<続・温海温泉(1)>
あつみ温泉の駅である。
「温海」という字が難読なことから、1977年に当時の国鉄「温海駅」が「あつみ温泉駅」に改称されてしまい、それ以降はまったく味も素っけもない平仮名の表記「あつみ」が多くなってしまった。
これってとんでもないことだと思う。読みにくい漢字とはいえ、歴史があるのだから「温泉津(ゆのつ)温泉」みたいにとにかく元々の漢字の地名を大事にしてほしいものだ。
温海(あつみ)温泉だが、温海川の川底から湧出した温泉が河口に流れ日本海を温かくしていたことが、その温泉名の由来だ。
温泉街を貫くように流れる温海川沿いを中心に大型旅館、県道沿いには木造三階建ての歴史ある老舗旅館が並ぶ。
(ここか・・・なんともシブーい宿じゃないか・・・)
たしか銀山温泉も同じ木造の三階か四階建てだったな。
いったいに山形には銀山、白布、肘折など由緒のありそうな古い木造旅館が多い。
この宿も創業三百八十年という気が遠くなるほどの老舗旅館なのだ。
ぴかぴかに磨きこまれた階段をあがって、案内されたのは三階の部屋である。木造旅館だと火事が気になりできれば飛び降りれる二階の客室がありがたいのだが、これはまあしかたがない。
建物の真ん中に広めに空間が取られており、あとでわかったが下に見えるのは浴場の明かりとりであった。
部屋の間口は襖が四枚、つまり二間。開けると、次の間つきの部屋で広さは充分すぎるほどだ。
隣の部屋との仕切りも襖だが、民宿みたいにすぐ隣室なのだろうか。まだ隣の部屋の前にスリッパがなかったのを思い出し、襖を恐る恐る開けてみる。よかった、布団がはいった押入れでひとまず安心する。
冷蔵庫もあれば最新型のテレビ、熱湯が沸かせるポットもある。
さて、さっそく浴衣に着替える。
(そういえば、襖ということは鍵がない、ということか)
入り口の襖を点検する。両サイドの二枚が固定されて、中の二枚で開け閉めするようになっている。外からの鍵はないが、内側からはそれぞれ簡単な仕掛けで固定できる。
財布だけを金庫にいれて、一階の風呂に向かった。
簡素な脱衣室である。
四人もはいればちょっと窮屈になりそうだが、ひとりなら充分な広さの浴槽である。
足先のほうからゆっくり掛け湯をして熱さを確認してから、徐々に胸あたりまで湯の温度に慣らす。
水でうめるほどでもなさそうだ。
ゆるゆるとスローモーションで熱い湯に身体を沈めていく。湯が贅沢に浴槽の縁からあふれ出す。
噛みつくほどの熱さではないので四十三、四度くらいだろう。よく見ると、白い細かな湯の花が湯の中で舞っている。ぬるい湯より熱い湯のほうがいい。ぬるい湯だと、どこで出るのかタイミングがジツに取りづらい。そこへいくと、熱ければカップ麺の表示みたいに「熱湯三分」とか「熱湯四分」というふうになんとなく「けじめ」がつく。
パンチのある、活きのいい湯である。一日の疲れがみるみるほどけていく。
火照った身体で部屋に戻って水割りを軽く呑む。
軽い眠気を催してきたので、念のため押入れから毛布を取り出して横になりひと眠りすることにした。
― 続く ―
→「きらきらうえつ」の記事はこちら
→「銀山温泉をぶらり」の記事はこちら
→「肘折温泉(1)」の記事はこちら
→「白布温泉」の記事はこちら
あつみ温泉の駅である。
「温海」という字が難読なことから、1977年に当時の国鉄「温海駅」が「あつみ温泉駅」に改称されてしまい、それ以降はまったく味も素っけもない平仮名の表記「あつみ」が多くなってしまった。
これってとんでもないことだと思う。読みにくい漢字とはいえ、歴史があるのだから「温泉津(ゆのつ)温泉」みたいにとにかく元々の漢字の地名を大事にしてほしいものだ。
温海(あつみ)温泉だが、温海川の川底から湧出した温泉が河口に流れ日本海を温かくしていたことが、その温泉名の由来だ。
温泉街を貫くように流れる温海川沿いを中心に大型旅館、県道沿いには木造三階建ての歴史ある老舗旅館が並ぶ。
(ここか・・・なんともシブーい宿じゃないか・・・)
たしか銀山温泉も同じ木造の三階か四階建てだったな。
いったいに山形には銀山、白布、肘折など由緒のありそうな古い木造旅館が多い。
この宿も創業三百八十年という気が遠くなるほどの老舗旅館なのだ。
ぴかぴかに磨きこまれた階段をあがって、案内されたのは三階の部屋である。木造旅館だと火事が気になりできれば飛び降りれる二階の客室がありがたいのだが、これはまあしかたがない。
建物の真ん中に広めに空間が取られており、あとでわかったが下に見えるのは浴場の明かりとりであった。
部屋の間口は襖が四枚、つまり二間。開けると、次の間つきの部屋で広さは充分すぎるほどだ。
隣の部屋との仕切りも襖だが、民宿みたいにすぐ隣室なのだろうか。まだ隣の部屋の前にスリッパがなかったのを思い出し、襖を恐る恐る開けてみる。よかった、布団がはいった押入れでひとまず安心する。
冷蔵庫もあれば最新型のテレビ、熱湯が沸かせるポットもある。
さて、さっそく浴衣に着替える。
(そういえば、襖ということは鍵がない、ということか)
入り口の襖を点検する。両サイドの二枚が固定されて、中の二枚で開け閉めするようになっている。外からの鍵はないが、内側からはそれぞれ簡単な仕掛けで固定できる。
財布だけを金庫にいれて、一階の風呂に向かった。
簡素な脱衣室である。
四人もはいればちょっと窮屈になりそうだが、ひとりなら充分な広さの浴槽である。
足先のほうからゆっくり掛け湯をして熱さを確認してから、徐々に胸あたりまで湯の温度に慣らす。
水でうめるほどでもなさそうだ。
ゆるゆるとスローモーションで熱い湯に身体を沈めていく。湯が贅沢に浴槽の縁からあふれ出す。
噛みつくほどの熱さではないので四十三、四度くらいだろう。よく見ると、白い細かな湯の花が湯の中で舞っている。ぬるい湯より熱い湯のほうがいい。ぬるい湯だと、どこで出るのかタイミングがジツに取りづらい。そこへいくと、熱ければカップ麺の表示みたいに「熱湯三分」とか「熱湯四分」というふうになんとなく「けじめ」がつく。
パンチのある、活きのいい湯である。一日の疲れがみるみるほどけていく。
火照った身体で部屋に戻って水割りを軽く呑む。
軽い眠気を催してきたので、念のため押入れから毛布を取り出して横になりひと眠りすることにした。
― 続く ―
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