
4200日以上、作品数2500以上、本日の投稿まで日曜などの休日を除く毎日投稿してきた本ブログは、来週からは気の向くままの不定期な投稿になりますので、ご了解ください。
一昨日は月見・・・。

月見をするには段取りが要る・・。


さて本日は平福百穂の作品整理についてです。わが郷里出身の平福百穂の作品は真贋、模写とくに印刷か否かの判断が非常に難しいです。紛らわしい作品を贋作や模写、印刷と決めるのはかなりの決断が要ります。それらを真作とするのは売買しないかぎり罪はないのですが、真作を贋作と決めつけるのは逆に大いに罪深いことだからです。

それゆえ「贋作だよ。」と所蔵者以外の他人が判断するようなことは当方では慎んでいます。このことを認識しているのとしていないのでは、作品に向かい合う姿勢が大きく違うことになります。作品の真贋は通常考えているよりもっと奥の深いもののようです。
今回は今一度、一度は贋作や模写、印刷と分類した平福百穂の作品を見直しています。本ブログでは一度は印刷や贋作として紹介している作品です。
まずは「淡彩松図 平福百穂筆 大正10年頃」の作品です。
淡彩松図 平福百穂筆 大正10年頃
紙本水墨淡彩軸装 軸先象牙 平福一郎鑑定二重箱
全体サイズ:縦1370*横705 画サイズ:縦*横

真作ならかなり出来の良い平福百穂の作品となります。描いている生地が特殊ですが、古来より羽織の裏地にするために描いた作品が多いのでこのような生地に描くことには違和感はありません。

落款と印章は間違いなく本物です。

問題は印刷か否か、そして平福一郎の鑑定が本物かどうかが焦点ですね。印刷ドットは見られませんが、最終的に印刷かどうかは正直には素人ではまったく判断できません。ドットが見られる、滲みで解るような幼稚な印刷は簡単に見分けられるものです。
印刷作品に対する考察は下記のとおりです。
****************************************
印刷作品
精巧な作品は写真やスキャンした画像では判別できない。「滲み」や「色」からは素人での判別はまず無理であろう
印刷作品の特徴は
1.紙本の作品なら表面がつるつるしている
2.印刷の作品の場合はドットが目視できる場合がある。これはことに書の作品に多い。ドットが確認できる場合は印刷の可能性が高い。
3.著名な画家の作品には印刷作品が多い。現在ではほとんどが値段はつかない。
印刷や手彩色の工藝作品は印章にて区別している場合が多い。いわゆる「工藝印」だが、真印を使用している作品も少なくない。さらにプロでも「工藝印」のある作品を肉筆を思い込んでいる人がいます。
*贋作や模写に騙されるより、印刷を入手するほうが筋がいいといいます。作品自体は本物だからのようです。
****************************************
当方では正直なところ真作(肉筆)に近いが確証は得られないということです。平福一郎の鑑定箱書きの書体は真ですが、印章が確認できていません。今回の再検証では、捨て置かないで遺すことにした作品です。

次は「癸酉山水図 平福百穂筆 昭和8年」という作品です。この作品は入手時に印刷と決め込んでいた作品です。

癸酉山水図 平福百穂筆 昭和8年
紙本水墨 絹装軸 軸先象牙 合箱
全体サイズ:横680*縦1360 画サイズ:横480*横400

こちらの作品は合箱ですので、共箱や鑑定箱はありませんので、作品自体のみからの判断となります。こちらの作品も落款と印章は真です。やはり印刷か否かが焦点となります。

「紙本の作品なら表面がつるつるしている」という点から一度は印刷と判断しましたが、再表具の跡があり、どうも印刷決めにくい点が幾つかありました。
癸酉は昭和8年のことで、この年の10月に平福百穂が亡くなっており、亡くなる直前の夏に描かれた作品となります。脳溢血で急死していますので、この時期に描かれた可能性は高い作品です。この点からはたとえ印刷でも遺しておく価値はあります。
次は「墨松老幹 平福百穂筆 大正11年(1922年)頃」の作品です。

