
本日紹介する作品は「伝高村光雲」の作品です。共箱ではないので、彫銘や出来からの推測での入手となっています。

持経観音像 伝高村光雲刀 その4
木彫 合箱
高さ228*幅178*奥行125

岩上観音は解りやすいのですが、合箱に記された「持経観音」は馴染みが薄いので解りにくいすね。


「持経観音」についての説明は簡単に言うと下記のようなもののようです。
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持経観音:岩に坐り手に経巻を持ちます。左手は膝の上?に置く姿で、この観音の奉持する経典には、如来の説法の内容がすべて込められており、声聞を教化する姿を現すそうです。
『観音経』に「まさに声聞のみをもって得度すべきものには、すなわち声聞の身を現じて、ために法を説く」とあります。
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多くの高村光雲の作そされる作品は実は工房作品ですが、共箱に収まっている作品が殆どです。ただしその共箱を記したのが、高村光雲自身なのかどうかは解っていません。通常は工房作品でも共箱は本人によるもの、また彫銘も本人によるものとされていますが、子息の高村光太郎は父の高村光雲はあくまでも彫刻家というより職人であったと著しています。ただしかなり彫銘や箱書は一定の書体をもっていますので、多くは本人自身によるものに相違ないでしょう。
*ちなみに金城次郎などの箱書きはいろんな人に書いてもらってたようです。むろん本人自身のよるものもあるらしい・・。
作品の背面の下部には彫銘があります。

下記の彫銘
左:本作品
右:参考作品 観音像 工房作品(真作)


多くの贋作はひとめで違う彫銘が多いのですが、他の作品らと比較してみても一目瞭然に真贋の判断はできない彫銘のようです。よって「伝」・・・。
本人作の真作は「高邨光雲」と「邨」の字に彫られるので、「村」となっている本作品は真作でも工房作品であることには相違ないようです。

割と小さな作品なので、拡大すると彫の粗雑が見えるようになりますが、実際はかなり丁寧に彫られています。

足の裏表や手の指の細部も丁寧です。なお最盛期の光雲は非常に緻密に、細部に至るまで写実的に作った名品を遺しています。

観音像では難しいとされますが「静なるものにも動がある」とされます。

材料の木目を生かした彫となっているように見えます。「まさに声聞のみをもって得度すべきものには、すなわち声聞の身を現じて、ために法を説く」・・・。