空港に行く前に「男の隠れ家」の床の掛け軸を山岡鉄舟の書から徳富蘇峰の書に変えてきました。
居住している義妹は何ら興味がないので、こちらは好き勝手に展示品を変えています。
空港に行く時間が迫っている中、蔵に入って物色してきました。何がどこにあるか分かっているので我ながら実に手早い。
リンゴ台風で屋根裏から出てきた掛け軸のひとつ・・。さて、何とか書いてあるのか?
本日の作品は福田豊四郎の作品の紹介です。
正直なところこの作品を最初に観た時はすぐには真作と判断できませんでした。まず落款が珍しいこととこの印章は観たことがないことからでした。しかしながら作行は戦前の作と推定され、出来がよいので購入することにしました。価格は5万円強でした。当方の所蔵する作品のファイルや資料を調べると徐々に判明したきたのが、この落款の書体と印章は昭和15年頃の短期間に用いられていたということです。
*上記写真の左の「聖観音像」は平櫛田中作です。「聖観音像」の手前のお猪口は明末赤絵・・。
多くの画家がそうであるように安定した落款の書体や印章を用いるのは作風が安定する晩年になってからのようで、壮年期には落款も印章も数多く変遷する傾向にありますね。
*上記写真の手前は河井寛次郎の花瓶です。花台は庭にあった欅の根を加工したもの。
仮題 炭焼小屋 福田豊四郎筆 昭和15年頃
絹本着色額装(改装が必要) 誂:タトウ+黄袋
全体サイズ:縦720*横810 画サイズ:縦485*横575 F12号
10号程度の作品は福田豊四郎の作品には多くありますが、12号のサイズとなると極端に作品の数が少なくなります。
本作品は共シールなどなく、作品中の落款と印章のみです。額も古く当時のままのものでしょう。
当方の他の所蔵作品「山湖秋」の落款と書体は同じ(下記写真中央が作品中の落款、右が共箱の落款)であり、本作品は昭和15年頃の作と推定されます。
さらに昭和16年発刊の画集「福田豊四郎画集」(他の所蔵作品「月と小魚」昭和11年5月作が掲載されている)に掲載されている作品「初夏水槽」(昭和13年6月作)に若干の縦横比に違いがありますが同一印章と判断されます。
なお印章の縦横比の若干の違いは絹本裏打ち、貼り付けや写真撮影の際に生じるものとそうでないものとがあり、縦横比の違いにて一概に贋作とは決め込まないほうがいいでしょう。
下記の写真において左が本作品の印章、右が「初夏水槽」の印章です。よく用いている印章は白文朱方印なので、本作品に押印されている朱文白方印は使用期間が短く非常に珍しい印章です。
*ただインターネットオークションに出品されている福田豊四郎の作品には贋作が多くありますので要注意です。印章や落款まで真作に酷似しているものは少ないようです。作行も福田豊四郎らしさは真似できていませんので容易に真贋の判別はできます。
戦後の抽象化された福田豊四郎の作品が人気が高いですが、戦前、戦時中のノスタルジック趣向の作品にも根強い人気があります。
下記の作品は上記の落款の参考にした「山湖秋」という作品です。ほぼ同時期に描いた作品です。
山湖秋 福田豊四郎筆 その87
絹本水墨淡彩軸装 軸先象牙 共箱二重箱
全体サイズ:縦*横 画サイズ:縦*横(未測定)
作行が似通っています。戦争になる直前か戦争に突入した頃の作となります。
本日の作品にも実は啄木鳥が描かれています。
当方にて福田豊四郎の作品はほぼ100点ほど蒐集となりましたが、小品ばかりながらサラリーマンの割にしてはいい作品が蒐集できたと思っています。
蒐集は止めた訳ではありません。
資料や見識が揃ってきたのでこれからが蒐集の本番です。
*本作品の額装は昭和初期のそのままの状態なので痛みがあり、周囲のマットも汚れているので取り替えることにしました。
2019年7月 額 マット新調、一部布タトウ、黄袋新調
依頼先:世界堂 費用は5万円ほど
