを」
今日は、もりを頼まず温かいそばを食べることにした。
かけそばを食べ終えると、久しぶりに「竹むら」へ寄った。
いつも「いそべ焼き」を食べるのだが、ふと思いついて「ところ天」を選ぶ。亀戸天神近くの船橋屋と比べてみようと思ったのである。
ここのお茶は香り高く、とてもいい味なのだ。
ところ天はひと口目で、軽く噎せてしまう。酢がわたしにはすこし強い。細くしっかりしたところ天だが、強めの酢が邪魔をする。この店の真骨頂は甘味なのだろう。ところてんは値段といい、悔しいがこいつはどうも船橋屋に軍配があがるなと思った。
ここまで禁煙の店が二軒続いたのでガード下の喫茶店に入り、一服することにした。
古い店構えなのだがいつも店の前を清掃していて感心させられる。店内もむろん清潔そのものだ。
トイレを借りて席に戻ると、珈琲が冷めないように蓋をしておいてくれたのには驚く。細やかな配慮がとにかく好ましい。
さて、今月に読んだ本ですが、津軽旅ありぶ厚い本ありで9月はたったの5冊、累計で60冊でした。
1.○あなたへ 森沢明夫 幻冬舎文庫
2.○交趾 古着屋総兵衛影始末十 佐伯泰英 新潮文庫
3. ○帰還 古着屋総兵衛影始末十一 佐伯泰英 新潮文庫
4. ◎64 ロクヨン 横山秀夫 文芸春秋
5. ○冷血 (上) 高村薫 毎日新聞社
「あなたへ」の映画をテレビ地上波発放送とかで観た。
故郷の海に散骨してほしい・・・妻の遺言で夫が富山から長崎の平戸まで車で向かう。途中、いろいろな人を関わり合う。主演は高倉健だ。
経由地はわたしが行ったことがあるところばかりで、わたしの好きな山頭火の俳句も随所に出て来た。
『「妻は、優しい人でした。読書家で物知りだったので、私は色々なことを教えて
もらいました」
「ほう」
杉野は黙って次の言葉を待っていた。私はリビングの椅子に腰掛けて文庫本を
読んでいるときの洋子を思い出しながら、ゆっくりと懐かしい言葉を口にした。
「他人と過去は変えられないけれど、自分と未来は変えられる」
「・・・・・・」
「妻の座右の銘です」
私は鼻を掻きながら照れ笑いをしていたのだが、杉野は珍しく口を閉じたまま、
何か考え込むような顔をしていた。
「それと、もうひとつ。人生に賞味期限はない――なんて、よく言ってました」』
賞味期限の話はちょっと・・・だが、「他人と過去は変えられないけれど、自分と未来は変えられる」のほうは、確かにそうだなと頷ける。
「古着屋総兵衛影始末」のシリーズ十一冊をとにもかくにも読了した。
江戸富沢町で古着問屋を営む「大黒屋」の主人「総兵衛」こと、徳川家危急の折りに働く隠れ旗本「鳶沢勝頼」。鳶沢一族を率いて時の権力者柳沢吉保と暗闘が主軸の、荒唐無稽な物語である。
「64 ロクヨン」・・・奇妙な題名だが、D市で昭和六十四年に起きた未解決の少女誘拐殺人事件の符丁である。
さすが横山秀夫、ぶ厚い本だが、ぐいぐいと読ませてくれる本格派の警察小説だ。予約してからずいぶん待たされたが、待った甲斐があった。面白かった。
「冷血」は二段組みの上下二巻だが、上巻だけでも息切れがしてしまった。
海外ミステリーのように下巻で、俄然面白くなればいいのだが・・・不安がちょっとある。
→「読んだ本 2013年8月」の記事はこちら
→「亀戸天満宮」の記事はこちら
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