墨松老幹 平福百穂筆 大正11年(1922年)頃
絹本水墨軸装 軸先骨 合箱(所蔵印有)
全体サイズ:縦1220*横425 画サイズ:縦*横

所蔵印のある箱に収納されていますが、共箱や鑑定箱ではありません。焦点はやはり印刷か否かでしょう。

印章は横幅が短いようです。これは絹本生地に押印した縮みの関係があるのかもしれないので、一概にこれで贋作とは断定できません。横に写真を伸ばすと真印に一致します。

描いている生地が粗い絹本で特殊ですが、古来より羽織の裏地にするために描いた作品が多いので違和感はありません。どうみても肉筆・・・・??? やはり印刷か否かは素人では難しい・・・・。
肉筆の作品については、ほどんどの作品についてその真贋は筆致、落款、印章でけりがつきます。ネットオークションのある作品は99%はこれらで除外されます。
ただ下記の2作品のように微妙な作品はときして判断に迷うものです。
色紙 葡萄図 平福百穂筆 大正6年(1917年)頃 贋作
紙本水墨淡彩 色紙 布タトウ
画サイズ:縦270*横240

高級感のあるしっかりとしたタトウに収められ、出来も印章もそれなりにいいのですが、印影に違いがあります。

荒磯 平福百穂筆 大正15年(1926年)頃 真贋不詳
絹本水墨淡彩 絹装軸 軸先象牙 共箱二重箱
全体サイズ:横663*縦2340 画サイズ:横1380*横511

画風は平福百穂にかなり近いですが、残念ながら印影が違うものです。最初の作品とよく比べないと解らないくらいの出来です。箱書きも書体、印影は見違えるほどよくできています。

平福百穂に限らず贋作と判断された作品は屋根裏に収納しておき、いずれ処分します。だいぶ貯まってきており、置く場所に苦労しています
蒐集家は真作が半分あれば、さらにそのうちに画家一人につき気に入った作品がひとつあればいいといいます。だいぶ贅沢な話ですがこれは意外に真実のようです。
一昨日は月見・・・。

月見をするには段取りが要る・・。


さて本日は平福百穂の作品整理についてです。わが郷里出身の平福百穂の作品は真贋、模写とくに印刷か否かの判断が非常に難しいです。紛らわしい作品を贋作や模写、印刷と決めるのはかなりの決断が要ります。それらを真作とするのは売買しないかぎり罪はないのですが、真作を贋作と決めつけるのは逆に大いに罪深いことだからです。

それゆえ「贋作だよ。」と所蔵者以外の他人が判断するようなことは当方では慎んでいます。このことを認識しているのとしていないのでは、作品に向かい合う姿勢が大きく違うことになります。作品の真贋は通常考えているよりもっと奥の深いもののようです。
今回は今一度、一度は贋作や模写、印刷と分類した平福百穂の作品を見直しています。本ブログでは一度は印刷や贋作として紹介している作品です。
まずは「淡彩松図 平福百穂筆 大正10年頃」の作品です。
淡彩松図 平福百穂筆 大正10年頃
紙本水墨淡彩軸装 軸先象牙 平福一郎鑑定二重箱
全体サイズ:縦1370*横705 画サイズ:縦*横

真作ならかなり出来の良い平福百穂の作品となります。描いている生地が特殊ですが、古来より羽織の裏地にするために描いた作品が多いのでこのような生地に描くことには違和感はありません。

