夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

贋作考 夏景山水図 伝橋本雅邦筆 番外編

2017-01-31 00:01:00 | 掛け軸
以前に美術商と橋本雅邦の屏風の売買の交渉をしたことがあります。互いに真作とは認めての交渉ですが、当初はあまりにも安すかったのですが、何度か交渉した後に納得のいく金額で引き取っていただきました。

橋本雅邦は真作だと売買の両当事者が認めていても、万人が認めるもの(証拠)が必要で、その屏風の作品も最終的に橋本雅邦の図鑑に掲載されていることが判明して引き取り価格が高くなったようです。骨董に詳しい方なら誰でも知っている美術商ですが、一流だからこそ、そこまで調べられたのでしょう。美術に関する本を扱う美術商であり、二流どころでは調べがつくものではありません。

何度も記述しているように、掛け軸類の日本画は現在非常に廉価となっており、たとえ橋本雅邦といえども真作の小作品なら10万を少し超える程度で売られています。東京美術倶楽部の鑑定証や由来の解る書付、図鑑掲載があると少しは値段が上がるかもしれませんが・・・。

橋本雅邦の作品は出来、落款、印章がしっかりしていても真贋は保証できないというスタンスのように思われます。つまりそれだけ出来の良い贋作が存在するということでしょう。

今回はそこまで出来の良い贋作ではありませんが、当方での資料として手元にある作品で検証してみました。

贋作考 夏景夏山水図 伝橋本雅邦筆 番外編
絹本水墨軸装 橋本秀邦鑑定箱 
全体サイズ:横380*縦1780 画サイズ:横240*縦270



橋本雅邦の子息である橋本秀邦の鑑定のある作品は最近紹介した作品にもあります。橋本雅邦の鑑定は東京美術倶楽部以外に、川合玉堂、子息の橋本秀邦が行なっていますが、その鑑定にも贋作が存在するので話はややこしくなりますし、さらにややこしいのは橋本秀邦の鑑定が正しいかどうかも疑う必要があるようです。

椿鶯図 橋本雅邦筆
絹装軸紙本水墨 軸先象牙 橋本秀邦昭和16年鑑定極箱入
全体サイズ:横400*縦1080 画サイズ:横260*縦190



これらの小点の二作を比較してみましょう。



ちなみに同一印章が押印されている加島美術出版の「美祭」に掲載されている「春景山水草藁」の印章を参考にしています。



「夏景夏山水図」と「椿鶯図」と「春景山水草藁」の印章の比較

一番右が真作の印章。中央「椿鶯図」は真作と同じく印章のみ。左が本作品で、落款とともに押印されている印章には違いがあります。

  

「夏景夏山水図」と「椿鶯図」の橋本秀邦鑑定箱の比較

 

左の「夏景夏山水図」は「誌」、右の「椿鶯図」は「鑑」とあり、鑑定した日付が記されています。これは「夏景夏山水図」は「真作と思えないこともない」、「観たことは観てみた」という程度の鑑定の書付と受けとれます。



「夏景夏山水図」はそれなりの外箱に納められています。どうも旧蔵者は真作と判断していたふしがあります。参考資料が乏しい時代、参考となる出版物や情報の乏しい時代は所蔵者が真贋を見極めるのは非常に難しかったのでしょう。

鑑定、収納箱などは当てにしないで好きな作品を愉しむことです。



作品に力は弱いですが、飾っておくのには支障はありません。実に安心して飾っておけます



真贋に目くじらをたてるのは、真作として売買しようとした時です。子供がいたずらをする恐れのある年齢である時、盗難の恐れがある時、煙草を吸われる人の饗応、夏の虫が入ってくる時、税金対策?などはこういう作品が重宝します。むろん、子々孫々のため真贋が解るようにしておく必要がありますし、数はそれほど必要ではありません。数多くの作品は処分しますが、活用性のある作品は違った意味で遺すことがあります。

ところで屏風の真作などは扱いがたいへんですよ。扱ったことのある人は良く解ると思いますが・・、まず女性では無理。

さて冒頭の写真の一輪挿しは誰の作品か?・・・・これはむろん真作・・・、後日また。




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