温泉クンの旅日記

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川湯温泉(2)北海道・弟子屈

2020-01-05 | 温泉エッセイ
  <川湯温泉(2) 北海道・弟子屈>

 いい温泉での湯浴みは熟睡を約束してくれる。ましてやそこに適量の酒が加わればもう鬼に金棒駆け馬に鞭、<爆睡確約>とすらいっていい。
 わたしも昼間の過密日程もあってだろう、川湯の夜は早々と眠り込んでしまったのである。途中、浴場の男女が入れ替えられた深夜に起きだして入浴はしたが。

 

 前回は温泉だけに終始してしまったので、夕食を書いておく。

 

 並ぶ料理をみて、えらく質素やなあ・・・と思うかもしれないが、なにせ二食付き宿泊で八千円ちょっきりなのである。節約旅のわたしにはまったく文句はない。
 首都圏の安酒場で出すものと違い、さすがに地元北海道のホッケは脂ものっているし旨みも段違いだ。酒の肴にもご飯のおかずにも存分に活躍してくれた。たら鍋もいい味だった。

 

 闇を切り分けるように朝を知らせる明るみが始まったところで、深い眠りから目覚める。
「よっしゃ!」
 軽く気合いの声をあげて、未練など微塵もなくすぱっと起きあがるとタオルと部屋の鍵を引っつかみ大浴場に向かう。
 浴場のなかには生まれたての清々しい朝の光が差し込み、浴槽からは豊富な湯量を誇る硫黄が香る温泉が溢れている。

 

 たっぷりの掛け湯をして、「うぅ・・・むぅ・・・」と喜悦の唸り声をあげながら身をゆるりと沈めていく。
 朝起きてすぐに温泉で湯浴み・・・朝湯は贅沢このうえない、とわたしはいつも思う。

 

「♪三千世界のォ~ 鴉を殺しィ~、あたしゃ(主と)朝湯(朝寝)がァ~ してみたい~」
と、下手な都々逸でも唄いたくなる気分である。温泉好きならきっとこの心もち、わかるだろう。

 

 充分温まったところで、鹿とか狐がひょっこり顔を出しそうな森に面した露天の岩風呂に向かう。

 

 川湯の湯は、最後に噴火して今なお続く硫黄山の噴気(硫気)活動により、地中で熱せられた地下水が水蒸気となって上昇して噴気孔近くで分離した温泉が湯の川沿いの浅い地層から自然湧出している。
 温泉名だが、アイヌ語のセセキぺツ(セクぺツ=熱い川)から「湯の川」と呼ばれていたが、すでに知られていた函館の「湯の川温泉」と区別するため、字も順序を変えて「川湯温泉」と改められたのだそうだ。
 この温泉を、屈斜路湖畔に住んでいたアイヌたちは怪我や病にクスリ(薬)として使用していたそうで、この付近の地名にはクスリという名称が多く、釧路という地名も同じ語源といわれている。

 

 今日は頭の中にある予定表がびっしりである。行けないところもきっと出てくるだろうが、まったく予定してなかったが空が晴れだしたなら、遠回りでたっぷり時間も掛かるが昨日訪ねた摩周湖にもぜひもう一度行きたい。
 そんなせわしい気分のせいで、珍しいことだが部屋に戻るとすぐに着替えて散歩することにした。

 
 
 昨日は気がつかなかったが、ホテル入口に木彫りの大きな<ふくろう>が置いてあった。そういえば露天の湯口も<ふくろう>だったような覚えがある。

 

 少し歩くと、ひと気のない朝の川湯温泉街のメインストリートに出た。

 

 川湯温泉も昭和28年(1953年)、屈斜路湖周辺が松竹映画「君の名は」でロケ地になり観光客が激増して発展したそうである。「君の名は。」といっても、2016年公開の長編アニメ映画ではない。

 朝食の七時まで待てなかった。どうせビジネスホテルなみのバイキングだろうし、最初に見つけたコンビニで肉まんでも食べよう。

 

「時間が早くて、朝食はまだ無理ですよね」
 フロントで精算しながら念のため訊いてみると、
「ちょっと食堂へ行って訊いてきましょうか」
 と、人の良さそうな俄かフロントの警備員がいう。大事な持ち場を離れさせてもまずい。やっぱり急ぐのでいいですと断って出発した。

 広い屈斜路湖を左手にみながら網走に向かって峠道をのぼっていく。

 

(川湯温泉、なかなか良かったな・・・)
「ダケ温泉に行ったよ」といわれれば、福島の岳温泉か、青森の嶽温泉かと問うように、この川湯温泉を堪能したわたしもきっと「カワユ温泉に行ってきた」といわれたら、和歌山かそれとも北海道かと訊いてしまうだろう。



   →「川湯温泉(1) 北海道・弟子屈」の記事はこちら


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