「男の隠れ家 その4」の工事がゆっくりながら着々と進んでいるようです。いよいよ外壁張りが始まりました。既存の外壁に防水シートを張ったり、既存サッシュ周りに見切り縁を取り付けて、新規の外壁を張ります。
下から張り始めますが、腰壁は木目調のサイデイングを縦張りにしました。縦張りにしたのはサイデイングの割付調整のためです。外壁は2種類の色の木目調のサイデイングをストライプ状に張りますが、既存のサッシュ高さなどで割付が難しくなっています。それを解決するためのアイデアです。
汚れやすい外壁部分は濃い色のサイデイングで、他は白っぽいサイデイングです。ほとんどと言っていいほど住宅にはストライプ状の外壁のデザインがないようですが、ほんのちょっとした挑戦です・・・。
外壁に絡めて木板張りのオーバースライダーですが、木目調のプリントされたオーバースライダーはありますが、ムクの木を張ったオーバースライダーは当方では男の隠れ家についてだけで4台目となります。
外壁の改修にはいろんな設備工事が絡みます。事前の充分な検討が必要ですが、こればかりは経験しないと解らないかもしれません。
さて本日の作品紹介です。
画壇の紛糾や戦争の混乱を乗り越え、激動の昭和を生きた洋画家の伊勢正義は当方の郷里近くの町の出身です。郷里のアトリエの解体などに母が仕事で縁あって関り、その際に出てきた絵画など数点が当方の家には古くからあります。
その数点の作品の内のこの山の風景画は当方が子供の頃から実家の階段に飾られていました。当方が母から当方の結婚に際して譲り受けており、今は「男の隠れ家 その1」の階段の踊り場に飾られています。
最近は伊勢正義についてはなかなかいい作品が出回らないようです。風景画や静物画の作品はよくみかけますが、なんといっても伊勢正義の真骨頂とも言うべき人物を描いた作品は入手困難なようです。
その伊勢正義の女性をスケッチした作品が2点を入手できましたので紹介します。
デッサン 婦人 その1 伊勢正義画 1938年(昭和13年) その32
ペン画? 額装 黄袋+タトウ
額サイズ:横410*縦527 画サイズ:横265*縦330
入手時は下記の写真のような簡易な額装でしたので、備えてあった額(リサイクル品)に入れ替えています。
汎用性のあるサイズの額はインターネットオークションで見かけ、廉価なようだと落札してストックしておくといいでしょう。
簡素な絵ながら、いい作品だと思います。描いた年季まで分かるのがいいですね。
伊勢正義は、1907(明治40)年 秋田県大館市白沢に生まれています。その後転勤の多かった父にともない各地を転々とし、少年時代を秋田県小坂町で過ごしています。当時の小坂町は鉱山の最盛期で、秋田県で北辺の地にありながら中央から直接文化が流入し、近代的・都会的な気風に満ちあふれていました。演劇などの文化活動も盛んに行われ、芸術方面への関心が高い町だったといえます。伊勢の同時代の日本画家福田豊四郎(1904-1970)も小坂町の出身です。
多感な時期に文化的な町の気風にふれた伊勢正義は、画家の道を志して東京美術学校(現東京藝術大学)に進学し、洋画家藤島武二(1876-1943)に師事します。
同校を卒業後、伊勢は光風会や帝展などに次々と入選を果たし、将来を嘱望されました。前途洋々たる伊勢の船出でしたが、1935(昭和10)年 帝展改組(松田改組)という美術界の嵐にみまわれ、大きな転機が訪れます。
この年伊勢正義は、帝展を離脱した洋画家たちが開催した第二部会展に「集ひ」を出品し、特選・文化賞を受賞してその力量を発揮しました。しかし、美術界の混乱は収まらず、これに失望した伊勢ら若い洋画家は決起し、新団体結成へと突き進むことになります。
こうして1936(昭和11)年、伊勢のほか猪熊源一郎、内田巌、小磯良平ら藤島武二の門下生9名によって、「美術界の一切の政治的抗争を排し、芸術行動の純化をめざす」と主唱する新制作派協会(新制作協会の前身)が旗揚げされました。伊勢はその第1回展に大胆な色彩と構成による「バルコン」「キャバレー」を出品し、時代の先鋭として活躍することになります。
芸術活動の自由を求め、画家個人の純粋な造形的追求を標榜した伊勢ら創立会員の理念は新制作協会へと受け継がれて、そして現在に至ります。画壇の紛糾や戦争の混乱を乗り越え、激動の昭和を生きた伊勢正義の50余年の画業は、初期から晩年に至る大作や小品とともに草稿、挿絵原画にも反映されています。
静物画や風景画を除いて人物がを中心に徐々に蒐集しつつある郷里の画家「伊勢正義」の作品は、蒐集が滞りつつあるものの「その32 & その33」まで増えてきました。
「その33」は下記のデッサンの作品です。
肉筆かどうかはよくわかりませんが、資料の作品として入手しました。
デッサン 婦人 その2 伊勢正義画 1937年(昭和12年) その33
ペン画? 額装 黄袋+タトウ
額サイズ:横410*縦527 画サイズ:横265*縦330
肉筆のように見えますが、もしかしたリトグラフかもしれませんね。
少ない筆致でありながら、うまく描けています。
このあたりの修練の痕跡が現代の画家には全くない・・。当方で蒐集している原精一にしても、木下孝則にしても現代の画家はこれらの画家の足元にも及ばないと思っています。
作品中のサインは下記写真のとおりですが、年期は西暦なのでしょうが、「37」か「57」か「その32」の作品ともども迷うところですが、1937年と推定しました。どうも伊勢正義の作品に記されている年期は読みづらい・・。
人物を描いた伊勢正義の作品は市場では非常に少ないように思われます。もはや納まるべきところに納まっているのかな?
「その32」にはありませんが、「その33」の裏面には下記のようなスタンプ?があります。
「男の隠れ家 その4」が完成したら、郷里の画家の作品を飾って大いに楽しみたいものです。