緑の党レナーテ・キューナスト前農林消費者保護担当大臣(含狂牛病対策)のトヨタ発言は、EUの排ガス規制案に対して、二月の初めになされたものである。当初からラジオ等でも盛んに扱われた。
「諸君、トヨタのハイブリットカーを買い給え」
政権与党から離れた小政党としては、大変天晴れな発言でこうしてトヨタ本国でも扱われることになったのである。何よりも自動車王国であり、基幹産業のロビイストが活躍するベルリンでのこうした発言に、政治家としての資質をみる事が出来る。
この環境政党の政策意図は、現在でも燃料の環境税等の重しとなって、財布に直接圧し掛かっており、市民は身をもって感じている。それはディーゼル車の開発と販売を促したが、その排ガスの浄化技術等の可能性も押し詰まった。その一方、ハイブリット車の基礎技術はもともとボッシュ社のものとされるが ― ウォークマンを含めて全ての発明はドイツの物とされるのであるが ― 、水素エンジンを初めとする様々な試みの中でドイツ車における汎用技術化は遅れた。だからこそ、この所謂政治的ワンセンテンス発言は、現在の社会構造とその矛盾をあぶりだしたことでも秀逸である。
先ず政治的には、EUが我が身を削りながら温暖化を阻止しようとする態度に対して、ドイツ車至上主義のタブーを破り日本車を挙げてまでその二酸化炭素排出基準を固持しようとする意志を示したことは、国内事情から躊躇する米国等への強烈なあてつけとなっている。
それは同時に、二酸化炭素排出規制を根拠に原子力発電へとそのエネルギー購入へとまた排出総量の売買を図ろうとする現実政策派を議論の表面へと引き釣り出して、市民の温暖化への不安感を煽り一挙に環境政策の物々交換の清算へと持ち込もうとする政策を浮き彫りにする結果と相成っている。
一般に高級車と呼ばれる車重の大きな車や高排気量高速車は、燃費が悪く、EUの示す二酸化炭素排出規制値をクリアーするのは難しい。こうした事からEUの態度は、ドイツの自動車産業に対する仕打ちとみる向きもある。今回の発言は、それ故に当初からB級市場を狙っていたとされるトヨタの世界観を借りて、現在より良い社会的ステータスを、より高級なブランドへの物欲によって満足させようとする消費経済市場を打破しようとするメッセージでもあり、資本主義とは距離を置く自由でシンプルなライフスタイルがこれによって示される。
トヨタの宣伝文句である「不可能な事無き、トヨタ」は、こうしてそのフラッッグシップ化が企てられている高級車レクサスのイメージは否定されて、カローラとしてのシンプルライフイメージを満足させる結果となった。
同様な思想は、しばしば昼食を共にするとされるアンゲラ・メルケル首相にも表れていて、年始からEU主催国代表であるこの首相の方へとたちまち市民の視線は移る。首相は、環境保護を建前としたアウトバーンでの速度規制には反対とするが、環境を配慮した技術革新と運転を呼びかけた。無制限速度は、独自動車産業の優位性を保つための政策速度でもあるが、その制限とは実質最高時速250KMを140KM程度に落すことを意味するのであろう。つまり、環境に優しい運転と最高速規制は、実測平均速度140KMをなかなか越えられない現在の過密な道路事情を改善する事がもし可能ならば、それほど差異は無い事になる。
さて、ここで高速走行の優位性や経済性を考えると、実状から年々その合理性は失われていて、社会資本としてのアウトバーン有効利用をして、出来る限り高い巡航速度を維持しながら最高速度を落す可能性の追求が求められている。つまり、今後の高速移動のあり方を推測すれば、巡航安定性を基本に、安全と居住快適性を犠牲にすること無く、シンプルで無駄の無い交通システム構築へと進むのであろう。
そうした時間と資源の浪費を必要としない新たな経済システムとライフスタイルが合致するような技術的革新を生み出す時にこそ、ある種の優位性が再び確立されると信じるのである。それは、大多数の市民の支持を得られる社会資本の形に違いない。
通常の二倍近くの二酸化炭素を排出するポルシェは、最も批判の矛先にたっている。ヴェーデキント社長は、現在では非合理的な物欲の権化のようなポルシェの否定に対して反論している。新自由主義的な発想への風当たりはますます強まる。少なくとも非理知的な消費生活と浪費を代表したまま、それを否定する技術的革新を示せない限り、現在のブランドイメージを保持するのは難しいであろう。高性能の意味を履き違えてはいけない。
参照:
日本車賛美に反発の声 ドイツで(朝日新聞) - goo ニュース
Merkel fördert Spar-Autos, Financial Times Deutschland vom 12.02.07
自尊心と公共心を駆逐 [ 雑感 ] / 2006-11-28
瑞西の交通規制行動 [ アウトドーア・環境 ] / 2006-02-09
完全自動走行への道 [ テクニック ] / 2005-12-02
公約無制限の高速道路事情 [ アウトドーア・環境 ] / 2005-08-12
核反応炉、操業停止 [ アウトドーア・環境 ] / 2005-05-27
自宅よりも快適な車内 [ 歴史・時事 ] / 2005-02-14
