<伊豆で九州宿(4)>
湯あがりに久しぶりの珈琲牛乳をゴクゴクと飲み、大浴場の前にあるテントが張られた喫煙スペースで煙草を吸った。
料金的にわたしはそうそう来られる宿ではないので、もう一度ゆっくり散策することにした。この宿の敷地は六千六百坪あるというが宿泊室数約八十室だから、九州の宿のように敷地一万坪に贅沢に二十室たらずとまではいかないが、里山の雰囲気はそれなりにだしている。
大室山が近くにあるのだが、わたしはこの均整のとれたなだらかな丸い丘のような山をみるといつも四国に点在する山々を故郷でもないのに思いだしてしまう。
その大室山の湧水が流れこむ池には、たくさんのアマゴが泳いでいた。
池のほとりでは鴨が人の気配を気にせずに悠々と散歩をしていた。
路の一角に宿泊客の子どもたちが、時間つぶしができるような竹馬や輪投げなどの遊具が揃っている。
連泊するようであれば陶芸も体験できるようである。
うさぎも嫌いではないので、別れを兼ねた朝の挨拶をしていくことにした。
路の途中でブルーベリーが生っているのをみつけたが、まだ食べるには若すぎるようだ。
朝食は昨日の夕食と同じ食事処であった。
和食か洋食かを選択できるので、洋食にしてもらった。
目玉焼きは期待通りの味で満足したが、あとがいけない。彩りだけは豪華で騙された。お代わり自由な自家製(みたいな)パンもどれもダメで、素直に和食にすればよかったと軽く後悔する。
食事処のすぐ外の樹にリスがいて、周りの客を和ませてくれた。
食事の途中で煙草が吸いたくなって、入り口を出たところの喫煙コーナーへ行った。
先客と並んで座り煙草を吸っていると、小学校前くらいの小さな女の子が出てきていきなり口を掌でぎゅっと押えて、わたしともうひとりの喫煙者を横目で睨みつけながら外に設置してあるトイレへ駆け込んだ。よほどの煙草嫌いらしく、通りすぎるときに息も止めていたようだ。
トイレから出てきて、また口を掌でしっかり覆って、小走りに食事処の入り口の前に立った。玄関マットが体重を感知して自動ドアがあく仕組みだが、体重が軽すぎて開かない。飛んでも跳ねても開かない。
微苦笑したわたしは煙草を持ったまま静かに席を立ち、入り口のマットの少女のすぐ後ろあたりに足を載せてドアを開けてあげた。
女の子はドアのなかに入ると、くるりと振り返り、
「どうもありがとうございました」
と、丁寧にぴょこんと頭を下げた。意外に礼儀正しいいい子である。きっと育ちがいいのかもしれない。
体調が九州までの長旅に耐えられそうもなかったり、まとまった休みが自由にとれなかったり、九州までの費用は捻出できなかったり、とさまざまな事情で九州に行きたいのに行けないひとには、ここで九州の宿の雰囲気をかなり堪能することができる。
→「伊豆で九州宿(1)」の記事はこちら
→「伊豆で九州宿(2)」の記事はこちら
→「伊豆で九州宿(3)」の記事はこちら
湯あがりに久しぶりの珈琲牛乳をゴクゴクと飲み、大浴場の前にあるテントが張られた喫煙スペースで煙草を吸った。
料金的にわたしはそうそう来られる宿ではないので、もう一度ゆっくり散策することにした。この宿の敷地は六千六百坪あるというが宿泊室数約八十室だから、九州の宿のように敷地一万坪に贅沢に二十室たらずとまではいかないが、里山の雰囲気はそれなりにだしている。
大室山が近くにあるのだが、わたしはこの均整のとれたなだらかな丸い丘のような山をみるといつも四国に点在する山々を故郷でもないのに思いだしてしまう。
その大室山の湧水が流れこむ池には、たくさんのアマゴが泳いでいた。
池のほとりでは鴨が人の気配を気にせずに悠々と散歩をしていた。
路の一角に宿泊客の子どもたちが、時間つぶしができるような竹馬や輪投げなどの遊具が揃っている。
連泊するようであれば陶芸も体験できるようである。
うさぎも嫌いではないので、別れを兼ねた朝の挨拶をしていくことにした。
路の途中でブルーベリーが生っているのをみつけたが、まだ食べるには若すぎるようだ。
朝食は昨日の夕食と同じ食事処であった。
和食か洋食かを選択できるので、洋食にしてもらった。
目玉焼きは期待通りの味で満足したが、あとがいけない。彩りだけは豪華で騙された。お代わり自由な自家製(みたいな)パンもどれもダメで、素直に和食にすればよかったと軽く後悔する。
食事処のすぐ外の樹にリスがいて、周りの客を和ませてくれた。
食事の途中で煙草が吸いたくなって、入り口を出たところの喫煙コーナーへ行った。
先客と並んで座り煙草を吸っていると、小学校前くらいの小さな女の子が出てきていきなり口を掌でぎゅっと押えて、わたしともうひとりの喫煙者を横目で睨みつけながら外に設置してあるトイレへ駆け込んだ。よほどの煙草嫌いらしく、通りすぎるときに息も止めていたようだ。
トイレから出てきて、また口を掌でしっかり覆って、小走りに食事処の入り口の前に立った。玄関マットが体重を感知して自動ドアがあく仕組みだが、体重が軽すぎて開かない。飛んでも跳ねても開かない。
微苦笑したわたしは煙草を持ったまま静かに席を立ち、入り口のマットの少女のすぐ後ろあたりに足を載せてドアを開けてあげた。
女の子はドアのなかに入ると、くるりと振り返り、
「どうもありがとうございました」
と、丁寧にぴょこんと頭を下げた。意外に礼儀正しいいい子である。きっと育ちがいいのかもしれない。
体調が九州までの長旅に耐えられそうもなかったり、まとまった休みが自由にとれなかったり、九州までの費用は捻出できなかったり、とさまざまな事情で九州に行きたいのに行けないひとには、ここで九州の宿の雰囲気をかなり堪能することができる。
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