額の痛み、周囲のマットの汚れがあり、2018年7月に額と周囲のマットを新調した。その際に絹本に裏打ちがなく不安定であることから画本体の絹本への裏打ちを検討したが、絹本が経年劣化により、マットからの切り離しに際して破損の恐れがあるため、マットの張り替えが無理であるとの判断から絹本自体には手を加えてはいない。額装は既存の額を取り払い、炭焼小屋をイメージしてくすんだ黒っぽい額に新調し、マットは現状のマットから画本体の絹本と切り離せないため、既存のマットに新しいマットを被せた方法とし、斜めの部分にギリギリで新たな見切り縁を回しています。
修理が完成した作品が下記の写真です。どうです? 元々いい作品でしたが、既存額の汚れを隠すことで立派になったでしょう
額縁などは「炭焼小屋」のイメージに合う額装にしました。
山中の朝に霧のかかった炭焼小屋のある木立の情景を描き、啄木鳥を描くことで啄木鳥の音がまるで聞こえてくるような情景を描いています。描いたのは戦時中の昭和15年頃と推察されます。戦前の代表作となりうる佳作のひとつであろうと思います。作品そのものはインターネットオークションで3万円ほどにて落札した作品です。
さてこの作品、まともに購入したらいくらか? そうですね、戦前の作なので30万~40万円といったところでしょうか? その値段でも買って損はない買い物でしょう。先日郷里の骨董店でいい出来の8号の額装の作品が35万円でした。
福田豊四郎の蒐集した作品は小作品を含めると100点は越え始めました。ようやく厳選した作品のみに絞って蒐集できる段階になったと思います。
居住している義妹は何ら興味がないので、こちらは好き勝手に展示品を変えています。
空港に行く時間が迫っている中、蔵に入って物色してきました。何がどこにあるか分かっているので我ながら実に手早い。
リンゴ台風で屋根裏から出てきた掛け軸のひとつ・・。さて、何とか書いてあるのか?
本日の作品は福田豊四郎の作品の紹介です。
正直なところこの作品を最初に観た時はすぐには真作と判断できませんでした。まず落款が珍しいこととこの印章は観たことがないことからでした。しかしながら作行は戦前の作と推定され、出来がよいので購入することにしました。価格は5万円強でした。当方の所蔵する作品のファイルや資料を調べると徐々に判明したきたのが、この落款の書体と印章は昭和15年頃の短期間に用いられていたということです。
*上記写真の左の「聖観音像」は平櫛田中作です。「聖観音像」の手前のお猪口は明末赤絵・・。
多くの画家がそうであるように安定した落款の書体や印章を用いるのは作風が安定する晩年になってからのようで、壮年期には落款も印章も数多く変遷する傾向にありますね。
*上記写真の手前は河井寛次郎の花瓶です。花台は庭にあった欅の根を加工したもの。
仮題 炭焼小屋 福田豊四郎筆 昭和15年頃
絹本着色額装(改装が必要) 誂:タトウ+黄袋
全体サイズ:縦720*横810 画サイズ:縦485*横575 F12号
10号程度の作品は福田豊四郎の作品には多くありますが、12号のサイズとなると極端に作品の数が少なくなります。
本作品は共シールなどなく、作品中の落款と印章のみです。額も古く当時のままのものでしょう。
当方の他の所蔵作品「山湖秋」の落款と書体は同じ(下記写真中央が作品中の落款、右が共箱の落款)であり、本作品は昭和15年頃の作と推定されます。
さらに昭和16年発刊の画集「福田豊四郎画集」(他の所蔵作品「月と小魚」昭和11年5月作が掲載されている)に掲載されている作品「初夏水槽」(昭和13年6月作)に若干の縦横比に違いがありますが同一印章と判断されます。
なお印章の縦横比の若干の違いは絹本裏打ち、貼り付けや写真撮影の際に生じるものとそうでないものとがあり、縦横比の違いにて一概に贋作とは決め込まないほうがいいでしょう。
下記の写真において左が本作品の印章、右が「初夏水槽」の印章です。よく用いている印章は白文朱方印なので、本作品に押印されている朱文白方印は使用期間が短く非常に珍しい印章です。
