<河童淵>
昔あったずもな。
土淵の新屋ず家の裏にとっても深い淵があったど。
ある夏の暑い日、その家の若い者が、馬の足を冷やしてやるべと、淵へ馬を連れでって、そのまんま遊びさ行ってしまんたんだど。
そしたら河童が出て来て、その馬を淵さ引き込むべとしたずもな。してば(すると)馬たまげて、河童引きずったまんま、馬屋さ飛び込んだんだど。
今度は河童の方がたまげて、馬の舟(飼葉桶)をがっぽりひっくり返して、その中さ隠れたずもな。家の人達、
「なにして馬ばり(だけ)帰ってきたべ」
と、不思議がって馬屋をのぞいて見たずもな。そしたら、舟がひっくり返ってべっこな(小さな)手が見えたど。開けて見たっけ、河童だったずもな。
集まって来た村の人達は、
「この河童、いつもいたずらして、ろくでねえから殺せ殺せ」
って言ったけど、でも、よく見たっけ、河童、手を合わせていたったど。ここの家の主人は、むじょやな(かわいそうに)と思って
「これからは、ここの淵で絶対悪いことすんなよ」
って許すことにしたんだと。河童も、言うことを聞いて、そこからは遠く離れた奥沢の淵さ引っ越したんだとさ。
どんどはれ。
→「語り部の聞ける宿」の記事はこちら
→「オシラサマ」の記事はこちら
昔あったずもな。
土淵の新屋ず家の裏にとっても深い淵があったど。
ある夏の暑い日、その家の若い者が、馬の足を冷やしてやるべと、淵へ馬を連れでって、そのまんま遊びさ行ってしまんたんだど。
そしたら河童が出て来て、その馬を淵さ引き込むべとしたずもな。してば(すると)馬たまげて、河童引きずったまんま、馬屋さ飛び込んだんだど。
今度は河童の方がたまげて、馬の舟(飼葉桶)をがっぽりひっくり返して、その中さ隠れたずもな。家の人達、
「なにして馬ばり(だけ)帰ってきたべ」
と、不思議がって馬屋をのぞいて見たずもな。そしたら、舟がひっくり返ってべっこな(小さな)手が見えたど。開けて見たっけ、河童だったずもな。
集まって来た村の人達は、
「この河童、いつもいたずらして、ろくでねえから殺せ殺せ」
って言ったけど、でも、よく見たっけ、河童、手を合わせていたったど。ここの家の主人は、むじょやな(かわいそうに)と思って
「これからは、ここの淵で絶対悪いことすんなよ」
って許すことにしたんだと。河童も、言うことを聞いて、そこからは遠く離れた奥沢の淵さ引っ越したんだとさ。
どんどはれ。
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