夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

お気に入りの作品 楚蓮香 寺崎廣業筆 明治40年(1907年)頃

2020-12-11 00:01:00 | 掛け軸
先週の畑での芋掘りの一コマです。「ああ~、疲れたね~」・・・。



「さて、昼ご飯はなんだろう?」、「ん? 昼飯抜きで芋掘り継続のようだよ。」、「うそ・・・!」親子の会話が続きます



さて本日の作品紹介は寺崎廣業の美人画の作品が続きますが、本作品は寺崎廣業の傑作のひとつだと考えています。なお一度改装していますが、一文字に剥離が生じてきています。そのため保存上から補修と太巻二重箱を誂えることとしています。

楚蓮香 寺崎廣業筆 明治40年(1907年)頃
絹本水墨着色軸装 軸先塗 極箱入 
全体サイズ:横520*縦2008 画サイズ:横389*縦1212



*手前は「室町期 古備前緋襷大舟徳利」です。

箱には「浴後 ▢妃子」とありますが、「妃子」だとする皇后の地位に次ぐ皇帝の妃という意味でしょうか?

 

当方で本作品の題名とした「楚蓮香」は仮の題名ですが、「楚蓮香」は唐の玄宗皇帝の時代?に長安一の美女と言われた人物の名らしく、資料には「唐の明皇の時に於ける長安府中の名媛なり、容委艶麗国色無双と称せらる、その外に出づるや胡蝶その香を慕ひ相随ふて翔ふといはる。」とあります。

彼女が外に出ると香りに胡蝶が誘われ、付き添いながら周りを翔び遊ぶほどであったという故事があり、画中に必ず蝶が描かれるはずですが本作品には蝶が描かれていませんので「楚蓮香」はあくまでも仮の題名です。当たり障りのない題名なら「浴後唐美人図」といったところでしょうか?

「楚蓮香」という作品では、下記の写真の京都国立近代美術館蔵である上村松園の作品が名作として知られていますが、他にも円山応挙ら多くの画家が描いています。

参考作品 楚蓮香之図  上村松園筆
大正13年頃 絹本着色 軸装:縦142.0X横56.0
京都国立近代美術館蔵



下記は箱書と作品中の落款と印章ですが、箱書にある人物については詳しくはまだ解っていません。

 

寺崎廣業の真作とすると落款が「二本廣業」の時代ですので、明治40年頃の作と推定されます。



寺崎廣業の美人画の作品は明治期の作品が多く、大正期にも描かれていますが、大正期には圧倒的に風景画の作品が多くなります。



寺崎廣業が世に出たのは挿絵や版画などの美人画がその足掛かりのため、当然初期の頃の作品には美人画が多くなったのでしょう。



寺崎廣業の生存中は風景画の方が人気が高かったのですが、今では美人画の方が作品数も少なく人気が高くなっているようです。



多く描かれた席画のような作品ばかりが市場にある現在では寺崎廣業の評価は下がるばかりですが、明治期のあふれんばかりの色香のある美人画は魅力的ですね。本作品は上村松園の作より上出来で、寺崎廣業の美人画でもかなりよい出来の作品だと思っています。



最近こうして蒐集初期の作品を見返してみると、自分で記述するのも気が引けますが当方の蒐集初期の作品が面白くなってきています。



上村松園の参考作品に比べてだいぶふくよかな「楚蓮香」ですが、当方の家内に似ているのかな??? 

*右棚上は「古九谷 吸坂手錆釉山水文瓢形徳利」です。


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