夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

未表装の作品 葡萄図 天龍道人筆 5作品

2022-01-22 00:01:00 | 掛け軸
当方にはかなりの数の天龍道人の作品がありますが、表具が痛んでいたり、保管箱のない作品が多く、その中にはまくりの状態での作品数が多くあります。まくりの状態の作品は多くは屏風や襖であったものから剥がされた作品が多いようです。

表装などの誂えには費用がかかりますので、徐々には表装していますが、まだまだ天龍道人の作品はほったらかしの状態です。

本日はそのような作品の紹介です。

同時に3作品を入手した作品ですが、痛みの激しいまくりの状態で三幅の作品を同時に購入したのですが、二幅(右と左)が76歳の作品で一幅(中央)が69歳の作品でした。残念ながら76歳の作品(双幅の作品?)はあまりにも痛みがひどいので、損傷の著しい部分を切り取って改装とならざるえない作品です。

 

葡萄図双幅 天龍道人筆 76歳
紙本水墨軸装 軸先 合箱
全体サイズ:縦1440*横545 縦1270*横590

76歳の作品(左)の賛には「葉結翠梼葉 密緑□濃最 □多□迎葉 六起清風 天龍湖老人七十有六年筆」とあります。



双幅と思われる右の作品には印章のみとなっていますが、作行から中央の作品と同時期に描かれたものと推察されます。



初期の作品(天龍道人は70歳代はまだ初期の作)の特徴であるみずみずしい葡萄の絵を描いた傑作です。

  

70歳頃からは「天龍道人」と署名されていますので、それまでの作品を「第1期」として年齢的には「~69歳」とし、「70歳代」の作品を意「第2期」としています。

 

一方双幅以外にある作品の左幅には「六十九才鵞湖乙翁(王瑾?)寫也 押印」とあります。前の所蔵者が年代の違う作品を所有していたのかは不明ですが、これらの三幅は傷み具合などから襖か屏風に描かれていた作品ではないかと推定しています。天龍道人と親交のあった家から出てきた作品ではないかと推定されます。

こちらはシミはあるもののまともに改装できそうです。

葡萄図 天龍道人筆 69歳
紙本水墨軸装 軸先 合箱
全体サイズ:縦1440*横545 縦1270*横590



落款の「鵞湖」というのは「諏訪」の別称で、天龍道人が 61 歳で下諏訪に家屋敷を購入したと年譜にあり、それ以降の作品に姓の「王」と名の「瑾」を合わせて「鵞湖王瑾」という組み合わせの署名がみられます。

 

いまひとつ未表装な作品はやはり双幅です。綺麗な状態であったまくりでの入手です。今まで表具された形跡がありませんでした。

葡萄図(双幅) 天龍道人筆 88歳
紙本水墨軸装(まくりで購入) 軸先木製
全体サイズ:縦*横(未表装) 画サイズ:縦1390*横640



落款には「八十八□□天龍道人□□筆」とあり、印章は白文朱方印「天龍道人」、「□□鎮東□庫之□□」が押印されています。



ただし当方の所蔵作品「葡萄図-14 天龍道人筆 その25」と同一文字の印章が押印されていますが、明らかに違う印影で別の印章を使用したと推察されます。



天龍道人が九十歳に描いた天龍道人一代の傑作、また万古の傑作、葡萄画人の面目の作と称せられる一月から六月までの葡萄の様子を各一図、計十二枚描いた「葡萄図 六曲一双」という作品があります。



その作品中の十二月の「老蔓偃雪図」、六月の「繁葉帯雨図」と近似した作品です。晩年の枯淡の作と称される作品ですが、結実前の時期と葡萄の実の時期が終わった時期を描いた稀有な作品ですが、冬枯れの樹木と実をつけ始めた頃を描くことで中央に葡萄の結実を創造させる狙いの作品です。蔓枝の筆力の躍動感は五十代、六十代の作品と比較すると別人の観があり、筆力は老境に入って却って益々壮者を凌ぐものがあるようです。

この作品も捨ておくにはもったいない作品だと思います。ふ~、物を持つとドツボに嵌まる・・・・



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