アウトバーンでの予知力 [ テクニック ] / 2004-12-27
「諸君、トヨタのハイブリットカーを買い給え」
政権与党から離れた小政党としては、大変天晴れな発言でこうしてトヨタ本国でも扱われることになったのである。何よりも自動車王国であり、基幹産業のロビイストが活躍するベルリンでのこうした発言に、政治家としての資質をみる事が出来る。
この環境政党の政策意図は、現在でも燃料の環境税等の重しとなって、財布に直接圧し掛かっており、市民は身をもって感じている。それはディーゼル車の開発と販売を促したが、その排ガスの浄化技術等の可能性も押し詰まった。その一方、ハイブリット車の基礎技術はもともとボッシュ社のものとされるが ― ウォークマンを含めて全ての発明はドイツの物とされるのであるが ― 、水素エンジンを初めとする様々な試みの中でドイツ車における汎用技術化は遅れた。だからこそ、この所謂政治的ワンセンテンス発言は、現在の社会構造とその矛盾をあぶりだしたことでも秀逸である。
先ず政治的には、EUが我が身を削りながら温暖化を阻止しようとする態度に対して、ドイツ車至上主義のタブーを破り日本車を挙げてまでその二酸化炭素排出基準を固持しようとする意志を示したことは、国内事情から躊躇する米国等への強烈なあてつけとなっている。
それは同時に、二酸化炭素排出規制を根拠に原子力発電へとそのエネルギー購入へとまた排出総量の売買を図ろうとする現実政策派を議論の表面へと引き釣り出して、市民の温暖化への不安感を煽り一挙に環境政策の物々交換の清算へと持ち込もうとする政策を浮き彫りにする結果と相成っている。
一般に高級車と呼ばれる車重の大きな車や高排気量高速車は、燃費が悪く、EUの示す二酸化炭素排出規制値をクリアーするのは難しい。こうした事からEUの態度は、ドイツの自動車産業に対する仕打ちとみる向きもある。今回の発言は、それ故に当初からB級市場を狙っていたとされるトヨタの世界観を借りて、現在より良い社会的ステータスを、より高級なブランドへの物欲によって満足させようとする消費経済市場を打破しようとするメッセージでもあり、資本主義とは距離を置く自由でシンプルなライフスタイルがこれによって示される。
トヨタの宣伝文句である「不可能な事無き、トヨタ」は、こうしてそのフラッッグシップ化が企てられている高級車レクサスのイメージは否定されて、カローラとしてのシンプルライフイメージを満足させる結果となった。
同様な思想は、しばしば昼食を共にするとされるアンゲラ・メルケル首相にも表れていて、年始からEU主催国代表であるこの首相の方へとたちまち市民の視線は移る。首相は、環境保護を建前としたアウトバーンでの速度規制には反対とするが、環境を配慮した技術革新と運転を呼びかけた。無制限速度は、独自動車産業の優位性を保つための政策速度でもあるが、その制限とは実質最高時速250KMを140KM程度に落すことを意味するのであろう。つまり、環境に優しい運転と最高速規制は、実測平均速度140KMをなかなか越えられない現在の過密な道路事情を改善する事がもし可能ならば、それほど差異は無い事になる。
さて、ここで高速走行の優位性や経済性を考えると、実状から年々その合理性は失われていて、社会資本としてのアウトバーン有効利用をして、出来る限り高い巡航速度を維持しながら最高速度を落す可能性の追求が求められている。つまり、今後の高速移動のあり方を推測すれば、巡航安定性を基本に、安全と居住快適性を犠牲にすること無く、シンプルで無駄の無い交通システム構築へと進むのであろう。
そうした時間と資源の浪費を必要としない新たな経済システムとライフスタイルが合致するような技術的革新を生み出す時にこそ、ある種の優位性が再び確立されると信じるのである。それは、大多数の市民の支持を得られる社会資本の形に違いない。
通常の二倍近くの二酸化炭素を排出するポルシェは、最も批判の矛先にたっている。ヴェーデキント社長は、現在では非合理的な物欲の権化のようなポルシェの否定に対して反論している。新自由主義的な発想への風当たりはますます強まる。少なくとも非理知的な消費生活と浪費を代表したまま、それを否定する技術的革新を示せない限り、現在のブランドイメージを保持するのは難しいであろう。高性能の意味を履き違えてはいけない。
参照:
日本車賛美に反発の声 ドイツで(朝日新聞) - goo ニュース
Merkel fördert Spar-Autos, Financial Times Deutschland vom 12.02.07
自尊心と公共心を駆逐 [ 雑感 ] / 2006-11-28
瑞西の交通規制行動 [ アウトドーア・環境 ] / 2006-02-09
完全自動走行への道 [ テクニック ] / 2005-12-02
公約無制限の高速道路事情 [ アウトドーア・環境 ] / 2005-08-12
核反応炉、操業停止 [ アウトドーア・環境 ] / 2005-05-27
自宅よりも快適な車内 [ 歴史・時事 ] / 2005-02-14
アウトバーンでの予知力 [ テクニック ] / 2004-12-27