落款と印章は間違いなく本物です。

問題は印刷か否か、そして平福一郎の鑑定が本物かどうかが焦点ですね。印刷ドットは見られませんが、最終的に印刷かどうかは正直には素人ではまったく判断できません。ドットが見られる、滲みで解るような幼稚な印刷は簡単に見分けられるものです。
印刷作品に対する考察は下記のとおりです。
****************************************
印刷作品
精巧な作品は写真やスキャンした画像では判別できない。「滲み」や「色」からは素人での判別はまず無理であろう
印刷作品の特徴は
1.紙本の作品なら表面がつるつるしている
2.印刷の作品の場合はドットが目視できる場合がある。これはことに書の作品に多い。ドットが確認できる場合は印刷の可能性が高い。
3.著名な画家の作品には印刷作品が多い。現在ではほとんどが値段はつかない。
印刷や手彩色の工藝作品は印章にて区別している場合が多い。いわゆる「工藝印」だが、真印を使用している作品も少なくない。さらにプロでも「工藝印」のある作品を肉筆を思い込んでいる人がいます。
*贋作や模写に騙されるより、印刷を入手するほうが筋がいいといいます。作品自体は本物だからのようです。
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当方では正直なところ真作(肉筆)に近いが確証は得られないということです。平福一郎の鑑定箱書きの書体は真ですが、印章が確認できていません。今回の再検証では、捨て置かないで遺すことにした作品です。


次は「癸酉山水図 平福百穂筆 昭和8年」という作品です。この作品は入手時に印刷と決め込んでいた作品です。

癸酉山水図 平福百穂筆 昭和8年
紙本水墨 絹装軸 軸先象牙 合箱
全体サイズ:横680*縦1360 画サイズ:横480*横400

こちらの作品は合箱ですので、共箱や鑑定箱はありませんので、作品自体のみからの判断となります。こちらの作品も落款と印章は真です。やはり印刷か否かが焦点となります。

「紙本の作品なら表面がつるつるしている」という点から一度は印刷と判断しましたが、再表具の跡があり、どうも印刷決めにくい点が幾つかありました。
癸酉は昭和8年のことで、この年の10月に平福百穂が亡くなっており、亡くなる直前の夏に描かれた作品となります。脳溢血で急死していますので、この時期に描かれた可能性は高い作品です。この点からはたとえ印刷でも遺しておく価値はあります。
次は「墨松老幹 平福百穂筆 大正11年(1922年)頃」の作品です。

墨松老幹 平福百穂筆 大正11年(1922年)頃
絹本水墨軸装 軸先骨 合箱(所蔵印有)
全体サイズ:縦1220*横425 画サイズ:縦*横

所蔵印のある箱に収納されていますが、共箱や鑑定箱ではありません。焦点はやはり印刷か否かでしょう。

印章は横幅が短いようです。これは絹本生地に押印した縮みの関係があるのかもしれないので、一概にこれで贋作とは断定できません。横に写真を伸ばすと真印に一致します。

描いている生地が粗い絹本で特殊ですが、古来より羽織の裏地にするために描いた作品が多いので違和感はありません。どうみても肉筆・・・・??? やはり印刷か否かは素人では難しい・・・・。
肉筆の作品については、ほどんどの作品についてその真贋は筆致、落款、印章でけりがつきます。ネットオークションのある作品は99%はこれらで除外されます。
ただ下記の2作品のように微妙な作品はときして判断に迷うものです。
色紙 葡萄図 平福百穂筆 大正6年(1917年)頃 贋作
紙本水墨淡彩 色紙 布タトウ
画サイズ:縦270*横240

高級感のあるしっかりとしたタトウに収められ、出来も印章もそれなりにいいのですが、印影に違いがあります。


荒磯 平福百穂筆 大正15年(1926年)頃 真贋不詳
絹本水墨淡彩 絹装軸 軸先象牙 共箱二重箱
全体サイズ:横663*縦2340 画サイズ:横1380*横511


画風は平福百穂にかなり近いですが、残念ながら印影が違うものです。最初の作品とよく比べないと解らないくらいの出来です。箱書きも書体、印影は見違えるほどよくできています。


平福百穂に限らず贋作と判断された作品は屋根裏に収納しておき、いずれ処分します。だいぶ貯まってきており、置く場所に苦労しています

蒐集家は真作が半分あれば、さらにそのうちに画家一人につき気に入った作品がひとつあればいいといいます。だいぶ贅沢な話ですがこれは意外に真実のようです。