温泉クンの旅日記

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天街(天文館)で呑む (2)

2011-09-21 | 食べある記
  <四季、ふたたび>

 市内の宿にチェックインすると、大浴場で汗とかぶった灰を洗い流した。洗髪もしたいが、またドカ灰の降る街中に出かけるのでやめておく。
 さっぱりしたところで、さっそく天街に向かう。
 歩いてもいいのだが灰で全身真っ白ケェになりたくない。断腸の思いで大嫌いなバスを使った。

 天文館通の両脇の路地にはアーケードの屋根がない。降り積もった灰を和服の女性が掃除をしていた。





 まだ早い時間のせいか、四季の店内にはカウンター席に女性の一人客のみである。そうだ今日が休日だからかもしれない。長旅をしていると曜日の感覚がなくなってしまう。
 カウンター内には、牛すじの鍋とおでんの鍋がならんでいる。



 お好きなところに座ってください、その言葉を真にうけて前回座ったテーブル席に座った。
 まずは、飲みもののメニューをみて、一番安い芋焼酎「黒伊佐錦」の水割りを頼む。この銘柄であれば東京なら五百円以上はとられる。それが三百円とは泣かせてくれる。
 ついで、おでんを三品と塩らっきょうを注文した。今度ここへきたら「おでん」と決めていたのだ。
 この店はお通し(突出し)がないところが、なんともいい・・・な。すぐに届いたらっきょうをつまみに水割りを呑みながら思う。
 タイミングよく、湯気の立つおでんの皿も到着する。



 旅先での店選びはまことに難しい。

 信州の外湯がいっぱいあるS温泉の裏通りにあった「K」という呑み屋、あれはひどかった。
 メニューがまったくない店だったのだ。
 焼酎の水割りを頼んだら、茄子の味噌煮みたいなお通しの小皿が届く。水割りの焼酎は安い韓国焼酎だったのを、チラッと横目で確認した。あの銘柄ならたいしてボられないだろう。

 小さなジョッキに氷が多めにはいっているから、すぐに呑みきってしまう。
 二杯目を頼むと、頼まないのに冷奴が届く。店主が愛想よく話しかけてきて、それがどうも気になる。
 三杯目には、またまた胡瓜の漬物が運ばれる・・・。一杯ごとにお通しが自動的に付くシステムになっているのだろうか。
 水割りが薄いせいか、気味が悪くなってきたせいか酔いがすこしもやってこない。これではいくら呑んでも限がなく、バケツ一杯呑んでも酔いそうにない。

 よし、あと一杯で帰ろう。お代わりを頼んだら、あろうことか得体の知れぬ肉を煮付けた皿がテーブルに置かれた。その肉だけどちょっと硬いかも、と店主が笑顔で言った。テーブルには胡瓜の漬物を半分ほど食しただけで、全部残しで宿に引きあげた。勘定が高かったのはいうまでもあるまい。

 それに引き換え、この四季はなんでも旨い。
 メニューがあって自分で選べる。そんな当たり前のことが、店選びを誤るとできないことがあるのである。
 メニューをじっくりみて、きびなごの焼いたのを発見した。それと、屋久島とろろをもらうことにした。
 屋久島とろろと塩らっきょうで、次々とお代わりの焼酎を頼む。わたしは先行逃げ切り型の「呑み方」ではなく、ゆっくり呑んでいって、ある一定量を超えるとターボがはいるほうである。



 きびなごの焼いたやつ、これには唸った。これで、いくらでも呑めそうだ。
 おでんに「シューマイ」があるのをみつけ、横浜の人間なのでついつい注文してしまう。



 四季は、厨房のなかはわからないが女性だけ五人ほどでやっているようである。接客は礼儀がほどよくあり愛想もよくて、とても感じがいい。年齢は二十代から四十代くらいまでか。カウンターには、誰かさんを目当てにした常連客がそれぞれ座るようだ。わたしも鹿児島に長期出張でもあれば、きっとカウンターに毎日座るだろうな。

「あのぉ・・・お客様、そろそろ閉店時間になりますが・・・」
 ターボ全開状態にいよいよはいりそうになったときに言われてしまう。休日なので営業時間が一時間短いそうだ。明るい内からはいったのだが、いつのまにかもう九時近くになっている。
 勘定は驚くほど安かった。うぅむ、ちょっとだけ呑み足らない。





 四季を出て、灰が積もった路地をふらふらと彷徨っていたら、お婆さんがひとりでやっている店があり、ついつい入って、またも焼酎の水割りを注文する。
 お代わりを頼むついでに、なにも食べないのもなんなのでラーメンも注文する。



 四季のおかげで、なんともひさしぶりの鯨飲馬食(鯨飲羊食くらいか?)であった。
 宿に帰って、仕上げにとさらに水割りを二杯ほど呑んだところあたりでぷっつりと記憶が途切れた。


  →「天街(天文館)で呑む(1)」の記事はこちら
  →「天文館(1)」の記事はこちら
  →「天文館(2)」の記事はこちら


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