<岳温泉、パンク騒動顛末記(2)>
湯あがりにフロントで訊くと、コンビニ横のガソリンスタンドは今日が休みで明日は朝八時から営業するはず、とのことであった。
「はず」がすこし引っかかるが、多少気分が落ち着いた。
この宿は到着が遅くなるので朝食付きの宿泊にしたのだが、夜食のラーメンも付くプランにした。爆発的に筋肉を酷使したから少しだけでも食べておいたほうがよさそうだ。パンク騒動のため食欲はあまりなかったのに、身体は正直なもので残さず食べてしまった。
翌朝に起きて窓をあけると、昨日は暗くなってからのチェックインだったのでわからなかったが眼の前に岳温泉のシンボルである鏡ヶ池が広がっている。
いまはそんな気分にはならないが、親水公園として外周の歩道とか木道で整備され散歩できる。
まずは筋肉痛が心配なので、温泉だ。
草津温泉、雲仙温泉と同じように、岳温泉の酸性泉も美肌効果と高い医療効果がある。若くないので二日後となる明日に出るであろう筋肉痛にもきっと効くはずだ。
内湯を出ると、露天でも「頼む、効いてくれよ」と念じつつ柔軟と指圧を入念に行った。
朝食をそそくさと食べると、ガソリンスタンドへ急ぐ。
昨夜とぼとぼ降りてきた「桜坂」という坂道をのぼっていく。名前からすると、春は桜の名所なのかもしれない。
桜坂をのぼりきった中腹、「岳温泉」の看板前の国道459号線の信号を右に曲がる。
コンビニの駐車場の端っこに、わたしの車をみつける。まるで、痛めた右前足を舐めるように蹲る、可哀相な猫のようだった。いや、長距離走行の大役を傷物のタイヤで見事に果たし終えてから、目的地そばの駐車場で安心するようにパンクした可愛いヤツだ。待ってろよ、もうすぐ治るからな。
ガソリンスタンドは時間前だが開店しているようだ。
事務所を覗くと、作業服のオジサンがひとり座って新聞をテーブルに広げて読んでいた。くつろいでいる様子から、どうみても客ではなさそうだ。
「おはようございます」とまず声をかけ、顔をあげたオジサンに「すみません、パンクの修理をお願いしたいのですが」。
「車はどこ?」
「隣のコンビニの駐車場の端っこにあるんですが。あそこに」
一緒に外に出て駐車場をみると、一番手前に見えている車を指差した。
オジサンがこともなげに放った次の言葉で、わたしは思わず眼を剥きのけ反ってしまった。
「あ、そう、あれか・・・。じゃあ、悪いがここに持ってきてくんないかなあ、午前中はひとりだからさオレここを動けないので」
「は?」
ここへ持ってくるって、いったいどどど、どうやって? X-Men(X-メン)みたいに念力を使えってか!?
わたしの頭の中の思考回路は空転し、次の瞬間、フリーズしてしまった。
― 続く ―
→「岳温泉、パンク騒動顛末記(1)」の記事はこちら
→「草津よいとこ(1)」の記事はこちら
→「草津よいとこ(2)」の記事はこちら
→「雲仙温泉」の記事はこちら
→「雲仙地獄」の記事はこちら
湯あがりにフロントで訊くと、コンビニ横のガソリンスタンドは今日が休みで明日は朝八時から営業するはず、とのことであった。
「はず」がすこし引っかかるが、多少気分が落ち着いた。
この宿は到着が遅くなるので朝食付きの宿泊にしたのだが、夜食のラーメンも付くプランにした。爆発的に筋肉を酷使したから少しだけでも食べておいたほうがよさそうだ。パンク騒動のため食欲はあまりなかったのに、身体は正直なもので残さず食べてしまった。
翌朝に起きて窓をあけると、昨日は暗くなってからのチェックインだったのでわからなかったが眼の前に岳温泉のシンボルである鏡ヶ池が広がっている。
いまはそんな気分にはならないが、親水公園として外周の歩道とか木道で整備され散歩できる。
まずは筋肉痛が心配なので、温泉だ。
草津温泉、雲仙温泉と同じように、岳温泉の酸性泉も美肌効果と高い医療効果がある。若くないので二日後となる明日に出るであろう筋肉痛にもきっと効くはずだ。
内湯を出ると、露天でも「頼む、効いてくれよ」と念じつつ柔軟と指圧を入念に行った。
朝食をそそくさと食べると、ガソリンスタンドへ急ぐ。
昨夜とぼとぼ降りてきた「桜坂」という坂道をのぼっていく。名前からすると、春は桜の名所なのかもしれない。
桜坂をのぼりきった中腹、「岳温泉」の看板前の国道459号線の信号を右に曲がる。
コンビニの駐車場の端っこに、わたしの車をみつける。まるで、痛めた右前足を舐めるように蹲る、可哀相な猫のようだった。いや、長距離走行の大役を傷物のタイヤで見事に果たし終えてから、目的地そばの駐車場で安心するようにパンクした可愛いヤツだ。待ってろよ、もうすぐ治るからな。
ガソリンスタンドは時間前だが開店しているようだ。
事務所を覗くと、作業服のオジサンがひとり座って新聞をテーブルに広げて読んでいた。くつろいでいる様子から、どうみても客ではなさそうだ。
「おはようございます」とまず声をかけ、顔をあげたオジサンに「すみません、パンクの修理をお願いしたいのですが」。
「車はどこ?」
「隣のコンビニの駐車場の端っこにあるんですが。あそこに」
一緒に外に出て駐車場をみると、一番手前に見えている車を指差した。
オジサンがこともなげに放った次の言葉で、わたしは思わず眼を剥きのけ反ってしまった。
「あ、そう、あれか・・・。じゃあ、悪いがここに持ってきてくんないかなあ、午前中はひとりだからさオレここを動けないので」
「は?」
ここへ持ってくるって、いったいどどど、どうやって? X-Men(X-メン)みたいに念力を使えってか!?
わたしの頭の中の思考回路は空転し、次の瞬間、フリーズしてしまった。
― 続く ―
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