夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

天地交換

2018-05-16 00:01:00 | 掛け軸
本日は朝から日帰りで名古屋に出張する都合により、ブログの内容は簡単な記事といたしましたのでご了解願います。

掛け軸が痛み始める部位は掛け軸の上下に多いということをご存じでしょうか? 掛け軸の上下の部分を「天地」と称していますが、紐で巻いていることによる擦れ、表具の剥がれや破れ・浮き、そして軸先や紐などが掛け軸の「天地」では痛むことが多いようです。

その段階での天地のみ交換、もしくは締め直し(元の材料で直すこと)は掛け軸の保存上は非常に効果的です。表具師にとっては表具をやり直すよりはお金にならないし、面倒なので嫌がることもありますが、本体が痛んでいなければ、費用が圧縮できることで保存に最適な状態を保つことができます。

本ブログにていくつかの天地交換した作品を紹介しましたが、最近も三作品の交換を表具師に依頼してこのたび完了しましたので紹介します。作品そのものは天地交換前に本ブログにて説明していますので作品紹介は省略させていただきます。

深山春雪之図 山元春挙筆 その5
絹本水墨淡彩軸装 軸先 二重箱共箱入
全体サイズ:横602*縦2030 画サイズ:横505*縦1196

天地交換前が下記の写真です。天の部分が虫に喰われて穴があいています。



天地交換後が下記の写真です。



本紙(作品自体の部分)が痛んでいなければ新品同様の状態になります。鑑賞もより一層楽しくなり、なによりも扱いが楽になります。



本作品にてもうひとつ施したのは箱書きのカバーです。

この作品は共箱の表側に落款を記し、印章が押印されています。箱を二重箱に収める際に外箱に擦れてしまい、書かれた文字が薄くなる可能性がありますので、箱にカバーを付ける必要があります。

このようなことに気を使う必要性は私が子供の頃に母から教わりました。母はものを扱うに際して粗雑に扱うことを嫌っていましたが、子供心に「うるさいな~」と思っていましたが、今では自然に自分からこだわっています。

 

このカバーは自分で作るとどうもぴったりできないもので、予想以上にうまくできないものです。応急処置として紙を当てておくこともできますが、慣れていないとうまく入れられません。掛け軸の扱いを知らない御仁が意外に多く、カバーを壊したたり、当て紙をしわくちゃにする無作法者が多いようです。この作品は天地交換ついでにカバーを作ってもらいましたが、このような処置は改装よりもかなり安くできます。

こちらの作品も天地交換しておきました。

早春花美人 伝上村松園筆
絹本着色軸装 軸先塗 共箱
全体サイズ:横*縦 画サイズ:横400*縦1210

改装前は写真ではわかりにくいですが。天の部分の両脇が痛んでいました。



こちらも天地交換した作品です。



既存の表具布をそのまま使っています。



天地のみの締め直しですね。



これだけでだいぶ掛け軸が扱いやすくなります。ちなみに手前の大皿は平野庫太郎氏作の作品です。



こちらの作品もまた天地交換の処置をした作品です。

嵐山春雨 富田渓仙筆
絹本着色軸装 軸先象牙 富田芳子鑑題 二重箱入 
全体サイズ:横555*縦1320 画サイズ:横420*縦365

改装前は。写真ではわかりにくいですが、上一文字部分と同様の染みが天の部分に発生しています。



一万円以下程度でこの処置ができます。紐を新しくしたり、とれた軸先を交換することもこの際にできます。



天地部分が破けていたり、糊が浮いた状態も改善されます。天地が痛んだ後は扱いにくくなり、掛け軸がうまく巻けなかったりして、ここからどんどん掛け軸は痛んでいきます。掛け軸を所蔵の方は所蔵の掛け軸の状態を確認して、天地交換で済むのであれば天地交換を早めにすることをお勧めします。



ただやはり本紙(作品部分)を傷めないように保管しておくことが肝要なことに変わりはありません。



息子がふざけていたずらをしないことを祈るばかり・・・。



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