Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

モルトの優しい香り

2004-11-25 | その他アルコール


スコッチの話しである。最も素晴らしい物の一つがモルティングの香ばしさである。それを知る前は、ブランディーの香りが良いと思っていた。ワインも分かってくるとそのワイン・ブランディーにはそれほど大きな価値を置くことが出来なくなった。モルティングは、何もウィスキーだけでなくビールの生産にも必要である。その香りはブリテン島のものである。しかし、スコッチ・ディスタリーのそれを知らない。見学の機会も無く、招待の懸賞などにも応募したが残念ながら未だに実現していない。

ピーク・ディストリクトやレーク・ディストリクトやエディンバラ・グラスゴー周辺は旅したことがある。しかし当時はウィスキーの飲み方をまだ良く知らなかった。旅行中は、ラガータイプだけでなくエールタイプのビーアを主に飲んだ。しかしモルティングの思い出は寧ろイングランドのイースト・アングリアでの経験である。古い工場や典型的なモルティングの横長の大屋根の建物に差し掛かると、車内までが前触れ無く香ばしくなる。唯一アダム・スミスの「見えざる神の手」を体感出来る瞬間である。車はさらに郊外へと、背丈ほどの生垣のある曲がりくねった小道へと突き進む。大地所の門を遥か遠くに臨みながら、シャーロックホームズが窃盗団の黒幕を訪ね早馬車を走らすかのように果てしなく行くと、突然曲がり角の向こうから重量級のロールスロイスが重心を横にずらしながら疾走してきてすれ違うのである。

こうして旅情に身を任せるまでも無く、ブリテン島の空気は距離以上に大陸とは異なり、独特の文化を育んでいる。むしろスコットランドはスカンジナヴィア半島との共通点もあるが、ウイスキーの文化的意味は大きい。ロウランド、ハイランド、アイランドと其々特徴があり、新鮮な良い水で注意深く作ったシングルモルトは素晴らしい。飲み比べるようになると、最終的な味の調整である熟成期間に拘らなくなる。スモーキーなものもあればピートを上手に使っているものもある。テースティンググラス風のものに注ぎ、室温の水で割ると柔らかい香りが優しく広がる。ピューアーで飲むよりも香りが楽しめる。
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ヴンダーリッヒ嬢/Frau Wunderlich

2004-11-25 | 
2004 01/30 編集

南仏でプァルツを源とする女性に出会う。偶然に、早世のテノール、フリッツ・ヴンダーリッヒのお嬢さんにお会いした。父の面影も知らない彼女は、著名な父を持ちながら直接の薫陶を得なかった不公平を嘆きつつも未だに世界中で慕われ音源の商品化が進む亡き人気スターへの誇りも忘れない。ダークな髪の色に、目元から口元にかけて紛れもない面影を残す。快活な目元の表情と何処かへと思いを投げかける目は、写真で見る父親もさもあらんと思わせる。それはあたかもタミーノがパミーナの絵姿を彼岸に見るかのようだ。ベーム指揮の魔笛のタミーノの録音に、出だしの初々しい真摯な表情に、このスターの人間性とそれゆえの魅力が聞き取れる。彼女も同じ魅力を分かち持っていて、短いながらも不思議で幸せな時間を過ごした。

ワイン街道から30KMほど北に位置するプァルツ北部のクーゼルという昔から産業が殆んどない町は、伝統的に楽隊が盛んでアメリカにミュージシャンとして出稼ぎや移住した者が多い。そのような地域性を背景に流星の様に現れたのが父ヴンダーリッヒであった。今後も永く根強くアイドルであり続ける。
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鹿フィレ肉のクリーミーな香り

2004-11-25 | 料理


久しぶりに良いものをご馳走になった。実家がパン屋とワイン農をしていた彼女の作るクーヘン類はプロ級なのだが、今回は鹿のフィレ肉とシュヴァーべン風シュペツレである。特に鹿肉は、彼女の義理のお兄さんがマイン地方のアシャッフェンブルグで仕留めてきたのを分けてもらったという。そのフィレ肉を二日二晩、メリケン粉とサワークリームと赤ワインにつけて置いてから調理した。クリームを入れた甲斐があって、通常の鹿の臭みが消えて、マイルドになっていた。

最近此処に記した話題の中でも、特にザンクト・マルティン際前日のルターの誕生日は意外にも知られていなかった。早速身近の新教徒たちに試してみると言うことになった。学業優秀な新教徒と言えどもその辺の知識はまちまちのようである。学校の宗教の時間の内容については、殆んど興味は無かったのだが、そのような知識は二の次なのかも知れない。それともある意味で、それはルターの気宇壮大さを示しているといえるかもしれない。

ワインは、チリの赤カベルネ・ソーヴニオンで卵白の丸みがあって良かった。このミルクの香りの料理にこれ以上のものは無いと思った。食後にトロリンガーをその語源の講釈やエチケットに描かれている市外図の解析を交えながら楽しんだ。鹿の肉塊が如何に柔らかくても口で咀嚼していると、どうしても野性的な気持ちになって狩装束から狩風景へと連想が行くのである。さらに「その連鎖は、ハイデルベルクの狩の館で倒れたオペラ歌手とその娘さんへ」と続くと世紀末作家アルテュール・シュニッツラーのような語りになるのである。
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ドナウエッシンゲン

2004-11-25 | 料理
2004 03/01 編集

ドイツから黒海へと注ぐドナウの源流のである。シュヴァルツヴァルトから注ぐせせらぎがここで初めて川となる。分水嶺にも近いこの町は、フライブルク周辺のバーデンのワイン産地とも、シュツットガルト周辺のヴュテンベルクの産地ともボーデンゼーとも適当に離れているので、レストランのワインも双方から納入されている。ここのホテルレストランで、鹿肉をキノコと焼いたものに手作りヌードルをつけた料理を、カイザーステュール産のシュペートブルグンダーと注文する。19世紀前半からの歴史のあるファミリー醸造所の赤ワインは、薄めの色で渋味と酸味があり、軽い味には核があった。バーデンの焼き肉料理は、色の濃い甘みのあるソースで狩人料理のようにあえたものが多い。このように肉自体にあまり味の付いていない料理には、重い赤ワインよりもシンプルな上のようなワインが良く合う。

ドナウエッシンゲンの伯爵は、宮廷楽団や劇場でハイドンからモーツャルトなどのオペラや器楽曲を上演した。スターピアニストのフランツ・リストはここで三晩のコンサートを開いた。最後のお礼に伯爵夫人であるプリンセス・バーデンにレントラー曲*を献呈した。これら楽譜のコレクションは、1999年にバーデン州立図書館によって買い取られ、整理されている。

* Franz Liszt Ländler in As-Dur 1843



参照:音楽愛好家結社 [ 音 ] / 2005-12-12
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