天井の張替え工事は廊下から始まり、だいたい終了し現在はトイレ内の工事となっていますが、まずは廊下は照明まで復旧しました。
フットライトも明かりセンサーと人感センサーに性能アップ。
新たな照明で飾る絵も鮮明に見えるようになりました。
絵類は飾って楽しむもの・・・。
飾る方法、場所には貪欲であるべきだが、節操のない飾りすぎは所蔵者の品格が疑われる・・。
さて日本の版画で最高の出来とされるのが「大日本魚類画集」ですが、今では完全な状態の作品をすべて新たに揃えるのは不可能かもしれません。当方の蒐集はまだ半分弱・・。
本日は第4回頒布の第6作品目の「サメ」です。シリーズではぜひ欲しい作品のひとつでしょうね。
大日本魚類画集 NO99 サメ 大野麥風画
紙本淡彩額装 版画 1941年2月第6回(第4回頒布)
画サイズ:縦370*横275
全部で72種の作品があり、6回に分けて各回12種類の発刊となっていますが、意外に簡単に揃うには第3回目での36種のようです。300部限定となる第4回以降の作品はなかなか見つかりません。
写真ではわかりにくいでしょうが、手前のサメの顎の下には銀彩があります。さすが200度摺りをしている摺りと感心します。実際に200度もの摺りもしている作品はシリーズ中でも数えるくらいしかなく実際は平均で150度摺り程度ですが、同時期の作品が30度摺りが一般的なことを考えると尋常ではない摺りです。
版画は浮世絵をはじめとして、顔料が劣化することや日光はむろんのこと、照明さえ悪影響を与えます。某コレクターが美術館に寄贈する際に「展覧会などに出品しないこと」を条件したとか・・。
この大日本魚類シリーズにも状態の悪い作品をよく見かけます。版画は一度状態が悪くなると直しようがありません。
このシリーズには発刊された同時の資料があります。この資料と共に作品が遺っているのは稀有でしょう。
タトウの題字は徳富蘇峰というのもこのシリーズに当時の知識人の力の入れようが解ります。(もう一人の題字を書いていたのは谷崎潤一郎です。)
彫師も摺師も当時の第一級の腕前の人ですが、複数人で作業しており、同じ作品でも違う場合があります。
大野麥風はこの作品以外にはあまり見るべき作品がないのが残念ですね。
説明書には英文でも書かれています。ただしこの発刊中に第2次世界大戦に突入することになります。
戦争という爪痕も作品数の残存数が少ないことに関係あるかもしれません。版元が京都に移転しているのも戦争と関係あるかもしれませんね。
当時の一流の画家も編集に関わっています。
作品は台紙に貼られていますが、この台紙には作品名がエンボス状に書かれています。
この台紙から作品を剥がして額装にはしていません。台紙が残存している場合は台紙が額内に納まるように一回り大きな額を誂えています。
このシリーズは絵にも負けない迫力があるので、大きめの額に入れて飾ると見栄えがします。
展示室の屋根裏につながる階段に飾っていました。
ひとつずつひとつずつ地道に蒐集しています。ひと作品のお値段は5万円相当が妥当ですが、オークションなどは値段をつり上げますので要注意ですね。