伊藤若冲の水墨画においては鶏を描いたものが一般的ですが、意外に鶴についても数は少ないものの良く描いています。
表具の状態が悪かったので改装しています。
鶴之図 伊藤若冲筆 その3
紙本水墨軸装 合箱
全体サイズ:横375*縦1890 画サイズ:横302*縦1270
改装予定
胴体部分を簡略化してまるで禅画のように丸目に描くのが特徴です。
本作品には筋目描きのようなお馴染みの技巧は見受けられませんね。
鶴の表情はよくとらえています。
水辺の描き方も特徴的です。
当方が上京したての頃、六本木の骨董店で鯉を描いた伊藤若冲の作品を見かけたことがあります。お値段は20年ほど前で60万円でした。今だったらお買い得かもしれませんね。
印章はほぼ真印に一致しているようです。よく似た印が出回っていて「伊藤」の「伊」の部分がわずかに真印と違うものがあります。工房作品ではという方もおられますが、詳細は当方では解りません。
本作品は座興と思ってお楽しみください。
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参考作品
2023年8月23日 放送なんでも鑑定団出品作
双鶴図 伊藤若冲筆
評価金額:300万円
評:伊藤若冲の双鶴図、本物。この構図のものは正月用など要望があって何点も描いていると思われる。印の欠け方から50代過ぎた頃の作品。卵型の胴体がとてもユーモラスで印象的で、ほっとするような柔らかさを感じさせる。丸い体もちょっと禅の円相を思わせるような面白い作品。
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下記以降の写真は改装後となります。
既存の表具材を痛んで使えない状況なら、極力以前の表具と同じ雰囲気の表具材を選定します。
掛け軸は本体が晒されて鑑賞しますので、表具が痛まないように慎重に取り扱います。
掛け軸には虫食い、ヤケ、湿気によるシミなど注意すべき事項は数多くありますが、痛んでくると鑑賞に堪えられない状況になります。きちんとした取り扱いとメンテが必要です。また1か月以上の継続した展示は避けなくてはいけませんね。
古箱に収めらていましたが、キチンとした塗の2重箱を誂えておきました。
説明用の資料は箱内に収めると作品に皺が入るような窮屈さになることがあります。紙タトウと箱の間に調査資料は入れておいて、作品への影響を少なるするとともに、重ね蓋の真田紐等も傷めないようにしておきます。