夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

忘れ去られた画家 青緑山水図 十市石谷筆

2013-08-27 05:04:22 | 掛け軸
昨日は病み上がりからの初出勤。やはり少し疲れましたが。思いのほか大丈夫そうす。心配そうに訪ねてきてくれた同僚の「大丈夫?」という問いにも「なんとか・・・」という小生の返答


少し早めに帰宅し、家内の土産のお菓子で一服・・。


さて本日の「十市石谷」なる画家は私も入手するまでは知りませんでした。なかなかよさそうな作品のでついつい買ったしまった次第です。

掛け軸の保存箱に同封されている識書には非常に素晴らしい作品だと褒め称えています。たしかになかなかの作品です。あまり知られていない画家ですが、入手金額も思いのほか高くなりました。

素性を知らなくともひと目見てほれ込むというのは人間にも、骨董にもあることです。


青緑山水図 十市石谷筆
絹本水墨着色 合箱 識書二通 
全体サイズ:縦1730*横365 画サイズ:縦1020*横485




賛には「春山雨霽図 佑□一峰□□ 石谷生 印」とあり、印章は「十賚之印」と「□□□□」の白文朱方印の累印が押印されています。遊印については詳細は不明です。

  

十市石谷(とおち-せきこく):寛政5年(1793年)~嘉永5年(1853年)。 江戸時代後期の画家。寛政5年生まれ。豊後(ぶんご)(大分県)杵築(きつき)藩士。文人画家の田能村竹田と親交があり,また長崎の鉄翁祖門は「古法をもちてよく新趣をいだす」と石谷の画を評している。嘉永(かえい)6年死去。61歳。名は賚。字(あざな)は子(士)元。通称は恕輔。別号に霞村。







識書付について
「十市石谷筆青緑山水春山雨霽(晴)之啚(図)



 
昭和九年四月九日青山大宮御所ニテ皇太后大夫御歌所所長入江為守子此幅ヲ鑑覧シテ曰ク 名手名手風韻捨テ難シ余此幅ヲ欲ス割譲セヨト、遂ニ言葉ヲ卑シテ之ヲ断レリ、然ラバ少特機ヲ得テ写シ度借用シ度ト垂涎三尺ノ態ナリキ  高橋記 印」とあります。




入江為守 (いりえ-ためも): 1868-1936 明治-昭和時代前期の官僚,歌人。慶応4年4月20日生まれ。冷泉為理(れいぜい-ためすけ)の3男。入江相政(すけまさ)の父。明治30年貴族院議員。のち東宮侍従長,侍従次長をへて昭和2年皇太后宮大夫。この間大正4年から御歌所所長をかね,「明治天皇御集」「昭憲皇太后御集」編集事業を完成させた。昭和11年3月19日死去。69歳。京都出身。


要は入江為守なる天皇家の御歌所所長というお偉いさんが非常にこの軸を褒めて欲しがったということらしい。お世辞か、はたままた本当に欲しかったのかは分かりませんね。ま~、お世辞というのが妥当なところでしょう。「垂涎三尺ノ態ナリキ」という表現は面白いですね。ただ、この時期文人画の評価は非常に高かったので、こういうことは起こりえたことかもしれません。 


題石谷筆青緑山水春山雨霽図



石谷山水画中之傑作。筆力雄勁なる石谷の筆にてありながら毫端更ニ覇筆を現はさず秀潤温雅にして春風甚典雅なり□なる焦燥の心境も此幅に對すれバ自ら沈静するの思あ伊藤り全幅韻附標渺軸を巻きて風韻永く眼底に残るを覚ゆ
丙戌(昭和21年?)秋晩 於伊東写居 枕渓生 印
(鳩居堂製)



「枕渓」なる人物については調査中ですが、ちょっと褒め過ぎの感じのする書付ですね。「焦燥の心境も此幅に對すれバ自ら沈静する」というので、しばし眺めていたのですが、寝てしまいました



南画は明治期からあまり恵まれなくなっていくとはいえ、まだまだ昭和最初までは人気がそれなりにあったことでしょう。とくに多くの著名な画家を輩出した九州では絶大なる人気があります。もうすぐ大分県立美術館が出来上がると九州出身の数多くの文人画が陳列されることでしょう。



明治期に新たに新政府の官僚となった人々はこぞって南画などを買い求めたもので、家が一軒建つ値段で取引された画家の作品も数多くあります。田能村竹田とのかかわりもある十市石谷を当時は知る人も多かったと思われます。どこをどう経由してか当方の所蔵となったことも何かの縁でしょう。



南画は自然の中にあって悠然と愉しむもの・・・、この二人は何を語っているのでしょうか?

とにもかくにも、わりといい作品です。

皆さんの感想や如何?














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2 コメント

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Unknown (黒川えりか)
2021-05-12 19:40:07
私の母方のご先祖様です。笑。
こうして画が見られてうれしく思います。
ありがとうございました。
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ご先祖様 (夜噺骨董談義)
2021-05-12 21:30:44
コメントをありがとうございます。
ときおりブログ掲載の縁者の方からコメントを頂いております。迂闊なことを記事にできないものだと改めて感じ入る次第です。
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