温泉クンの旅日記

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伊香保温泉 群馬・伊香保

2007-02-14 | 温泉エッセイ
  < 温泉饅頭 >

 伊香保といえば一番に思い出すのは、まず階段街であろう。
 なんでも山形の山寺と四国の金毘羅とで三大階段というらしい。



 長い階段は途中にいくつか踊り場のように平らな部分がありひと息つけるし、
両側に店もあるので、運動不足でハアハア言ってきついようなら休みながら登って
いける。
 踊り場の広い部分では車が通れるほどの脇道につながっている。途中の一番広い
ところで、階段の脇を、湧出したばかりの温泉が暗渠を通して流れ落ちているのが
覗ける。1900年前に開湯されたとの歴史を持つ源泉は、流れ落ちながら弁の角度な
どの調整でそれぞれの分量を両脇の大小の旅館に配分されているのだ。
  
 温泉神社にあがる直前の、最後の踊り場を右に曲がったとっつきの小さな店が
湯の花饅頭の「勝月堂」だ。



 小さい店とあなどるなかれ。ここで売っている湯の花饅頭とは日本初の元祖温泉
饅頭である。わたしは伊香保に行くたびに買って帰る。土産としてはかなり喜ばれ
るが、見栄を張らずに少なめな個数の箱を買ったほうがよろしい。なにしろ「購入
日を含め三日以内にお召しあがりください」とキッパリ言い切る嬉しいシロモノ
なのだ。食べ切れずに残したらもったいない。
 ここで在庫を確認し(すぐ売り切れてしまう)取りおいてもらうように頼むと、
温泉神社の山を巻くようにして雪道を転ばぬように一歩一歩ゆっくりと歩く。

 飲泉所を通り過ぎ、露天風呂へ。この雪で、夕刻のこの時間帯なら空いている
だろう。
 受付のへんで耳をすますと、いかにも空いているような気配である。よしよし。
 料金を払い、板囲いのなかにはいると目の前がいきなり露天風呂になっており、
先客は二人であった。脇にコインロッカーのようなところがありそこで着替えるの
だが、すのこの上の敷物が濡れそぼってしかも冷え切っており、トタン屋根のネコ
状態。夕暮れの寒気とあいまって往生してしまう。


  (熱めは先客がいたので遠慮、ぬるめのほうの半分の部分)

 庭園の小池のような露天風呂は仕切りがあり、ぬるめと熱めにわかれていた。
温泉は湯の花饅頭の皮の色を薄くしたようで、いかにもうまそう(?)な色だ。
 ぬるめのへりにしゃがみこみ、掛け湯をたっぷりして身体を沈めようとしたが
温度の低さにすぐさま断念、そのままジャブジャブ歩いて仕切りを跨いで熱めの
ほうで落ち着いた。
 熱めのほうの温泉、といっても外気が冷え込んでいるため温度が下がっており、
体感温度は40度くらいか。

「・・・うーむぅ・・・・(ふふふ)」
 それでも、じわじわっと満足感が湧き上がってきてブキミな笑みが浮かんでくる
のを禁じえないのだ
 なんとなんと恥ずかしながら、草津の西の河原露天風呂と同じく、伊香保の露天
風呂のほうも初めてなのである。ここも何度来ても満員御礼のためはいりそびれて
いたのだ。これを機会に白状するが、共同浴場とか外湯のほうが好きになってきた
のは、何百湯かこなしてからのことなのだ。それまでは、どちらかというと敬遠し
ていたのである。

 長年の宿願を征服して・・・征服は変か・・・制覇も変だし・・・浴覇がヨクハ
ネーカ。などと呟きながら、勝月堂に立ち寄りお土産の湯の花饅頭を買い込む。
ヨクハしたから太っ腹についでにバラで二個ほど売ってもらう。ここの饅頭は冷え
てもうまいが、出来立ても格段なものなのだ。



(むむ、やっぱりうまいなあ・・・あっ、ついでに「石段の湯」が空いていたら、
もう少しぐらいあったまっていこうかな)

 土産とバラの饅頭を手に、そんな超脳天気ことを考えながら、夕暮れの凍りつい
た温泉情緒漂う階段街をそろそろ下っていくのであった。

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