*ただインターネットオークションに出品されている福田豊四郎の作品には贋作が多くありますので要注意です。印章や落款まで真作に酷似しているものは少ないようです。作行も福田豊四郎らしさは真似できていませんので容易に真贋の判別はできます。
戦後の抽象化された福田豊四郎の作品が人気が高いですが、戦前、戦時中のノスタルジック趣向の作品にも根強い人気があります。
下記の作品は上記の落款の参考にした「山湖秋」という作品です。ほぼ同時期に描いた作品です。
山湖秋 福田豊四郎筆 その87
絹本水墨淡彩軸装 軸先象牙 共箱二重箱
全体サイズ:縦*横 画サイズ:縦*横(未測定)
作行が似通っています。戦争になる直前か戦争に突入した頃の作となります。
本日の作品にも実は啄木鳥が描かれています。
当方にて福田豊四郎の作品はほぼ100点ほど蒐集となりましたが、小品ばかりながらサラリーマンの割にしてはいい作品が蒐集できたと思っています。
蒐集は止めた訳ではありません。
資料や見識が揃ってきたのでこれからが蒐集の本番です。
*本作品の額装は昭和初期のそのままの状態なので痛みがあり、周囲のマットも汚れているので取り替えることにしました。
2019年7月 額 マット新調、一部布タトウ、黄袋新調
依頼先:世界堂 費用は5万円ほど
額の痛み、周囲のマットの汚れがあり、2018年7月に額と周囲のマットを新調した。その際に絹本に裏打ちがなく不安定であることから画本体の絹本への裏打ちを検討したが、絹本が経年劣化により、マットからの切り離しに際して破損の恐れがあるため、マットの張り替えが無理であるとの判断から絹本自体には手を加えてはいない。額装は既存の額を取り払い、炭焼小屋をイメージしてくすんだ黒っぽい額に新調し、マットは現状のマットから画本体の絹本と切り離せないため、既存のマットに新しいマットを被せた方法とし、斜めの部分にギリギリで新たな見切り縁を回しています。
修理が完成した作品が下記の写真です。どうです? 元々いい作品でしたが、既存額の汚れを隠すことで立派になったでしょう
額縁などは「炭焼小屋」のイメージに合う額装にしました。
山中の朝に霧のかかった炭焼小屋のある木立の情景を描き、啄木鳥を描くことで啄木鳥の音がまるで聞こえてくるような情景を描いています。描いたのは戦時中の昭和15年頃と推察されます。戦前の代表作となりうる佳作のひとつであろうと思います。作品そのものはインターネットオークションで3万円ほどにて落札した作品です。
さてこの作品、まともに購入したらいくらか? そうですね、戦前の作なので30万~40万円といったところでしょうか? その値段でも買って損はない買い物でしょう。先日郷里の骨董店でいい出来の8号の額装の作品が35万円でした。
福田豊四郎の蒐集した作品は小作品を含めると100点は越え始めました。ようやく厳選した作品のみに絞って蒐集できる段階になったと思います。
本ブログで教えていただいた知識を基に研究してみたのですが、
1作目は風景画で、「山湖秋」の木をデフォルメしたところが似ており、落款と印章も昭和18年頃の箱書きに似ておりました。
昭和15年頃から抽象的な作調に変わり始めると教えていただいたので、そうなのかと思いました。
2作目は花鳥画で、落ち着いた絵であり、絵の印章は上と同じだが、箱の印章は、漢字の「寛」に似ているものでした。
私は、1作目が大変気に入りました。
また、他美術店HPにおいて見たところ、
1品は教えていただいた昭和初期の落款と印章の小品。
もう1品は郷愁あふれる秋田の原風景の作品(「炭焼小屋」に作風が似ており、「秋の馬」と印章が似ておりました。)。
であり、勉強させていただきました。
「山湖首夏」「湖上の岬」「故郷の風景」のような出来上がった落款であり、戦後、晩年の作品は意外に市場に出ていないのかなと感じました。
ブルー、透明感があり、かつ重厚感のある良い作品ですね。
「炭焼小屋」の前の平櫛田中と河井寛次郎、大変すごい作品ですね。
上記の美術展で、寛次郎の作品を数点、肉眼で見て感動し、手が届く筒描の小品でもいいので、欲しくなってしまいました。