Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

その口で語るな、芸術文化を

2020-11-16 | マスメディア批評
何処からか回って来たSNSに驚いた。音楽雑誌「音楽の友」編集者のようだが、あまりにもその呟きが酷い。当該「ヴィーナフィルハーモニカー記者会見記事」自体は既に紹介されていて眼にしていたが、見出しの「ノイヤースコンツェルトに言及」は目を引いた。

内容の「元日恒例のウィーン・フィルのニューイヤーコンサートは、1700名の観客全員に検査をおこなってでも(関係当局の指示や法律的な問題はあるかもしれないが)、楽団としては100%やるつもりでいる。」という部分が注目される。

楽団がフォロシャウワー団長の発言としてそれを語るのは今迄のその団体の行動からしても想定内であるが、それの伝え方に大きな問題がある。少なくとも玄人筋がその経過や状況を伝えるとした場合、この内容は看過できないと思った。

音楽の友社の「レコード芸術」には、指揮者キリル・ペトレンコを「ポジティヴ移民」とした編集長がいて、未だにそのことに関しての謝罪も訂正記事も出ていない。流石にこの秋に発売されたCDボックスの引用記事にはその部分が削除されて誤魔化されて流用された。どのような無知な者が鼎談に参加していようがいまいが全ては編集者の文責である。

今回の件もとても悪質で、少なくとも音楽芸術を論ずるジャーナリズムにはあってはならない姿勢である。要するに、コロナ感染防止よりも業界の営業を優先するという主義主張を、改めてSNSで強調して、「今回のウィーン・フィルを特例中の特例で終わらせてはならない。この光明を、どうやって次につなげ、広げていくかは、音楽界のみならず社会全体にとっての大きな課題でもある」 としている。この業界の人達は、骸を積み上げるのを良しとしているとしか思われない。なんていう人たちだ、ショービズの銭の亡者。

まさか音楽ジャーナリストが、この春からの一連のヴィーナーフィルハーモニカーとクルツ首相の間で行われたディールを知らない訳が無い。両者は直接電話で話して、フィルハーモニカーのやり方を餅は餅屋式に一任することになって、ザルツブルクの音楽祭もそれに続いた。それどころかスイスも業界に首を突っ込むことは止めた。この二つのアルプスの共和国が現在欧州で最悪の感染状況にある事と政府のこうした放任政策とは全く無関係とはならないことは当時既に予測されていた。

そして今回日本ツアーに際してクルツ首相が一役を担い、当然のことながらノイヤースコンツェルトは最大級の配慮がなされる。その一方更に経済的な影響の多いスキーや冬の旅行などは夏の強い日差しの影に沈む。政治的責任が問われる。

世界中で注目されて、世界的な催し物の一つとしてメディア業界瞠目のイヴェントである。オーストリアが世界で注目される一年に一回の国家的な行事ですらある。NHKもその予算の一部を聴視料から支払っている。業界紙ならばその経済的な持続的な成果を最大限に求めて記事を綴ればよいだろう。しかし、その口で文化芸術とか音楽芸術とか語るなと言いたい。

それどころか、そのような状況を客観的に紹介できないところにジャーナリズムなどは存在しない。そんなに難しいことは言わない。オーストリア政府の対応とその挙句の果てに毎日多くの死者を出して、二か月前までは十万人中7人しかいなかった死者が今は21人になっていて、自慢していた医療システムが崩壊しようとしている。どんなに催し物を禁止とした完全ロックアウトが火曜日零時から始まっても死亡者数はしばらくは増え続ける。指数は簡単に倍増するだろう。欧州で上位となる。せめてそのような状況を念頭に口を開け。そうしたセンシティヴィティさえも無い者は去れ!

大阪府と同規模の人口のオーストリアは、先週ICU患者が138人増えて、死者は先々週295人だったのが先週だけで443人となっている。そのような状況下でラデツキー行進曲で拍手など出来るだろうか。ドイツでは、来月も平常化などは考えられない、例年のようなクリスマスなどは有り得ないと語られるようになった。



参照:
新年から必要な厚着 2020-11-06 | 暦
第三波までの再計画 2020-10-30 | 文化一般
武漢で病人が出た遠征 2020-07-06 | 文化一般
不適切な「ポジティヴな移民」 2019-10-27 | マスメディア批評
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